電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y08032
タイトル(和文)
バイオ燃料としてのジャトロファ油のポテンシャル評価-インドネシア・ロンボク島でのケーススタディ-
タイトル(英文)
Evaluation of Potential of Jatropha Oil for Biofuel - A Case Study in Lombok Island, Indonesia -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
落葉広葉樹であるジャトロファは、種子に高い密度で油分が含まれていることから、軽油代替のバイオ燃料として我が国でも関心が高まっている。2015年の栽培面積は現在の約10倍に拡大すると予測されているが,本格的な栽培は始まったばかりで,バイオ燃料用としての利点・課題及び栽培面積や生産量,経済性等については十分に検討されていない。
ジャトロファのバイオ燃料用としてのポテンシャルを明らかにすることを目的として、ジャトロファ生産及びバイオ燃料需要の動向を把握するとともに、当所開発の地理情報システム(GIS)を活用したポテンシャル評価手法を,インドネシア・ロンボク島でのケーススタディに適用し、栽培面積・生産量及び経済性の評価を行う。
ジャトロファ油のバイオ燃料としてのポテンシャルについて, 以下の点を明らかにした。
(1) 生産及び需要の利点・課題
文献・資料調査、現地実態調査、専門家のヒアリング調査等をもとに、生産及び需要の観点からバイオ燃料としての利点・課題を考察した。
ジャトロファは乾燥や塩害に強く,土地の荒れた非耕作地でも栽培できる利点がある。そのため生産者側の途上国では,ジャトロファ栽培が農民所得向上に寄与する可能性が高いとして,品種改良などの研究開発や海外投資が積極的に行われている。しかし,いまだに大規模で効率的な生産方法が確立していない,灌漑設備や肥料が十分でないと油の生産性が低くなる等の課題が多いことがわかった。
一方,需要側の先進国ではバイオ燃料転換による食糧高騰を背景に、食糧生産と競合しないバイオ燃料へのニーズが高まっており,油分に毒性があり,これまで栽培されてこなかったジャトロファ油は,バイオ燃料として有力な候補となっている。
(2) 栽培面積・生産量及び経済性のケーススタディ
乾燥した地域が多いことで知られるロンボク島をケーススタディとして,①荒地等の非耕作地のみを対象とする新規プランテーション型,②キャッサバ等の既存プランテーション地域のみを対象とした作物転換型,さらに③農家所有耕作地の一部(耕作面積の10%)でジャトロファ栽培する契約農家型及び,それらの組み合わせによる6つのシナリオを想定し,ジャトロファ油の生産量と経済性の評価を行い,以下の点を明らかにした。
環境影響・食糧競合が最も小さいシナリオ①でのジャトロファ栽培可能面積は約1.1万ha,BDF生産量は年間2.2万kl,全てを組み合わせたシナリオ⑥では面積が約7.4万ha,BDF生産量が年間4.4万klとなった。但し,食糧生産を優先すべきとの指摘が生じる可能性が高い灌漑地域の占める割合がどのシナリオも高く,それら地域を除くと面積,BDF生産量ともに半減する。一方,BDF油の生産コストは1リットル当たり0.56~0.88 US$となり、IRRの分析結果から,経済性を確保(IRR値:10~15%以上)するためには高い価格での販売が必要となる。
上記(1)より,生産及び需要の観点のみでみれば,バイオ燃料としてのポテンシャルは大きいといえる。しかしながら,(2)からバイオ燃料として利用する場合には,生産量の十分な確保及びBDF製造コストの低減が大きな課題といえる。地球温暖化対策等の環境・社会面を反映した政策的支援がなければ,ジャトロファ油のバイオ燃料としてのポテンシャルは大きくないことが示された。
概要 (英文)
This study aims at the evaluation of potential of cultivable plantation at the Jatropha oil for biofuel, we utilizes the geographic information system (GIS) developed by CRIEPI to examine the growing trend toward biofuel demand and Jatropha supply, the potential evaluation method is then applied to the Lombok Island in Indonesia as the subject of a case study. The assessment is performed with respect to the cultivable area, the productivity and the economic feasibility aspects.
The results on literatures surveys and field examinations reveal that Jatropha has the merit in its strong resistance to drought and soil salinity. Jatropha cultivation can also be used as a political measure to help enhancing the income level of agriculture sector in developing countries. The productivity, however, will drastically decline if irrigation and fertilization systems are not well established and maneged. Also to the for demand side, Jatropha oil is regarded as a strong candidate for biofuel owing to the contribution toward the needs to minimize the environment burdens and the ability to avoid competing with other foods production.
Depending on the degree of competing with other foods production and environmental concern, the cultivable area and the production level of Jatropha could vastly be different under various plantation scenarios. Production cost also varies from 0.56 to 0.88 USD per liter. The IRR analysis hence requires a high selling price to achieve the economic feasibility.
Considering only the demand and supply aspects, Jatropha oil seems to have a high potential for being used as biofuel. However, our case study proves the necessity of irrigation facilities to secure a sufficient production level. The production cost reduction is also the important task to challenge. We could say from this study that the potential of Jatropha oil for biofuel is not high enough without the active political supports.
報告書年度
2008
発行年月
2009/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
井内 正直 |
社会経済研究所 地域研究領域 |
共 |
栗原 雅博 |
社会経済研究所 地域研究領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
バイオマス | Biomass |
ジャトロファ油 | Jatropha Oil |
バイオ燃料 | Biofuel |
バイオディーゼル燃料 | Bio Diesel Fuel |
インドネシア | Indonesia |