電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y09026
タイトル(和文)
技術進歩の諸要因と取り巻く構造に関する予備的検討
タイトル(英文)
A preliminary study on framework to systematize the sources of technological change
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
温暖化対策として、新エネルギー技術や省エネルギー技術の更なる高効率化やコストダウンという「技術進歩」*が期待され、これに向けてR&D支援や需要創出といった政策が実施されている。他方、このような技術進歩が、他の異なる目的で進められた技術進歩の波及(スピルオーバー)によって進んだ事例が存在する。技術進歩を進める多様な要因の存在、およびこれらの要因を取り巻く構造は、R&D支援や需要創出の成果、ひいてはその政策策定に影響を与えうると考えられるが、技術進歩を進める諸要因がその構造とともに同定され、政策決定に向けて共有されているとは言いがたい。
そこで、本稿では、新・省エネルギー技術のコストダウンと高効率化という「技術進歩」を進める要因について、スピルオーバーを含む複数の要因に着目した既往文献を中心に調査を行い、①技術進歩を進める諸要因を同定し②それらを取り巻く構造を整理するとともに、③各要因の重要性に関する現状の知見を得る。
主な成果は次の通りである。
① 既往文献に基づき、技術進歩を進める活動・知見として、4つの要因を同定した。特定の目的の技術進歩に向けたR&D、その生産過程における学習(LBD)、その普及過程における学習(LBU)、および他の目的の技術進歩からのスピルオーバーである。LBUは、技術のユーザーにおける使用方法の改変と共に、使用経験を反映した技術の改変という技術進歩を含む。
② 技術進歩の4つの要因とそれらが生じる過程を整理し、「普及」がLBDとLBUを通じて、「ユーザー」の志向がLBUを通じて、さらに社会における「他の目的の活動」がスピルオーバーを通じて、特定の目的の技術進歩を規定する構造を示した。「普及」の特性を整理することで以下の示唆が得られる。
・ 技術進歩の普及の成否や速度は、経済的優位性だけではなく、個人の満足感や、既存の価値観との両立可能性、関連技術の利用可能性など、多様な側面についての社会的な受容性が影響する。高効率化やコストダウンといった経済的側面の技術進歩だけではその普及は定かではない。
・ こうした特性を持つ普及と、ユーザーの志向、および社会における他の目的の活動を通じて、技術進歩は、その技術進歩を目指すR&D活動そのもの以外に、幅広い社会の動向に規定されうる。
③ 技術進歩の要因それぞれの重要性を示す分析や、技術のコスト低下要因を累積生産量やR&D投資額、さらには技術進歩以外の特性である規模の経済や投入要素の価格などに求める定量的な分析が進められている。しかし、特にLBUやスピルオーバーを含めて、4つの要因の相対的な重要性を定量的に示す事例は、限られることが明らかとなった。
概要 (英文)
For climate change mitigation, governments are trying to induce technological changes to get more affordable mitigation technologies or higher energy efficiency by supporting research and development (R&D) or by market creation intending to cost reduction of the technologies. On the other hand, technological changes realize as consequence of spillovers from technological changes for other purposes. To design mitigation policies more effective, all the sources of technological change should be identified, evaluated, and systematized.
This report aims to identify the sources of technological change, to develop a framework to understand technological changes, and to investigate the contributions of each source by selective overview of literatures focusing on more than one source of technological changes including spillover.
This report finds four independent sources, i.e. R&D, spillovers, learning by doing (LBD) and learning by using (LBU), and a framework to systematize the technological change which covers those four sources and the related processes like "diffusion" of technological changes. The framework indicates that technological changes are influenced not only by the activities aiming at the particular purposes like R&D, but also by other specific intentions of adapters or users of the technologies, and by further activities aiming at technological changes under other purposes by way of LBD, LBU and spillovers. However, it also becomes apparent that contributions of each source are not well identified yet particularly in terms of their relative importance, which is indispensable to fully utilize the framework.
報告書年度
2009
発行年月
2010/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
今中 健雄 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
温暖化対策 | Climate Change Mitigation |
技術進歩の要因 | Sources of Technological Change |
研究開発 | Research and Development (R&D) |
スピルオーバー | Spillovers |
学習効果 | Learning by Doing, Learning by Using |