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2017年11月22日 公表
2017〜19年度日本経済の短期予測(2017年11月)
−国内景気は当面拡大を持続するが、
19年前半に調整局面に入る可能性−
本予測は11月15日に内閣府より公表された2017年7〜9月期のGDP速報など最新の各種情報を織り込み作成した。
特徴は、当所が独自に保有するマクロ計量経済モデルを活用し、蓋然性が高いと考えられる前提条件に基づく標準予測だけでなく、
その前提条件が異なる場合のシミュレーション分析を行い、その影響をあわせて示している点にある。
今回は、世界経済に関する景気下方リスクについて試算を行った。
直近の経済動向と予測結果
- 直近の経済動向:2017年7〜9月期の実質GDP(1次速報値)は前期比0.3%増(年率1.4%増)と外需の増加を主因に7四半期連続の増加となった(付表2)。
需要項目別には、民間消費(前期比0.5%減)の減少が民需全体を押し下げたが、その基調となる家計所得や消費者心理の改善は続いており、
夏季の天候不順による一時的な減少とみられる。全体として国内景気は回復傾向を維持していると判断できる。
- 実質GDP予測:以上の現状認識の下、世界経済の成長持続と現在の金融緩和策の維持を前提として、17年度の実質GDPは前年度比1.8%増と前年度から伸びが加速する(表1、図1)。17〜18年度前半は、企業収益と家計所得の改善による民需の増加や、東京五輪に関連する施設整備のための公需の増加により、内需主導の成長が実現する。しかし、18、19年度は同1.4%増、同0.2%増と伸びが低下する。18年度
後半から19年度にかけては、輸入の増加が輸出の増加を上回り外需が減少すること、それに伴う企業収益の伸び悩みから設備投資の伸びが鈍化すること、
などが成長減速の主因となる。このため、この時期には国内生産が在庫調整局面に入るなど、景気が弱含む可能性がある。
なお、本予測には、19年10月に予定されている消費税率引き上げによる実質GDPへのマイナス影響(0.2%減)が織り込まれている。
- 主要指標の予測:完全失業率は19年度にかけて2.7%まで低下する(表1)。
こうした労働需給の引締まりにより、賃金には上昇圧力がかかるものの、18年度後半以降の景気減速に伴う労働生産性の伸び鈍化から、
賃金上昇率は0%台後半から前半へと低下する。19年度の消費者物価上昇率は消費増税により0.3%ptほどかさ上げされるが、
予測期間を通じて上昇率は0%台で推移する。この間に日本銀行の物価上昇率目標(2%)の達成は見込めない。
目標達成には生産性の上昇を通じた賃金上昇が実現する必要がある。
表1 : 日本経済の標準予測
図1:実質GDP(前年度比寄与度)
景気下方リスクに関するシミュレーション分析
- 景気下方リスク:標準予測では、世界貿易の緩やかな拡大と為替レートの安定を前提とした。
しかし、主要エコノミストを対象にしたアンケート調査では、景気下方リスクとして、
米中景気の悪化や国際関係の緊張など世界経済に関するリスクが多く挙げられている(表2)。
以下では、相対的に回答数が多かった、米中景気の悪化、円高、原油高が生じた場合の日本経済への影響について試算した結果を紹介する(表3)。
- 世界貿易の縮小:ここでは、米中景気の悪化が世界経済に波及し、世界貿易が減少する場合の影響を試算した。
18年度に実質世界輸入が標準予測比10%減少すると、輸出(同3.6%減)の減少を通じて、鉱工業生産(同0.4%減)が縮小し、設備投資(同0.2%減)を中心に内需が減少する。
その結果、18年度の実質GDP(同0.5%減)は標準予測の前年度比1.4%増から同0.9%増に伸びが低下する。
- 為替レート円高:円高(標準予測比10%低下)は、価格競争力の低下により輸出(同4.3%減)を減少させ、
設備投資(同0.2%減)や民間消費(同0.1%減)など内需を押し下げる。
他方、輸入(同1.5%減)は、円建て輸入価格の低下によるプラス効果よりも内需減少によるマイナス効果が上回り減少する。
18年度の実質GDP(同0.5%減)は前年度比0.8%増に伸びが低下する。
- 原油価格の高騰:原油高(標準予測比50%上昇)は、名目輸入の増加を通じて貿易収支(同6兆円減)を悪化させ、
企業の経常利益(同3.2%減)や家計の可処分所得(同0.3%減)を減少させる。
国内物価の上昇による購買力の低下も加わり、民間消費(同0.2%減)や設備投資(同0.3%減)が減少し、実質GDP(同0.5%減)は前年度比0.9%増に伸びが低下する。
表2:当面の景気下方リスク
表3:景気下方リスクに関するシミュレーション結果
予測の詳細はPDF版をご覧ください。