米国は長年にわたり、政権交代のたびに温暖化対策を劇的に転換してきた。クリントン政権は京都議定書に合意したが、ブッシュ政権は離脱した。オバマ政権は国内では各種排出規制を導入し、国際的にはパリ協定を導いたが、トランプ政権は協定からの脱退意向を表明し、国内規制の見直しや撤廃を進めている。
政策が劇的に転換する背景には、米国民の地球温暖化への態度が大きく割れていることがある。米ギャラップ社は長年、米国民の温暖化への見方に関する世論調査を実施しており、最新の結果は3月下旬に公表された。同社のこれまでの調査結果に基づき、米国民の態度を考察する。
まず、全体の傾向を見てみると、人間活動によって地球温暖化が引きこされていると信じている人々の割合は、2010年から2015年までは50%から57%の間で変動してきたが、2016年以降は65%前後に跳ね上がった。
この数字は、温暖化への理解が高まる傾向にあることを示す一方、未だ3割以上の人々が人間活動による温暖化を信じておらず、米国民の間での見解の隔たりが大きいことの証左とも言える。そして、支持政党別の回答をみると、党派間での意見の相違が広がっていることがわかる。
民主党支持者の間では、温暖化が人間活動によって引き起こされると信じる割合が2001年から2012年まで、65~75%の間で推移したが、その後、急上昇し、2017年と2018年は9割弱となった。
他方、共和党支持者では、2000年代前半は半数強が人間活動に起因すると信じていていたが、その後、下降が続き、2010年には35%まで下がった。2011年以降は徐々に回復し、2017年には40%となったが、2018年には再び35%に落ちた。
どちらにも属さない人々については、2010年以降、半数前後が人間活動に起因すると信じていたが、この2年間は6割以上となった。
つまり、全体でみれば、地球温暖化への理解はこの数年で高まったが、共和党支持者に限れば、人為的な気候変動を信じる割合はほぼ変わっておらず、党派間での意見の相違がますます広がった。この態度差が続く限り、政権交代のたびに劇的な政策転換を繰り返すものと予想される。
ただし、民主党支持者の間では意見の一致度が高いものの、共和党支持者の間では人為的な温暖化の存在について、1対2の割合で意見が割れており、共和党政権の態度は揺れ動きやすいとも言える。例えば、トランプ大統領は昨年6月にパリ協定からの脱退意向を表明したが、その直前には政権内の脱退派と残留派の激しい対立があり、また大統領自身も、条件次第では残留する可能性に言及するなど二面性がある。
最新の調査結果で興味深いのは、18歳から34歳までの若年層が、それ以上の世代よりも地球温暖化への心配度が高いことである。別の調査でも、この世代は、トランプ大統領のパリ協定脱退表明への不支持率が突出して高かった。今年2月には、有名大学における共和党支持の学生団体が連名で炭素税支持を打ち出すなど、若年層の間で、温暖化問題への関心が党派を超えて高まりつつある。
今後、世代交代が徐々に進む中で、党派間の溝が狭まるのかどうか注視する必要がある。
電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員 上野 貴弘
電気新聞2018年4月24日掲載
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