当所では、電力設備で発生する事故・故障の主要原因の一つである雷について60年以上に亘り、その現象解明から電力流通設備の雷害対策に至るまで、幅広く研究を行ってきました。1961年に開設した塩原実験場には、世界最大級の人工雷発生装置を設置し、送配電設備の雷害対策技術の開発などに大きく役立ててきました。
当所では、各種の雷現象観測装置を開発し、雷の性状・特質などを研究してきました。電力設備を「雷から守る」には、「雷を知る」ことが重要であり、特に被害の大きい冬季雷の特性(上向き雷、大エネルギーなど)を明らかにしてきました。また、落雷位置標定システムに基づく雷データベースの整備や、耐雷設計で必要となる雷サージ現象から雷過電圧解析手法に至るまで広範な内容を解説した「耐雷設計ガイド」を作成しました。それらは現在も、電気事業の現場などで広く活用されています。
人工雷発生設備(塩原実験場) | 長年の知見を取りまとめた耐雷設計ガイド |
社会の高度情報化が進む中、オフィスビルへの落雷時にもパソコンなど各種情報通信機器が壊れたり誤作動しないよう、建物内への雷の影響や対策に関する研究を進めています。また、再生可能エネルギーとして増えつつある風力発電のブレード(羽)が、雷を受けた時にも破損しないよう、耐雷性能を高度化するための研究にも取り組んでいます。また、東京スカイツリーの塔頂部近くには、雷の電流を測定する装置(ロゴスキーコイル)を設置して常時落雷観測をしています。平地でこの高さに設置されている雷観測装置は世界でも例がなく、いまだ解明されていない雷の特性を明らかにして、高いビルやタワー、電力設備などにおける雷被害の防止対策に活かしていきます。