電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y09022
タイトル(和文)
わが国の一般電気事業者の火力発電所における省エネルギーの歴史
タイトル(英文)
A historical analysis of energy efficiency in the Japanese thermal power stations for general electric utility
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
火力発電は,現在もわが国の発電電力量の約54%(2007年度)を占めている.1951年から2000年までの50年間で発電電力量は約60倍に増加する一方で,効率は20%弱から40%近くにまで向上した.このような大幅かつ長期間にわたる省エネルギー(設備の高効率化等)が進展するプロセスについては,一部の技術的な要因や短期間の動向について論じたものは多く存在するが,技術史的な視点から通史的に論じたものは見当たらない.そこで本研究では,わが国の一般電気事業者の火力発電所において,9電力体制が整った1950年代から年間発電電力量がほぼ一定(約4000億kWh)となる2000年前後までの約50年間における省エネルギー進展の経緯を明らかにすることを目的とする.
本研究では,既往文献(電力各社の社史,関係者による著作,重電メーカーの出版物,学協会誌等)の調査により,戦後のわが国の一般電気事業者用火力発電所において省エネルギーが進展する経緯を,大容量化が進展した石油危機以前と,新たな燃料や技術等の導入が始まった石油危機以後に分けて分析した.その結果,戦後のわが国の一般電気事業者用火力発電所では,設備の大容量化や高効率化というハード対策と,きめ細かな操業改善というソフト対策の両面から省エネルギーが進められてきたことを明らかにした.
1.設備の高効率化の進展について:1950年代は,増大する需要に対応するために単機容量の拡大と経済性の向上を重視した電力会社側が,新鋭火力(輸入機)の導入を積極的に行い,重電メーカーは海外メーカーと技術提携を結んで,これを支援した.また,1960年代~1970年代前半にかけては,電力会社側は,さらに蒸気条件を向上させる技術を積極的に導入し,重電メーカーの技術提携と独自の技術開発等による技術力向上,行政による勧告等が,この動きを支えた.また,1970年代後半から1980年代にかけては,燃料の多様化及び大気汚染対策からLNGが燃料の主力になる一方で,さらなるコスト削減を求めた電力会社を,国内メーカーの技術力向上,行政の開発支援等が支えたことにより,高効率化が進展した.そして,1990年代以降は,タービンやボイラの材料技術の改良によってコンバインドサイクルの発電効率向上や石炭火力発電の大容量化が図られた.
2.操業改善や設備改造による省エネルギー対策について:1950年代は,急速に増大する電力需要に対し,稼働率の確保に重点が置かれていた.また,1960年代~1970年代にかけては,オンライン保守や運転の最適化による,より細やかな熱効率の維持・向上に取り組んでいた.そして,1980年代以降は,それまでの熱効率の向上に加え,所内動力の低減も,さらに積極的に行われるようになった.
概要 (英文)
This report analyses the history of energy efficiency in the Japanese electric power companies by examining the process of the introduction and diffusion of highly effective plants and equipments in the thermal power stations, as well as various operational practices (Sogyo-kaizen).
From the postwar reconstruction period to the high economic growth period (1950's to1960's), In order to meet increasing demand of electric power, Japanese electric power companies imported a large capacity and highly effective thermal power units and equipments. Japanese manufacturer supported their strategies through the technical tie-up with overseas manufacturer while Japanese government backed up with the recommendation. After the Oil Crisis in 1973, electric power companies requested more highly effective plants and equipments namely CCT, USC. Technological improvement of indigenous manufacturers and the governmental R&D project such as the project of highly effective gas turbine helped these innovations.
The operational practices, such as the operation improvements and the equipment remodeling, have been implemented since postwar in each company for maximum use of these plants and equipments.
報告書年度
2009
発行年月
2010/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
加治木 紳哉 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
今中 健雄 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
木村 宰 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
省エネルギー | Energy Efficiency |
火力発電所 | Thermal Power Plant |
石油危機 | Energy Crisis |
大気汚染 | Atmospheric Pollution |
エネルギー管理 | Energy Management |