
ホワイトハウスは6月30日、「トランプ政権によるNEPA改革:全米国民の勝利」と題した記事を公表した。NEPAとは、1969年国家環境政策法の通称であり、連邦政府の主要行為(政策、計画、事業など)に対し、必要に応じて環境アセスメントの実施を義務付けるものである。
NEPA改革は、昨年1月に発足した第2次トランプ政権のエネルギーに関する重要政策の一つに位置付けられる。トランプ大統領は就任初日に「アメリカのエネルギーを解放する」、「国家エネルギー緊急事態を宣言する」という2本の大統領令を公表し、米国内のエネルギー開発促進に向けた規制緩和を命じた。その一つが、環境諮問委員会(CEQ)が策定した省庁共通のNEPA実施規則の廃止を含む環境アセス手続きの簡素化である。
CEQは、NEPAに基づき設置された大統領の諮問機関である。1978年以降は実施規則の制定を通じ、各省庁の環境アセス手続きの統括・調整役を担ってきた。
実施規則廃止後は省庁単位でNEPA実施手続きを定めるとされ、CEQが政権方針を踏まえた一連のガイダンスを公表している。各省庁は、パブコメなどの正式な規則制定手続きによらないガイダンス形式の実施手続きを定めることも可能で、迅速な規制緩和が可能となる。
これらの要点の一つ目は、NEPAが定める手続き期限と報告書のページ数上限の順守である。2020年にCEQが実施した調査によれば、環境影響評価書(EIS)は作成手続きの開始から完了まで平均4.5年(10~18年実績)を要し、最終EISは付録などを除いて平均661ページ(13~18年実績)に達していた。これは、NEPAの規定である2年以内・150ページ以内(特に複雑な行為では300ページ以内)を大幅に超過している。
二つ目は、適用範囲の限定である。NEPAは、「重大な環境影響が合理的に予見される」連邦政府の主要行為にEISの作成を義務付けた上で、その範囲を連邦政府が実質的な支配権と責任を持つものに限定している。昨年9月のガイダンスでは、評価対象は行為そのものに係る影響であり、実施時期や場所が異なる別の事業、省庁の規制権限外、および第三者による事業に係る影響は対象外であることが明記された。これにより、従来の実施規則で要求されていた累積的影響の分析は、事実上、任意となった。
三つ目は、「重大な環境影響」が通常はないとしてアセス手続きを要しない行為類型を定める、カテゴリー除外(CE)の拡大である。NEPAの規定を踏まえ、エネルギー省(DOE)は、今年2月の手続き改正において、一定の安全条件を満たす先進炉の「認可・立地・建設・運転・再認可・廃止措置」を包括的にCEとする措置を即日発効させた。そしてCEQは、4月のガイダンスで、CEの策定・改正手順や他省庁が既に設定したCEの適用手続きを示した。CEの策定・改正においてパブコメは原則不要とされ、各省庁によるリスト拡充が進んだ。
四つ目は、緊急性を要する代替手続きのエネルギー関連案件への適用拡大である。元々、旧NEPA実施規則や各省庁の実施手続きには、災害や国防などに対して迅速な対応を可能にするため、手続きの一部を省略できるとする規定があった。今回、「国家エネルギー緊急事態を宣言する」大統領令を踏まえ、内務省(DOI)は、エネルギーや重要鉱物を対象に、EISドラフトの省略、パブコメの省略もしくは期間短縮、手続き期間の大幅短縮等を含む緊急の代替手続きを定めた。
以上のように、一連のNEPA改革は、エネルギーに関するトランプ政権の意向と整合的である。ただし、必ずしもトランプ政権の意向のみに基づくものではない。一連の改革の背景には、NEPAを巡る司法判断の変化や規制緩和に向けた超党派の取り組みがある。
前述の通り、NEPAは詳細な手続きを条文で定めていないため、制定当時の運用は、各省庁の裁量によっていた。1977年、NEPAの実施強化を目的にカーター大統領(当時)は、統一規則の制定をCEQに義務付ける大統領令を公表した。これにより、CEQに各省庁の制度運用を統括する役割が与えられた。しかし、2024年11月、CEQの規則制定権限を否定した司法判断が、DC巡回区連邦控訴裁判所で示された。統一規則の廃止そのものは規制緩和を意図したものであるが、この司法判断が法的裏付けとなっている。
また、23年6月成立の財政責任法は、バイデン政権時代の超党派による連邦債務上限法であるが、一部にNEPA改正が盛り込まれている。さらに昨年5月、連邦最高裁判所は、NEPAに基づく影響評価の範囲を提案行為自体に限定する司法判断を示した。一連の規制緩和のうち、手続き期限とページ数上限の設定、適用範囲の限定、CE基準の明確化は、これらを行政手続きに反映したものである。
再生可能エネルギーや送電事業の認可手続きの遅延などを背景に、NEPA改革そのものには一部の民主党議員を含む超党派の合意がある。ただし、具体的な対象をめぐる対立は残る。例えば、DOEおよびDOIが新たに拡充したCEや緊急手続きの対象には風力・太陽光が含まれておらず、恩恵は化石燃料や原子力など、トランプ政権が重視する一部のエネルギー源に偏っている。規制緩和の対象を巡る党派対立は、将来的な政権交代に伴う事業者のリスクとして残る。
旬刊 EP REPORT 第2182号(2026年8月1日)掲載
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