研究資料

2019.04

産業用電力需要に対する購入電力と自家発電力の代替性に関する分析

  • エネルギー需要
  • 経済・社会

報告書番号:Y18509

概要

背景

 東日本大震災により生じた電力供給危機やその後の電気料金の上昇は、事業継続計画(BCP)に基づく停電対策や電力コストの低減に対する企業のスタンスに大きな影響を与えたと考えられる。このような状況下、各企業は電力の安定供給やエネルギーの有効利用の観点から、自家発電設備の新設や増設の動きをみせている。また自家発電は、購入電力の潜在的な競争相手と考えられることから、自家発電の動向が電力需要に及ぼす影響を業種別に分析することは、将来の需要想定を行う上でも重要であると考えられる。

目的

 産業用電力需要に対する購入電力と自家発電の代替性を定量評価するために、業種別代替弾力性の推定および自家発比率のトレンド変化について分析を行い、代替性の業種間差異を明らかにする。

主な成果

 購入電力と自家発電の代替性を定量評価するために、自家発比率を被説明変数、相対価格(電力購入価格と自家発用燃料価格)とトレンド成分(β)を説明変数とするモデルを用いて、代替弾力性(σ)の推定を行った。ただし、リーマンショックや東日本大震災といった外生的ショックや政策的な要因等により、この間、需要家の行動に変化が生じた可能性がある。その変化を把握するために、本報告では、従来の回帰モデルとは異なる、β と σ が時間を通じて変化することを許す、状態空間モデルにより分析を行った。

 その結果、繊維、パルプ・紙・紙加工、化学(石油石炭製品含む)、鉄鋼・非鉄・金属の各業種では、代替弾力性(σ)が統計上有意に非弾力的であるという結果を得た(表)。これらの産業は、エネルギー多消費型で自家発比率が比較的高く、自家発用燃料として生産工程で発生する副生ガスなどを利用する「プロセス型」の産業であることから、相対価格の変化に対して非弾力的になったものである。

 上記の産業について、相対価格による短期的な変動を除去し、長期的な変動のみを抽出した β の推定結果を図に示す。この結果、これらの産業においては、自家発比率の伸びは、2005年度から2010年度に掛けて鈍化したものの、2011年度以降は増加に転じている。この理由としては、BCP 対策や電力自由化の動きを受けた売電目的による自家発電設備の増強などの可能性が考えられる。

今後の展開

 業種ごとの自家発電の運用の変化や技術の変化が代替弾力性や自家発動向にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、今後、アンケート調査やヒアリングなどの詳細な分析を検討する。

キーワード

産業用電力需要、自家発電、代替の弾力性、購入電力、コージェネレーション

Back to index

TOP