社経研DP

2026.01

レベニューキャップ制度における物価変動の対応ーイギリス・ドイツの事例とわが国への示唆ー

  • 電気事業制度

SERC Discussion Paper 25008

要約

 送配電事業におけるレベニューキャップ制度は、わが国では2023年度から開始されており、規制期間を5年間として収入上限を事前に設定している。レベニューキャップ制度の導入当初は、長く物価変動が見られない状況が続いていたことも背景にあり、収入上限の算定式に物価変動の調整項は設けられてこなかった。しかし、2021年頃から資材・労務費等の物価の上昇の影響を受け、一般送配電事業において費用の増加が収入上限に反映されない課題に直面した。このため、第1規制期間 (2023-2027年度) においては2026年度および2027年度を対象として、消費者物価指数 (Consumer Price Index, CPI) および建設工事費デフレーター (電力) を用いた物価調整の制度措置が講じられることになった。

 一方、かねてから物価変動がある海外においては、収入上限の算定式に物価変動の調整項が設けられてきた。わが国のレベニューキャップ制度の設計の参考とされてきたイギリスおよびドイツでは、CPIに加え、送配電事業に関連する投入要素価格の変動を収入上限に算入する仕組みがある。さらに、イギリスでは物価調整分を送配電料金で回収するまでのタイムラグに伴う利息を収入上限に反映する措置も講じられており、ドイツでは期中調整の対象費用の割合が多く、結果的に毎年の物価を反映した費用が収入上限に算入されている。これらの事例から、レベニューキャップ制度における物価変動への対応は、物価調整項のみならず、利息調整項や期中調整項を含めた制度全体の枠組みを踏まえて検討する必要があると言える。

 今後わが国では、金融政策や海外の経済情勢の変化を背景とした物価変動に備え、第2規制期間(2028年度開始予定)に向けては、一般送配電事業における資材価格や労務費の動向をより適切に反映する収入上限の設定が求められる。

免責事項

本ディスカッションペーパーは広く意見やコメントを得るために公表するもので、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所または社会経済研究所の見解を示すものではない。

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