電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y07037
タイトル(和文)
中国の将来シナリオを規定するドライバー・アクターの分析と省エネの行方からみたシナリオの構築
タイトル(英文)
An analysis of scenario driver and actors of the future of China and a scenario assembly focusing on energy conservation
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
中国の将来については、2000年以降の急激な変化を目の当りにして、専門家のなかにも楽観論と悲観論が混在しており、日本のエネルギー・環境政策を論じるうえで、大きな不確実性要因となっている。本稿では、省エネを重要な国家的課題のひとつに位置付けたばかりの中国について、この省エネに視点を定めたシナリオの構造化(基本枠組みの作成)を行い、中国の将来に関する不確実性とそれへの対処方策についての一貫した論理を構築する。
専門家ワークショップでの議論をもとに、シナリオの構造となる基本枠組み(フレームワーク)として、シナリオドライバー、アクター、トリガーを整理し、その構造分析を行った。シナリオドライバ(シナリオの分岐を決定付ける要因)は、「中央政府の省エネへの政治的意思を、持続的に支え強めていく内生的な社会変化は起こるか否か。」である。ドライバを動かすアクターとしては、「中央政府」、「民意」、「一人っ子」を抽出した。
次に、アクターがどのような動機を持っているかを整理した。「中央政府」の動機はエネルギーセキュリティ確保、産業再編、「民意」の懐柔である。「民意」の動機は、生活の向上、地域環境問題の解決と社会の安定である。「一人っ子」の動機は社会問題への関心、豊かな消費生活である。さらに、アクターがどのような働き方をするかを整理した。特に、「中央政府」と「民意」は、共に社会の不安定化を怖れ、その間には陳情と懐柔によるやり取りが存在すること、「一人っ子」は、ばらばらのままの「民意」をまとめ、情報発信する役割を期待されていくこと、に着目した。最後に、アクターの働き方や関係性を変質させ、シナリオドライバがシナリオを駆動する方向を変える要因(トリガー)として、マクロ経済危機を想定した。
以上のシナリオの基本枠組みを用いて作成した2つのシナリオを、アクターの働き方から以下に整理する。
1)「公式の未来」:地域環境問題の解決を陳情する「民意」、問題を省エネに引き付けて見せる「中央政府」、環境意識を高める「一人っ子」によって省エネへの強い政治的な意思が形成され(内生的な社会変化が起き)、ビジネスも動き出し省エネ目標が達成される。
2)「未富先老の中国」:マクロ経済危機のトリガーが引かれる。「民意」は経済を優先し、環境問題で見られる「中央政府」との協働は困難になる。「中央政府」は「民意」を恐れ弾圧する。「一人っ子」は、現実逃避し民意を代表できない。高齢化の中で高成長は終焉し、省エネ目標を達成する内生的社会変化は起こらない。
以上のシナリオ研究から、中国国内に内在する不確実性から発する将来像の幅は大きく、未富先老シナリオで予想される、深刻な環境影響にも備えることのできる対応策の検討の重要性を指摘することができる。今後は、シナリオの基本枠組みを用いたドライバ、トリガーの定点観測から、他の検討方法では求め得ない早期のタイミングで、中国の社会変化のシグナルを捉えていきたい。
概要 (英文)
When we try to formulate energy and environmental policies of Japan or globally, China is one of the most influential factors bearing a number of significant uncertainties toward the future. In order to cope with the uncertainties in a systematic manner, we employed scenario planning methodologies to explore different sets of scenarios focusing on to what degree and how energy conservation will evolve in China.
The framework of our scenarios consists of scenario driver, trigger and scenario actors as the followings. A scenario driver is the most uncertain and important factor which determines the direction of scenarios, which is identified in our scenarios as "whether the intrinsic changes of Chinese society to lead itself to the enrgy saving one will occur or not". Main actors of scenario are chosen as "central govrnment", "people's voice" and "only-children". A trigger which derails China from the track of official scenario and anchors to an alternative path is set as "a macro economic crisis". Through interviews and workshops, we extracted and elaborated the following two sets of scenario stories.
(1) Official Future Scenario 'China as the Energy Saving Giant': Under consistent government guidance and people's support, the country grows while realizing an energy saving society as is compatible to the Chinese official biew.
(2) Anchpor Scenario 'China as a Get-Old-before-Getting-Rich': After the economic growth peeks out around 2010, endogenous social changes to lead to the Official Future Scenario never materialize.
The huge gap observed between the two scenarios suggests strong needs for countermesures prepared well in advance, particularly against serious environmental implications anticipated in the Anchor Scenario.
報告書年度
2007
発行年月
2008/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
星野 優子 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
角和 昌浩 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
協 |
杉山 大志 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
協 |
上野 貴弘 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
協 |
谷口 武俊 |
社会経済研究所 |
協 |
今中 健雄 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
シナリオプランニング | Scenario Planning |
中国 | China |
省エネ | Energy Conservation |
人口高齢化 | Aging Population |
アクター | Actor |