一般財団法人 電力中央研究所

プレスリリース

電力中央研究所 2013年度事業報告・決算について

2014年6月13日
一般財団法人 電力中央研究所
 一般財団法人電力中央研究所(理事長:各務正博、本部:東京都千代田区)は、今般2013年度事業報告書・決算書を取り纏め、6月13日開催の評議員会で承認されました。

 原子力発電所の再稼働が未だ不透明な中、電気事業の経営環境は極めて厳しい状況が続いておりますが、当所では2013年度期中に、それらの状況を反映して、事業計画・収支予算を変更しました。

<2013年度事業における重点実施事項>
事業の推進にあたっては、電気事業者との緊密なコミュニケーションに基づき、電気事業の直面する課題の解決に向けて当所が取り組むべき研究を抽出・特定し、それらの中でも優先度の高い研究に経営資源を投入することで、効果的に成果を創出
原子力発電所の新規制基準適合審査への対応や、電力設備の自然災害対策など、喫緊の課題に対してはその解決に必要な成果をタイムリーに提供
再生可能エネルギーの大量導入への対応など、堅固で柔軟なエネルギー需給構造の構築に資する、中長期的な重要課題に対しても着実に成果を蓄積
前年度に引き続き、人件費をはじめとする経費全般を徹底して削減、これに加えて、電気事業の将来課題に関わる研究の一部休止・先送りや、研究力・課題解決力の源泉となる大型研究設備の導入・更新計画の一部延期も実施
制約条件の下でも、研究力を低下させないよう様々な工夫を凝らして事業を運営

 当所を取り巻く環境は今後も厳しいものと予想されることから、将来に向けた事業戦略を再構築し、電気事業の課題解決に資する実効性の高い研究成果の創出に努めていきます。

以下にて、研究活動、研究推進、業務運営・要員、決算の概要を紹介します

<事業報告>
1.研究活動(本冊P.5〜13)
 我が国の社会・経済の基盤を支える電力の安定供給に貢献するため、堅固で柔軟なエネルギー需給構造の構築を目指した研究を推進しました。特に電気事業にとって喫緊の課題となっている軽水炉安全性高度化、電力設備の自然災害対策等について、当所の総合力を発揮し、最優先で取り組みました。

 中期的な研究の方向性を示す「研究の柱」ごとの代表的な成果は以下のとおりです。

  ※各項目ごとに記したページ数は、本冊で当該研究内容について紹介をしているページです。
(1) リスクの最適マネジメントの確立
 原子力発電所の地震・津波等の自然外部事象に対する安全性評価やシビアアクシデント対策等に関わる研究開発、電気事業を取り巻く種々の制度環境におけるリスク要因分析等に関する研究を実施
原子力発電所の安全性評価のための基準地震動および竜巻影響評価
P12地球工学研究所「北海道・留萌地震の基盤地震動の推計」
P6電力流通設備の自然災害対策「電力設備に及ぼす気象・気候影響予測手法の開発」
原子力発電所の基礎地盤や周辺斜面に対する耐震設計法の開発
P6軽水炉安全性高度化「自然外部事象に対する原子力施設のフラジリティ評価」
原子力施設における火災現象評価技術の確立
P6軽水炉安全性高度化「原子力施設における火災現象評価技術の確立」
電力システム改革の制度設計におけるリスクの解明
P7エネルギー・環境制度の評価・分析「健全に機能する電力市場とネットワークの中立化」
(2) 設備運用・保全技術の高度化
 原子力発電の安定した運転に必要な保全管理技術、火力・水力発電設備および電力流通設備を対象とした建設・運用・保守等の支援技術の開発に関する研究を実施
軽水炉機器の健全性評価に係る試験法等の規格・基準への反映
P8軽水炉保全支援「原子炉圧力容器・炉内構造物健全性評価」
高クロム鋼配管溶接部のき裂発生に対する寿命予測法の開発
P8発電施設の建設・運用・保全支援「高クロム鋼製高温機器の設備診断技術の開発」
経年CVケーブルの残存絶縁性能評価技術の開発
P9電力流通設備の運用・保全支援「経年電力流通設備の維持管理技術の構築」
(3) 次世代電力需給基盤の構築
 再生可能エネルギーの電力系統への円滑な導入に備える次世代グリッド技術、蓄電池システム技術の開発、未利用資源等の有効利用に向けた火力発電の技術開発に関する研究を実施
太陽光発電大量導入時の既存電源と蓄電池の協調制御技術の開発
P11システム技術研究所「既存電源と蓄電池を協調制御する負荷周波数制御方式の評価」
系統安定化用リチウムイオン電池の性能劣化評価手法の開発
P10エネルギー高度利用技術の開発「高性能二次電池評価技術の確立」
石炭火力の未利用資源(難粉砕性炭)活用に有効な混炭法の開発
P9火力発電技術の高度化「微粉炭火力の燃料種拡大のための運用技術開発」

2013年度主要研究成果(抜粋)

2.研究推進(本冊P.14〜20)
 研究の推進にあたっては、以下に留意しました。
ブラシュアップ(再精査)の継続による研究計画の充実
電気事業の研究開発全体を俯瞰し、解決すべき課題を明確にした「電気事業の直面する課題」と、その解決に向け当所が取り組むべきアクションを取りまとめた「事業ポートフォリオ(研究の品揃え)」を策定
「ブラシュアップ(再精査)」
 電気事業全体を俯瞰し、電力サプライチェーンに応じた解決すべき課題の全体像を明らかにした上で、その中での当所の役割や今後の研究活動の具体的な進め方等について、改めて検討を実施。
電気事業者各層とのコミュニケーション強化により、現場のニーズをきめ細かく把握し、研究計画・推進に反映
予算抑制の下でも価値の高い成果を創出する研究体質の強靭化
研究費の抑制を継続する中でも、従来の取組み・手法に囚われない工夫を通じ、価値の高い研究成果を創出
研究価値評価や外部有識者による研究評価の実施
研究力・課題解決力の維持・強化/td>
将来にわたる研究力の源泉となる研究基盤を構築し、電気事業の課題解決に持続的に貢献するため、予算制約の中でも、種々の工夫を図りながら、大型研究設備を着実に導入
<導入した主要大型研究設備(例)>
 「津波・氾濫流水路」:津波等に対する電力設備の安全性評価に活用
 「実規模送電線雪害試験設備」:架空送電設備の雪害事象解明に活用
 「火力次世代燃料高度燃焼試験設備」:石炭火力燃料の多様化や燃料コスト抑制に貢献
 「炭化燃料化実験設備」:石炭火力でのバイオマス等の混焼利用のための炭化燃料化技術の開発に活用
 「ヒートポンプ開発試験設備」:種々の用途のヒートポンプの性能評価に活用
科学的知見の相互補完による効率的かつ高度な研究成果創出に向けて、国内外の大学や研究機関と共同研究や人的交流等を積極的に推進

3.業務運営・要員(本冊P.21〜25)
コスト削減のための抜本的な支出の見直し
・運営経費業務合理化担当役員を配し、さらなるコスト削減余地を洗い出し、定常的業務全般の経費削減を徹底。委託・購買での競争入札徹底による費用削減
・固定資産固定資産税・維持費負担軽減のため休止設備・不用資産の除却・売却を推進
・人件費役員報酬の削減幅の拡大、幹部職年俸および一般職給与の減額。常勤役員1名減員による経営体制のスリム化
収支状況を踏まえた研究拠点整備の推進
・拠点整備将来に向けた研究力の強化と固定的管理経費の削減を目的とした横須賀地区、我孫子地区への2研究拠点化整備の着実な推進と、狛江地区用地一部売却
・要員2015年度末目途での800名程度を基本方針に、個別の研究・業務の必要性を再整理した上で、有期雇用契約者の削減などの取組みを実施

 なお、一般財団法人移行に伴う公益目的支出計画については、上記の諸活動を通じて着実に実施しました。

<決算概要>(本冊P.31〜42)
 2013年度末の正味財産は前年度末に対し、42.6億円増の411.1億円となりました。
1. 貸借対照表
(1) 資産の状況
資産の総額は、前年度末と比べ62.9億円増の568.2億円。
<資産の増加は、現金預金の増加3.6億円、狛江地区用地一部売却収入を原資とした拠点化整備に向けた特定資産の積立額59.9億円、研究用資産などその他固定資産の増加額20.6億円などによる。資産の減少は、研究設備等取得引当特定資産の積立額と取崩額の差額34.0億円などによる>
(2) 負債の状況
負債の総額は、前年度末と比べ20.2億円増の157.1億円。
<増加理由は、年度末の研究設備等の取得が増加したため、未払金が17.4億円増加したことなどによる>
(3) 正味財産の状況
正味財産の期末残高は411.1億円。
<内訳は一般正味財産403.6億円および指定正味財産7.4億円>
2. 正味財産増減計算書
(1) 一般正味財産の増減
経常収益は、前年度と比べ23.5億円減の264.7億円。
<受取経常給付金は、前年度比27.1億円減の235.6億円、また、国等からの受託研究事業収益が前年度比4.2億円増の20.2億円>
経常費用は、前年度と比べ4.4億円減の284.2億円。
<減少理由は、収入減に対応するため事業計画を見直し、人件費を削減したことなどによる>
この結果、当期経常増減額は△19.5億円。
<前年度の△0.3億円から19.1億円減>
当期経常外増減額は、63.6億円。
<狛江地区用地一部売却などにより前年度比67.6億円増>
以上より、当期一般正味財産増減額は、44.1億円
(2) 指定正味財産の増減
当期指定正味財産増減額は、前年度比1.2億円増の△1.5億円。
<指定正味財産を財源とする特定資産の減価償却費が減少したことなどによる>

 詳細は添付の 2013年度事業報告書・決算書 をご参照下さい。



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