原子力技術研究所 放射線安全研究センター

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放射線利用データブック 農業分野への利用

農業分野の概要

1.害虫防除

 農業分野における放射線利用は、害虫防除と品種改良が主なものである。

 放射線を利用した害虫防除については、不妊虫放飼法がおこなわれている。この方法は、コバルト60のガンマ線照射によって不妊化した虫を大量に野外に放飼することにより、野外の健全虫が正常な交尾をする機会を減少させ、正常な産卵を抑制し、次世代の個体数を減少させることを数世代にわたって繰り返し根絶させる手段であり、農薬による防除と異なり人体および環境への影響のない画期的な方法である。

2.品種改良

 人間は自然界にある様々な動植物を選び、改良しながら衣食住に利用してきたが、自然の突然変異は起きる確率が低く、手にいれることは非常に困難であった。

 そこで人工的な方法で突然変異を高めて、価値のある変異体を創ろうと考え、戦後放射線による利用価値が高いことが発表されてから、品種改良がはじまった。

 品種の改良は、放射線をあてることによって病気に強い新品種や寒冷地に適した品種(変種)を得たり、意図的に突然変異を起こさせ新しい品種を作る技術である。

 農業生産資源研究所放射線育種場等において、コバルト60等からの放射線を利用した品種改良が行われており、ナシの黒班病抵抗性品種が育成されたほか、イネやオオムギ等の耐倒伏性・多収穫・病害虫抵抗性の改良が進められている。

 また、病害虫よる抵抗性の改良が進められると、農薬はほとんど不要になり、環境汚染も著しく減少させることが可能である。


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