電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y08040
タイトル(和文)
組織に対する信頼の規定因に関する予備的検討
タイトル(英文)
A Preliminary Study on Factors Constructing Trust in Public and Private Organizations
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
度重なる不祥事により企業や行政は社会からの信頼を損ない,現在その回復が急務となっている。本研究は,信頼回復のための効果的な組織行動を探るために,まずは行政や企業などの組織体に対する信頼(対人的信頼とは異なる集団レベルの信頼)の構成要素を明らかにすることを目的としている。業種により信頼されている程度が異なり,信頼の構成要素も異なることが推測されるため,調査対象として行政機関,報道機関,電力会社,自動車メーカー,食品メーカーの5業種を選んだ。
2008年10月上旬にweb調査を実施し,調査依頼総配信数は12724であり,そのうち3711名から回答を得た(回答率29.2%)。
各業種について信頼できる程度を5点尺度で尋ねた結果,回答者の信頼が最も高かったのは自動車メーカーであり,次に電力会社,報道機関,行政機関と続き,最も信頼が低いのは食品メーカーであり,その差は有意であった。
様々な組織活動に対する評価では,多くの項目で自動車メーカーに対する評価が最も高く,次に電力会社が高く評価されていた。相対的に評価の低かった行政機関では部門間の連携に関して,食品メーカーでは法律・規制の遵守の評価が低かった。また,「組織の風通し」「事故や不祥事の情報提供」については,全ての業種で評価が低かった。
5業種それぞれに対し,回答した全ての回答者データを用いて,対象業種全体に対する信頼にどのような要因が影響しているのかを調べた。その結果,5業種すべてに共通して,組織に対する信頼と強い相関関係(r=.45以上)にあったのは“業務の適切な遂行”,“法令遵守”と“公正な情報提供”であった。また,“企業利益の最優先”は組織に対する信頼とは関連していなかった。“公正な情報提供”は,公正・中立であろうとする“意図”を意味し,“業務の適切な遂行”は組織の品質管理への動機と,それを実施する能力を意味すると解釈でき,対人的信頼の先行研究から示されている“能力”と“意図”と一貫する結果であった。一方“法令遵守”は行政や企業の義務とも言えるが,法律や規制を遵守していると認知されることが,組織の信頼性評価に重要な役割を果たすことが示された。
組織内部の視点からの評価と,外部の視点からの評価は異なると考えられることから,今後は,当該組織に属する人々の自組織に対する信頼と当該組織には関与していない人々からの信頼との比較,およびそれらの信頼の構成要素と構造の差異について検討を行う。
概要 (英文)
In Recent years, scandals frequently occurred in public and private organizations have seriously ruined the public trust. Losing the public trust has a severe impact on the survival of the organization and, in some cases, can even result in a bankruptcy. This report aims at deriving out factors which influence public trust in private and public institutes.
An internet survey was conducted in October 2008, where 3,711 respondents from monitors of a survey company participated. In the survey, each respondent required to evaluate the activities assigned to enhance the trust in five business types: the civil services, the press and communications, the electric power utilities, the automobile manufacturers, and the food producers. The results from our survey asserted that respondents put the most trustworthiness on the automobile manufacturers, followed by the electric power utilities as well as the press and communications. The food producers gain the least trustworthiness. According to the statistical analysis, the common factors among five businesses that are considered having the most impact on their evaluation are revealed to be (1)performance, (2)compliance with laws and regulations, and (3)disclosure. Here, "performance" implying the ability of corporations to accomplish a high quality assurance conforms to the "intentions" and "competence" shown by the studies on interpersonal trust. Although "compliance" seems to be a fundamental obligation for every corporation, a perception on compliance level has a strong correlation with the trust in the corporation. Our finding provides indispensable knowledge that will be beneficial for those organizations striving to retain or to recover the public trust.
報告書年度
2008
発行年月
2009/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
小杉 素子 |
社会経済研究所 地域研究領域 |
共 |
長谷川 尚子 |
社会経済研究所 ヒューマンファクター研究センター |
キーワード
和文 | 英文 |
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対人的信頼 | Interpersonal Trust |
組織への信頼 | Trust in Organizations |
意図と能力 | Intensions and Competence |
企業の社会的責任 | Corporate Social Responsibility |
インターネット調査 | Internet Survey |