電力経済研究
「電力経済研究」は電気事業、電力産業に関わる社会経済・制度問題を対象分野とし、課題指向型、問題解決型に関連した研究成果などを掲載し、学術の振興に寄与することを目的とした雑誌です。69号より冊子版からオンラインジャーナルへ移行しました。
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(オンライン)ISSN 2758-5980
(冊子版)ISSN 2189-3284
電力経済研究
No.69(2023年2月)
特集「脱炭素化のために電化にどう向き合うか」
一部の論文に誤りがあり、全文PDFを更新しました。ご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ございません。
※記載内容の訂正について(2024年4月23日)
特集のねらい
2050年カーボンニュートラルの実現のためには、エネルギーの供給サイドだけでなく、需要サイドの各分野においても、脱炭素化に向けた道筋を示していく必要がある。第6次エネルギー基本計画には、「産業・業務・家庭・運輸部門においては、徹底した省エネルギーによるエネルギー消費効率の改善に加え、脱炭素化された電力による電化という選択肢が採用可能な分野においては電化を進めることが求められる」とある。ヒートポンプ技術や電気自動車などによる電化は、需要サイドの直接排出を大幅に減らすための中心的手段である。
一方、電化を進めるための取組が本格化しているとは言い難い。需要サイドの技術・インフラとそのCO2排出はロックイン(固定化)されることが多いため、将来のカーボンニュートラルに適合する技術については、早い段階から普及を加速させていく必要がある。省エネや再エネ電力調達だけではなく、電化にも向き合い、その位置づけや具体的な取組のあり方について議論を深めるべき時期に来ている。
本特集号では、電力中央研究所 社会経済研究所の研究成果を中心に、電化に関連する9編の論文等を所収した。まず、冒頭の総説により、電化を巡る論点と特集号の全体像を示す。その上で、4部(部門横断、民生部門、運輸部門、産業部門)に分けて、6編の論文と2編の研究ノートにより、長期シナリオにおける電化の位置づけ、家庭用給湯分野の対策の経済性やバリア(阻害要因)、停電に対する不安、欧米の建物・運輸脱炭素化取組、産業電化のバリアや対応策などを論じる。これらの研究は、理想的な将来像やポテンシャルへの期待を示すだけでなく、現実のバリアを把握した上で、バリアの解消策を講じていくことが必要になるという視点に基づいている。
くらしを豊かにし、工場の生産性なども向上させる可能性を秘めた電化は、脱炭素化のためのエネルギー転換の一形態にとどまらず、多面的な便益を追求するアプローチとして捉えていくべきものでもある。一方、電化のバリアやそれへの対応、あるいは、便益をテーマとする研究は、国内ではそれほど活発とは言えない。本特集号が、今後の議論や研究のきっかけになれば幸いである。
2023年2月
編集責任者
電力中央研究所 社会経済研究所
西尾 健一郎、中野 一慶
●第2部 民生部門
論文
災害時におけるZEH のレジリエンス
―アンケートデータと傾向スコアによる因果効果の分析―
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