社経研DP

2021.07.09

コロナ禍における家庭用電力需要の変化―時期・平休日・時刻により、どのような違いが生じているのか?―

  • エネルギー需要
  • 企業・消費者行動

SERC Discussion Paper 21002

要約

 新型コロナウイルス感染症は、社会経済活動に多大な影響を及ぼしている。特に首都圏では、多くの感染拡大防止策が講じられ、在宅勤務が他地域よりも積極的に推進されてきたことから、電力需要への影響も大きかったものと推察される。これまでも月間値に基づく分析などはあるが、平休日や時刻別の違いを含めて、家庭用電力需要への影響は十分には明らかにされていない。生じた変化の一部はコロナ後に定着する可能性があり、その兆候をとらえるためにも、足元における実態を把握しておくことは有益である。
 そこで、関東1都8県に居住する約1.2万世帯のスマートメータデータを活用し、気象などの影響を補正した上で、コロナ禍の1年余りにおける家庭用電力需要の変化を明らかにした。
 分析結果によると、コロナ前の水準と比べて、年間電力需要(2020年3月~2021年2月)は世帯あたり約150kWh(約4%)増加していた。日中から夜にかけての需要増が顕著であり、特に平日の変化が大きかった。また、特に3つの時期で、顕著な変化が見られた。第1に、第1回緊急事態宣言の発出と前後する2020年4月において、月全体の増加率は約8%になり、期間中で最も高かった。特に、日中の増加率は約20%であった。他方、平日6時台は6月頃まで減少が目立ち、在宅勤務などによる起床時間の後ろ倒しの影響が観察された。第2に、夏季で需要が多い月である2020年8月において、月全体の増加率は約5%であった。中でも午後には約60W(約10%)増加した。在宅率が例年より高い状況下で、気温の高い時間帯に冷房利用が増えたためと考えられる。第3に、冬季で需要が多い月である2021年1月において、月全体の増加率は約5%であった。中でも夕方には約70W(約10%)増加した。在宅率が例年より高い状況下で、気温の低下により暖房利用が増えやすく、日没に伴う照明利用も加わっている可能性が示唆される。
 本分析で明らかにしたのは約1年間の短期的影響であり、今後も動向を注視していく必要がある。より長期的な視点で、どのような暮らしや社会の姿をもたらすのかについて考察を深めていくことも重要である。

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