電気料金の上昇が続いている。燃料価格の上昇に加え、昨今は自由化された市場に起因するリスクも背景にある。卸電力価格の上昇により、一部の小売電気事業者は撤退や契約停止を余儀なくされ、市場連動型料金が急激に上昇するなど、事業者と消費者の双方でリスクが顕在化した。
本稿では、料金上昇局面における消費者の認識を探るために行ったアンケート調査(2022年4月、回答数532件)をもとに、消費者の視点から電気料金に関する今後の課題を紐解いてみたい。
先述の調査によれば、約5割の世帯で電気料金の支払額が増加したと認識されている。支払額が増加した回答者にその理由を尋ねたところ、主因である燃料価格上昇を挙げた回答者は3割弱と少ない。また、市場価格の急激な変動の影響を直接受ける市場連動型料金の利用世帯は現状では少ないものの、本調査で市場価格上昇を支払額増加理由に挙げた回答者は4割超と多い。このように、電気料金の仕組みに関する認識は十分とはいえない。
リスクの料金プランへの織り込み方には、様々なバリエーションがあるが、単純化すると、単価が変動する料金と、単価が固定される料金に大別できる。従来の燃料費調整制度は、調整の上限やタイムラグはあるものの、燃料価格の変動リスクを一定程度、消費者が負うという点で変動料金の一種である。また、時間帯ごとの需給状況に応じて高頻度で料金を変動させるダイナミック料金は、変動料金の究極形といえる。
本調査では簡易的に、変動料金と固定料金のどちらを好むかを探った。調査前は、料金上昇局面では、大半の消費者がリスクを回避できる固定型を選好すると予想していたが、結果を見ると、固定型を選好する割合が大きいものの、リスクを受容する変動型の選好も少なくない(図①)。
図 変動料金と固定料金に対する消費者選好(①回答者全体の集計、②燃調制度の認知度別の集計)
もう1つわかったことは、選好を強く持つのは少数で、変動・固定料金のいずれでも、「どちらかといえば」好むという中間的な選好が約8割を占めている。料金変動等の状況次第で選好が揺れる可能性もある。
この選好の強さには、消費者のリテラシーが関係していることも見えてきた。燃料費調整制度などの仕組みの認知度が低いほど、中間的な選好が大きい傾向がある(図②)。
料金上昇局面であっても、料金のリスクに対する消費者の選好は多様であった。事業者にとっては、リスク選好の詳細を的確に把握し、料金設計に反映していくことが課題となる。
また、全面自由化から約6年が経過したものの、消費者のリテラシーが十分でなく、市場リスクに向き合う準備ができていない実情も見えてきた。料金のリスクに関する情報提供も課題である。
今後、再エネや蓄電池、電気自動車などの普及に伴い、需給や市場リスクも変容しうる。効率的な資源配分のために、ダイナミック料金など新たな料金も候補となる。消費者の選好をふまえた料金設計や情報提供の実現により、市場の変容に対して事業者も消費者も柔軟に対応し、市場が健全に発展していくことを期待したい。
電気新聞 2022年8月3日掲載