電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y09012

タイトル(和文)

業務部門における省エネルギー対策の傾向分析―東京都の温暖化対策計画書制度下ではどのような対策が計画されたか?―

タイトル(英文)

Trends of Energy Efficiency Measures in Commercial Buildings under theTokyo CO2 Emission Reduction Program

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

省エネルギー対策は、技術的に確立され経済的にも優れていることが多く、温暖化対策の中でも費用効果的なアプローチとして期待されている。省エネポテンシャルを掘り起こしていくためには、現場の実態を理解した上で政策を議論していく必要がある。しかし、業務部門については横断的に事例データを収集することが難しかったこともあり、省エネ対策の全体像を把握できるような知見が蓄積されていない。そこで、サンプル数が多く詳細も把握できる対策事例集として、東京都「地球温暖化対策計画書制度」の対象事業所のうち、業務部門の約800事業所の5カ年計画データを集計することで、現場における省エネ対策の傾向を定量的に明らかにした。

2005~09年度実施分として計画化された約6,000の対策による削減効果見込みの分析からは、以下の傾向が明らかとなった。
(1)分析対象事業所が策定した5カ年計画では、加重平均4.3%の温室効果ガス削減効果が見込まれた。その内訳は、設定条件変更等の運用改善で1.4%、投資回収3年内の設備投資対策で0.8%、投資回収3年超の設備投資対策で2.1%であった。
(2)分野別構成では、空調・換気設備、および熱源・熱搬送設備関連の対策による削減見込みが、削減効果全体の約2/3を占めていた。照明設備関連の対策にも大きな期待が寄せられている。
(3)主要対策分野である熱源・熱搬送・空調・換気関連について、計画化率や計画削減率の詳細を分析した。多くの事業所で検討されるに至ったのは、温湿度設定変更や外気導入量制御(過剰換気の抑制)のような運用改善による対策であり、削減効果への期待も大きい。計画化時の削減率が大きい対策としては、機器更新・改修などによる高効率化が挙げられる。部分負荷対策であるインバータ制御や可変風量・流量制御も、重要な対策として位置付けられていた。
(4)一般的にはテナントビルは自社ビル注2と比べ省エネ対策に消極的と理解されることが多いのに対し、計画データの統計的検証からは、基本的対策の水準には差が見受けられず、違いとして浮かび上がったのは投資回収年数が3年を超える対策の難しさであった。

分析した省エネ対策には、運用改善をはじめとする費用効果的な対策余地も多く含まれている。これらは従前の政策の下では掘り起こしができていなかったものであり、都が重視した対策メニューの提示や専門的な指導・助言により一定の底上げ効果があったことを示唆している。事業所へのアンケート調査やエネルギー管理関係者へのヒアリング調査を通じて、現場における省エネ推進の阻害要因(バリア)を明らかにし、バリアを乗り越えるための方策のあり方について検討していく。

概要 (英文)

Improving the energy efficiency (EE) is widely recognized as a most cost-effective option to mitigate CO2 emissions. However, very little is known about what EE measures are currently implemented in the commercial sector partly due to the lack of data availability. This study attempts to show the overall picture based on the empirical data of about 6,000 EE measures projected by 775 business places under "the Tokyo CO2 Emission Reduction Program." In this program from 2005 to 2009, Tokyo metropolitan government demanded the large-scale factories and business facilities to submit 5 year plans, including the detailed description of each EE option, e.g., category, level, and reduction amount. The result shows that the expected reduction rate of Green House Gases is 4.3% on average: 1.4% by operation management, 0.8% by investments with the pay back of 3 years or shorter, and 2.1% by those of 4 years or longer. This implies that technical advices and complementary energy audit played important roles to stimulate implementation of EE measures that had been unused despite its cost effectiveness. With regard to the category, measures on air conditioning, ventilation, heat source and heat transfer equipments account for two-third of the total reduction potential. Moreover, the t-test reveals that multi-tenant buildings are reluctant to invest EE options with the long pay-back period compared to owner-occupied buildings.

報告書年度

2009

発行年月

2010/04

報告者

担当氏名所属

西尾 健一郎

社会経済研究所 エネルギー技術政策領域

木村 宰

社会経済研究所 エネルギー技術政策領域

野田 冬彦

社会経済研究所 エネルギー技術政策領域

キーワード

和文英文
省エネルギー Energy Efficiency
CO2削減ポテンシャル CO2 Emission Reduction Potential
温暖化政策 Climate Change Policy
業務部門 Commercial Sector
オフィスビル Office Building
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