センター設立趣旨
大地や宇宙からの放射線は地球が誕生した時から存在しています。そして、生命は放射線のある環境の中で、ヒトへと進化してきました。こうした生物の進化を考えると、生体が微量の放射線を刺激として活用していても不思議ではありません。また、生体が、放射線の有害な影響に対して、防御機能を備えていることも当然のことといえます。
電力中央研究所では、低線量放射線の生物に対する影響を正しく理解するため、国内外の研究機関の協力を得て、ヒトの疫学調査から動物や細胞を使った実験に至るまで幅広く総合的に研究を進めています。
また、合理的な放射線防護基準を原子力発電所などの現場に適用するための微量放射線の計測技術や、基準を合理的に達成するための技術開発にも取り組んでいます。さらには、廃棄物処分の安全評価や環境の放射線防護に必要な放射性物質の環境への長期影響について、リスク論や確率論的な手法を取り入れた評価手法の研究も進めています。
そして、2007年5月、原子力利用における合理的な放射線防護体系の構築を総合的に進めるため、これまでの生物研究と放射線防護・安全研究を統合して、「放射線安全研究センター」を設立しました。
当研究センターでは、今後、諸外国で急速な発展が見込まれる原子力開発利用の動向を見すえ、国際的に適用できる合理的な放射線防護体系の構築に貢献してまいります。また、低線量放射線の影響に対する正しい理解の普及に貢献するとともに、生活に必要な資源である放射線を有効に利用する道を広げてまいります。