電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y08006
タイトル(和文)
都道府県別社会資本ストックデータ(1980-2004)の開発
タイトル(英文)
Development of Social Overhead Capital Data by Prefecture in Japan: 1980-2004
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
当所では, 社会資本ストックが地域経済に与える影響を定量的に明らかにすることを目的とし, 都道府県別社会資本ストックデータの更新作業を定期的に行ってきた. このデータは, 大学や電力会社等でも幅広く利用されており, 今後も継続的な推計と公表が必要である. しかし, データの推計に必要となる『公共工事着工統計年度報』(国土交通省)が平成11年度をもって刊行が中止となり, 推計のための基礎情報が入手できなくなった.
そこで, 今回は基礎統計の見直しも含め作成方法の大幅な見直しを行った. 見直しの第一点目は, 『公共工事着工統計年度報』に代わる資料として『建設総合統計年度報』(国土交通省)を用いたデータ推計を実施した点である. これは, これまで利用していた基礎統計が利用できなくなったことによるものである. 二点目は投資目的の変更である. 『建設総合統計年度報』を用いて新しくデータ推計を実施するにあたり, 投資目的の分類をこれまでの12分類から11分類へと変更した. 三点目は平均耐用年数の変更である. 目的別の全ての資産について, 開発当初は25年, その後30年と, 等しい平均耐用年数を適用していたが, 現実的には目的別に平均耐用年数が異なることから, それぞれの目的に見合った平均耐用年数を利用することとした. 最後は, 三公社(日本国有鉄道, 日本電信電話公社, 日本専売公社)の取扱いを変更した点である, これまでは三公社がかつて所有していた資本ストックは社会資本ストック, 民営化後は民間資本ストックととしていたが, 民営化前後でデータを整合的に扱うことができるよう, 別掲した. さらに, 社会資本のヴィンテージ, つまりある時点における社会資本ストックの平均経過年齢を取り上げて, 社会資本の老朽化に関して議論を行った.
まず, 目的別社会資本ストックの推移を見ると, 1980年代以降伸び率は低下傾向にあるが, 「鉄道軌道」, 「道路(公団等)」では2000年代において相対的に高い伸び率を示している. また, 全資産ベースでは前回推計とそれほど大きな違いは生じていない一方, 資産ごとに見ると「道路」では社会資本ストックの伸び率が前回推計よりも上昇している. これは平均耐用年数の変更が資本ストックの蓄積速度に影響を与えているためである.
次に地域別社会資本ストックを比較してみると, 首都圏や関西といった人口の多い地域に社会資本ストックが多く存在している一方, 伸び率はそれ以外の地域で相対的に高く, 社会資本ストック賦存量の平準化が進んでおり, この傾向は前回推計と同様である. また, 都道府県別でみた一人あたり社会資本ストックと人口の分布には逆相関(スピアマンの順位相関係数は-0.68)の関係があり, 人口の多い都道府県では, 一人あたり社会資本ストックが小さい.
さらに、内閣府により作成されている社会資本ストックデータと比較可能な資産(農林漁業施設, 道路, 港湾・空港, 上水道, 治山・治水施設)について, 当所のデータと比較すると, 前回推計ではすべて過小推定となっており, 特に「上水道」において40.2%と過小推定となっていたのに対して,今回推計では最大でも「道路」の10.1%と乖離率が縮小しており, 以前よりも内閣府データに対して整合性を高めている.
最後に, 社会資本ストックのヴィンテージを推計した. 1980年代半ば以降, 地域間のヴィンテージの差は縮小したが, 1990年代半ばより, その差が拡大している. また, 2004年時点では首都圏地域でヴィンテージの値が最大となっている. これらの点は, バブル崩壊後の不況期に公共事業が景気対策として地方に偏在したため, 地域間の差が拡大し首都圏でその値が最大となったと考えられる, また, 前回推計と比較すると, ほぼ同様の結果であるが, 首都圏でのヴィンテージの上昇がやや際立っている。これは前回推計において含まれていた国鉄など公社の資本ストックや, 利用したデータ自身の特徴(契約ベースと出来高ベース)による影響と考えられる.
今後は, 社会資本ストックのヴィンテージの上昇が社会資本ストックの質的水準の低下を通じて, 特定の産業や都道府県の生産性を低下させている可能性があり, この点を実証的に分析したい. また, 社会資本ストックのヴィンテージデータはその年齢を表しているため, 将来的に大地震が生じた際の社会資本ストックの損壊状況を予測する際にも利用が可能である.
概要 (英文)
CRIEPI has provided a social overhead capital database since 1985, and it has used by many researchers in universities and research institutes. The estimation process utilized to develop the database had depended on "Koukyou Kouji Chakkou Toukei Nendohou", Statistical Yearbook on Public Works, by Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism (MILT). However, the cessation of the statistical survey by the ministry made it difficult for us to estimate and supply CRIEPI social overhead capital database.
The objective of this report is twofold: (1) to provide substitutable estimation method utilizing another data source, and (2) to improve the estimation regarding the average service life by the asset type. Our traditional estimation technique assumed 30 years average life for all asset types. We thought applying different and appropriate service life by the asset type was more plausible, and we needed to improve the estimation technique.
As a substitute for the statistics we had used before, we can use "Kensetsu Sougou Toukei Nendohou", Statistical Yearbook on General Construction, by MILT for distributing national stock to prefectures. Employing this statistics, and applying different service life by asset, e.g. 49 years for the road asset, 17 years for the park and sewer, we estimated the social overhead capital in each prefecture from 1980 to 2004.
Although we changed the data source and estimation method, estimated series shows almost the same growth rate as previously estimated one at the aggregated stock. However, the growth rate of stock by the asset type remarkably different from the previous series. The growth rate of national road infrastructure during 1980 to 2004 has been 4.5% per year in the previous series, but 5.4% in our new results due to the change in the average service life.
報告書年度
2008
発行年月
2009/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
浜潟 純大 |
社会経済研究所 地域研究領域 |
共 |
人見 和美 |
社会経済研究所 地域研究領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
社会資本ストック | Social Overhead Capital |
平均耐用年数 | Average Service Life |
ヴィンテージ | Vintage |
老朽化 | Aging |
都道府県 | Prefecture |