電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y09009
タイトル(和文)
省エネルギー診断事業の費用対効果と改善策
タイトル(英文)
Effectiveness of Energy Audit Programs in Japan
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
省エネ診断は、情報欠如や技術力不足といった省エネルギーを妨げるバリアを解消する有効な手段とされている。わが国では石油危機以降、省エネルギーセンター(ECCJ)、旧中小企業総合事業団、NEDO、地方自治体等によって年間数百~2,000件程度の省エネ診断が事業者に対して無料で提供されてきた。しかし、その効果や課題はほとんど分析されていない。
そこで本研究では、わが国における省エネ診断事業の実効性を分析し、今後のあり方を検討した。代表的な省エネ診断事業として、中小事業所に対するECCJ診断(簡易診断)および大規模事業所に対するNEDO診断(計測診断)の2つを取り上げ、費用対効果の推計と診断事例のケーススタディーを行った。また、複数の省エネ診断員とのディスカッションを踏まえて、今後の省エネ診断事業のあり方を検討した。その結果、以下を明らかにした。
1. 費用対効果の推計: 政府の費用のみを考慮した場合(政府の視点)と、政府費用に加えて設備導入費用や省エネによる光熱費削減も考慮した場合(社会的視点)の2通りの推計を行った。その結果、社会的視点からのエネルギー削減費用およびCO2削減費用はいずれも負の値となった。これは、光熱費削減便益が省エネ診断の実施費用や設備投資額を上回り、便益を出しながらCO2削減ができることを示している。
2. 診断事例に対するケーススタディー: 診断を受け入れた5事業所を対象として、診断実施の経緯やその後の活用実態を詳しく調査した。
a) 大規模工場診断(2事業所)では、改善提案は大いに活用されており、診断時の効果推計に近い効果が実際に得られている例もあった。大手企業の大規模工場においても、外部専門家による計測診断が省エネ余地の掘り起こしに有効であることが示唆された。
b) 一方、中小工場診断(3事業所)では、調査事例が平均的案件より小規模であったこともあり、診断による改善提案の大半は実施されていなかった。適切に理解されていない事例や、実施したくても方法がわからないといった事例があった。受け手の能力・関心に合わせた提案や診断後のフォローアップの必要性が示唆された。
3. 今後の省エネ診断事業のあり方: 省エネ診断事業は費用効果的な省エネ余地の掘り起こしに有効であり、その費用対効果は高いことから、事業の規模や対象の拡大が必要と考えられる。大規模工場においても公的な省エネ診断の潜在的ニーズは大きいと考えられ、計測を含めた診断事業や、省エネ法第1種指定工場クラスの事業所への診断事業を検討すべきであろう。また、診断後のフォローアップ強化や品質向上、人材育成策について検討していく必要がある。
概要 (英文)
Energy audits are considered to be an effective tool to overcome information barriers to energy efficiency and to achieve cost-effective energy efficiency potentials. Yet little is known about the effectiveness of energy audit programs by the government, especially in Japan. The report focuses on two energy audit programs, one by ECCJ (Energy Conservation Center, Japan) and the other by NEDO (New Energy Development Organization). ECCJ has been providing free-of-charge, walk-through type energy audits to small- and medium-sized firms since 1975, which now amounts to more than 12,000 of audits. NEDO's audit program was conducted from 1999 to 2007 and provided rather detailed audits to about 500 large firms.
Based on program reports and follow-up surveys by ECCJ and NEDO, we estimated the cost-effectiveness of the two energy audit programs. Estimated societal cost effectiveness were -6,100 JPY/kilo litter and -3,800 JPY/kilo litter of crude oil equivalent for ECCJ's program and NEDO's, respectively. This indicates that these programs resulted in net societal benefits. We also conducted case studies on five companies which accepted energy audits. While the results of audits in small companies we interviewed were disappointing (i.e. most of the recommendations were not implemented), large firms took advantage of the audit program to exploit energy efficiency potentials. Based on these results, several lessons were discussed to improve and expand energy audit programs.
報告書年度
2009
発行年月
2010/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
木村 宰 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
野田 冬彦 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
省エネルギー | Energy efficiency |
省エネルギー診断 | Energy audit |
費用対効果 | Cost-effectiveness |
省エネルギー政策 | Energy efficiency policy |
エネルギー管理 | Energy management |