電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y09010
タイトル(和文)
省エネルギー法による工場規制の意義と課題
タイトル(英文)
Effectiveness of regulations on firms by Japanese Energy Conservation Law
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)は、一定以上のエネルギー消費量を有する事業所を指定し、判断基準の遵守などを義務付けている。近年は数年置きに規制強化が図られており、わが国の省エネ政策の柱の一つとなっている。そこで本研究では、省エネ法による工場(製造業)への規制の意義と課題を明らかにした上で、今後の省エネ施策のあり方を提言する。本研究では、12社へのインタビュー調査を通じて省エネ法の効果を分析するとともに、そのうち1社への詳細な事例調査を行い、省エネ法の意義と課題を整理し、今後のあり方を検討し、以下を明らかにした。
1. 省エネ法の効果:
a) 省エネ法は、1990年代半ば以降の規制強化を通じて、工場のエネルギー管理に対して一定の影響を与えてきたことが観察された。インタビュー調査では、定期報告等の行為規制により省エネへの意識が向上した、省エネ投資への優先順位が上がった、より詳しい計測をするようになった、といった指摘があった。特に2001年から実施された工場調査については、多くの企業で判断基準の遵守を強く促したことが指摘された。また、原単位改善目標が提示されたことにより、社内省エネ目標を設定する際の一つの指標となった、目標達成のため追加的な対策に結びついた、といった効果が指摘された。
b) このような規制の影響は企業によって異なっており、4パターンが観察された。省エネ法の規制への対応を通じて省エネを推進した企業だけでなく(II)、もとより省エネ法の規制内容を上回る優れたエネルギー管理を実施しているため、省エネ法の影響がほとんどない企業もあった(I)。また。省エネ法の規制には対応したものの、実質的な省エネ対策が推進できていない企業もあった(III)。
2. 省エネ法の意義: 省エネ法は、省エネ推進の基本的なツール(管理体制、記録体制、管理標準、設備計画、削減目標)を十分に有していなかった事業者に対して、それらを整備させるとともに、省エネ推進への意識や理解を向上させた。これは省エネ法の重要な意義であったと言える。
3. 省エネ法の課題: 省エネ法が求める管理標準や管理体制の整備は、あくまでツールに過ぎず、活用しなければ省エネは進まない。省エネ法は、それらを活用して省エネを進めるかどうかを工場の自主努力に委ねている。工場調査等を通じて省エネ推進の基本的ツールの整備を促したものの、それを実質的な省エネ推進につなげるところまで促せていない点は、省エネ法の大きな課題である。
4. 今後の省エネ施策のあり方: 第一種指定工場でも、管理標準等を整備したもののそれらを活用できず、省エネ推進に至っていない事業者(III)が多いことが推察される。その場合、単なる執行強化や範囲拡大は効果が小さく、むしろ管理標準を活用できない企業に対して何らかの指導ないし支援を行う方が効果的であろう。具体的には、業種ごとの具体的な対策メニューの作成、個別事業所への指導・支援、省エネ診断事業の拡大といったさまざまな方策が考えられ、今後検討していく必要がある。
概要 (英文)
Japanese Energy Conservation Law regulates firms with annual energy consumption more than 1,500 kilo litters of crude oil equivalent. It has been one of the core policy instruments in improving energy efficiency in Japan since its enactment in 1979, and its regulations have been repeatedly tightened through its revisions since the mid 1990s. In order to evaluate the effectiveness of the regulations, we conducted three kinds of surveys: a literature survey on the history of the origin and revisions of the Law; an interview survey on 12 companies from various manufacturing sectors and with various sizes in energy consumption; and an in-depth case study of one manufacturing firm. Based on the analyses we found that the impact of the regulations varies among firms and that, while many of the regulated firms were effectively encouraged to obtain basic tools for energy management (such as energy managers, reporting system, operating manuals, and energy intensity target) by the Law, most of them seemed to neither make use of the tools nor start additional energy saving activities. Even in large firms which are regulated by the Law, lack of technical expertise and organizational capacity seem to impede the utilization of the energy management tools. This implies the ineffectiveness of the current frame of regulations and the necessity to provide firms with more technical supports, such as site-by-site energy audits.
報告書年度
2009
発行年月
2010/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
木村 宰 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
野田 冬彦 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
省エネルギー | Energy efficiency |
省エネルギー法 | Energy Conservation Law |
産業部門 | Industry sector |
規制 | Regulation |
エネルギー管理 | Energy management |