電力経済研究

電力経済研究」は電気事業、電力産業に関わる社会経済・制度問題を対象分野とし、課題指向型、問題解決型に関連した研究成果などを掲載し、学術の振興に寄与することを目的とした雑誌です。一時休刊ののち、2015年3月にリニューアル復刊しました。

電力経済研究

No.66(2019年3月)

特集「電力システム改革で創設される新市場の課題」

特集のねらい

わが国の電力システム改革では、従来の卸電力取引のための市場に加え、ベースロード市場、需給調整市場、容量市場、非化石価値取引市場など、新たな市場が次々に創設されることとなっている。併せて、連系線の利用ルールが見直され、その利用計画は間接オークションにより、卸電力市場の結果に基づいて決まることとなっている。このうち、FIT電源を対象とする非化石価値取引市場は2018年5月に取引を開始している他、連系線利用ルールの見直しによる間接オークションも2018年10月から運用されている。その他の市場も2019年度以降、順次、運用が開始される見込みである。

こうした新市場が所期の目的を達成するには、それらが適切に設計される必要がある。しかし、新市場の設計はいずれも複雑であり、同じような市場を創設してきた海外でも試行錯誤が続き、様々な制約の下で、現実に市場を適切に設計することの難しさを物語っている。わが国でもそうした難しさに直面することは避けられないと考えられるが、望ましい制度設計に向けては、電力システム改革の全体像を見渡しながら、個別の市場の課題について理解を深めることが重要と思われる。

本特集号は、電力中央研究所・社会経済研究所が取り組んできた、新市場の制度設計の課題に関連するこれまでの調査研究の成果を収めている。新市場の全体像と電力システム改革における市場メカニズムの活用について論じた総説に続き、個別の市場の制度設計の課題について論じた論文4篇と研究ノート1篇を収めている。論文では、それぞれ専門分野の異なる執筆者が、特定の課題について論じており、制度設計の多岐にわたる論点の一部を扱ったに過ぎないが、今後の詳細設計の議論や見直しに向けて、参考となる知見を提供できれば幸いである。

2019年3月
編集責任者
電力中央研究所 社会経済研究所
服部 徹

総説

電力システム改革における新市場創設の意義と課題
-市場メカニズムの活用をめぐる議論の展望- …1

 

論文

ベースロード市場をめぐる独禁法上の課題
-不当廉売とプライス・スクイーズ規制の検討- …17

 

研究ノート

オプション型金融的送電権の価格に関する予備的考察
-欧州の取引データの観察- …33

 

論文

需給調整市場を考慮したわが国のインバランス料金制度の課題
-ドイツのインバランス料金の変遷から見た考察- …39

 

容量市場の価格決定要因に関する考察
-わが国の制度設計と海外の経験からの示唆- …53

 

長期エネルギー需給見通しの実現を見据えた非化石価値取引市場の制度設計 …69

 

Back to index

TOP