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平成15年10月15日(水)、東京・経団連ホールにおいて、オックスフォード大学名誉教授Sir Richard Doll先生、ジョンスホプキンス大学衛生学部教授G. M. Matanoski先生及び放射線影響協会放射線疫学調査センター長村田紀先生の計3名の疫学の専門家を講演者にお招きして、低線量放射線影響に関する国際シンポジウム「低線量放射線の健康影響−がんリスクの有無」を開催いたしました。 当日は、約310名という多数の方々にご参加いただき、3件の講演の他、愛知県がんセンター名誉総長富永祐民先生を座長にお迎えして、講演者全員をパネラーとした総合討論が行われました。 |
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【はじめに(鮫島専務理事挨拶より)】 |
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電力中央研究所においては、約15年前から動物実験を中心として低線量放射線の影響に関する研究に取り組み、生物は少量の放射線であれば悪い影響は出ないようにする免疫機能が備わっていることを示唆する多くの証拠を明らかにしてきました。 低線量放射線の影響を正しく理解するためには、これまでの動物実験に加えて、ヒトについての情報が不可欠です。近年、ヒトへの影響については、数々の疫学調査結果が発表されており、低線量放射線のリスク評価に資する情報が蓄積されてきています。 本シンポジウムでは、疫学の分野の著名な先生方をお招き致して、その研究結果を直接ご紹介いただき、会場の方々からの質疑も含めて議論を深めていただくことことにより、低線量放射線影響の正しい理解に向けて役立つことができれば幸いです。 |
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【講演1】 |
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「日本の原子力産業放射線業務従事者の疫学調査」
放射線影響協会放射線疫学調査センター長 原子力発電所等の放射線業務従事者のデータ17万6千人分の累積線量データを調査対象とし、日本人男性全体の死亡率と比較すると、有意に低いことがわかった。がんによる死亡率は日本人男性の死亡率とほぼ同じであった。 一方、放射線業務従事者が受けた線量とともに死亡率が増加しているかどうか調査したところ、全てのがんによる死亡率は増加していないことがわかった。個別のがんに注目すると、食道がん、胃がん、直腸がん、多発性骨髄腫、その他に外因死にも、線量とともに死亡率が増加する傾向が見られたが、これは生活習慣などの他の要因の影響と推測される。 低線量、低線量率の放射線が、がん死亡を増加させるかどうかについて、今までの結果ではまだ明確な答えを出すことはできず、これからも調査を続けていきたいと考えている。 |
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【講演2】 |
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「米国造船所作業員における低レベル放射線の健康影響」
ジョンスホプキンス大学衛生学部疫学講座教授 1960年代から1982年までの8つの造船所に所属した約20万人の作業員の中から放射線作業従事者約39,000人と非放射線作業従事者約33,000人を対象として、大規模な健康調査を行った。 その結果、全てのがんによる死亡率は、非放射線作業従事者が米国人標準と同等であったことに対し、放射線作業従事者のうち5ミリシーベルト未満の放射線を受けた集団では19%、5ミリシーベルト以上の群では24%も死亡率が低い結果が得られた。白血病死亡率についても、放射線作業従事者の方がリスクが低いという傾向が見られた。白血病の線量依存性については例数が少ないので十分な分析ができないが、今後の調査を待ちたい。 |
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【講演3】 |
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「英国放射線科医の100年にわたる調査:
オックスフォード大学名誉教授英国王立がん研究財団名誉会員 1897年〜1997年の100年間にわたり、英国の放射線科医2,698人について調査し、作業に従事した期間を4期(1921年以前、1921-34、1935-54、1955-77)に分けて、英国一般男性および英国男性臨床科医と死亡率の比較を行った。 その結果、放射線科医は、一般臨床医と比較して、上記4分割期間のうち、はじめの3期間についてはがんのリスクは高かったものの、受けた放射線被ばく線量から推定したリスクに比べると低いものであった。第4期の放射線科医では、彼らが低線量放射線を受けたにもかかわらず、比較的低いリスクであったが、喫煙率など生活習慣の影響も示唆されており総合的な評価が必要である。 |
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【総合討論】 |
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以上の講演の後、愛知県がんセンター名誉総長富永祐民先生を座長に、講演者全員をパネラーとして、会場から質問・意見を募りながら総合討論が行われました。会場からは、疫学の限界、低線量放射線によるがん以外の健康影響、線量率の影響などについての質問が出され、講演者を交えて活発な討論がなされました。 最後に、シンポジウム全体として以下がとりまとめられ、総合討論を終了しました。 |
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総合討論での議論の詳細は こちら |
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【おわりに】 |
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低線量放射線に関する動物実験である結果が得られたとき、すぐにヒトでも同じことが言えるとは限りません。今回のシンポジウムでは、直接ヒトに当てはめることができない動物実験結果を、ヒトに適用するための橋渡しとなる「疫学調査研究」を取り上げました。 当センターでは、今後もこのような低線量放射線の理解のための様々な活動を展開していきたいと考えています。今回の国際シンポジウム開催にあたり、共催頂いた日本放射線影響学会、日本保健物理学会、日本原子力学会保健物理・環境科学部会の3学会様ならびに(財)放射線影響協会様、ご講演頂いた先生方、会場まで足を運んでいただいた多数の方々及び関係者各位に、この場をお借りして心よりお礼を申し上げます。 |