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平成17年12月15日(木)、KDDIホールで開催した低線量放射線研究センター研究成果発表と講演の会「線量率放射線研究〜10年の成果と今後の展開〜」において、多くのご参加の方々(総数137名)を交えた総合討論を行い、活発な議論が交わされました。主な議論の内容をご紹介します。
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- それまで、標的説(標的=DNA)に基づいて確立されていた放射線の生物影響に関するパラダイム(被ばくした細胞にのみ影響が現れる、被ばくした線量に比例して影響が現れる、被ばくした時点で影響が決定される等)では説明できない現象が注目されるようになったのが10年ほど前のことである。それ以降、パラダイムそのものやパラダイムに依拠しているLNT仮説の見直しにつながる現象が次々に明らかにされてきている。
- 原爆被爆者の疫学調査結果は低線量の領域ではLNTモデルに当てはめるのではなく、データをあるがままに解析する必要がある。
- 低線量の放射線を照射することにより放射線抵抗性が獲得されるという放射線適応応答はLNT仮説とは相容れないものである。また、放射線適応応答の解析を進める中で、放射線抵抗性の獲得と末梢血中の血球数の増加とが対応しないなど、新たな問題点が浮かび上がりつつある。
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- バイスタンダー効果やゲノム不安定性など、従来のパラダイムを覆すような現象が放射線のリスクを上げる方向にはたらくのか、下げる方向にはたらくのかは、今後の機構解明とあわせ、慎重に検討する必要がある。
- ただし、がん死亡あるいはがん罹患率などの疫学的調査においてはこれらの現象はすべて織り込み済みであり、これらの現象が新たに見つかったからといってリスクが高くなるという性質のものではない。
- 今後機構解明をすすめ、その結果をヒトにおけるリスク評価に反映させる際には、研究対象の違い(ヒトとマウスなど)を認識する必要がある。
- 低線量放射線影響研究は、一般の放射線に対する理解に資するものであり、一方では放射線防護体系へ、もう一方では医療応用へと展開する可能性を秘めている。今後、機構解明を進めつつ、総合的に研究を進めることが重要である。
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