電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y07035

タイトル(和文)

47都道府県多地域産業連関表の開発 -内部・外部乗数による都道府県間生産誘発構造の分析-

タイトル(英文)

Development of Multi-regional Input Output Table for 47 Prefectures in Japan

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

電力中央研究所では,全国を電力会社が立地する10の地域に分割した「10地域間産業連関表」を過去2回開発し,公表してきた.しかし,複数の県を集計して取り扱う地域間表では,例えば特定県での大規模工場立地の地域内各県への生産波及を知り,電力需要を推計する等の分析を行うことができない.こうした分析を行うためには,47都道府県間を接続した産業連関表の開発が必要である.そこで,公表されている2000年の各都道府県・地域内産業連関表を基礎統計とし,社会資本減耗引当の取り扱いなど各県で不一致の作表概念について調整を行った上で,都道府県間の取引を農業から製造業に属する各部門に対しては「地域間貨物流動調査」(国土交通省)を用いて,その他の部門については重力モデルを用いて推計し,国内各県を48部門分類で結節する47都道府県・多地域産業連関表を開発した.
開発した表は,各県固有の取引構造を反映した生産波及の経路を追跡することが可能であり,電力供給地域内各県への工場立地の波及効果分析等に利用することが可能である.また同表は,都道府県を単位とする空間一般均衡モデルの開発や,地域多部門計量経済モデルの基礎資料として必要不可欠であり,さらに地震による経済的被害の県間波及の分析など,利用用途は広い.また,開発した表を用いて都道府県間の生産誘発に関する基礎的な分析を行った結果,以下の点が明らかとなった。
(1)各県で最終需要100億円の増加を想定すると,特定県の需要増加は当該県のみならず,他県にも波及する.反対に特定県の誘発生産は当該県のみならず,全国他県の需要増加にも依存する.こうした構造を前提に各県の需要増が誘発する生産額と,各県において誘発される生産額をみたとき,特定県の最終需要増加が全国各県の生産を誘発する効果については地域差がほとんどなく,最大の愛知(184億円)と最小の新潟(166億円)の間でほぼ1.1倍の相対比にとどまる.一方,全国各県の最終需要増加により誘発される特定県の生産額については地域差が大きく,最大の東京(645億円)と最小の徳島(112億円)の間では5倍以上の開きがある.
(2)生産誘発は自県内の取引はもとより,他県との取引によっても引き起こされる.そこで自県内取引による誘発を内部乗数,他県との取引による誘発を外部乗数と区分し,各県の生産誘発構造を分析した.外部乗数で県間平均を上回る県は,東京,愛知,大阪をはじめとする12県にすぎない.一方,内部乗数が平均を上回る県は北海道,香川,鹿児島など24県ある.したがって,平均を上回る県と下回る県の比では,外部乗数では12:35,内部乗数では24:23となり,内部乗数の大小は県間でほぼ2分されるのに対して,外部乗数では,各県の移入が少数かつ特定県に集中していることが明らかである.
(3)各県の内部・外部乗数の大きさと誘発される生産額の関係を分析すると,外部乗数と誘発される生産額は正比例の関係にあり,外部乗数の変動は誘発される生産額の99%以上を説明するのに対して,内部乗数は正比例関係にあるものの,39%しか説明できない.従来,地域政策として他県への需要の漏れを防ぐための自給率の向上(=内部乗数の上昇)が提案される場合が多い.しかし,われわれの得た結果は,内部乗数の向上よりは外部乗数の向上(=移出の活発化)の方が政策としてより重要であることを示している.

概要 (英文)

Since 1999, CREIPI has developed and published two Interregional Input-Output tables for the year 1990 and 1995. The regional division of these tables is based on the electric power supply regions. These tables can be used to analyze changes in regional economies in a consistent way, so that several electric power companies utilized these tables to estimate the electricity demand induced by the changes in sectoral outputs within their regions. However, the regional partition of these tables is an aggregate of some prefectures. Accordingly, the users cannot identify the difference in output propagation effect induced by, for example, large scale factory location choice among different prefectures within a region. In order to analyze these effects more accurately, we need the table with more precise regional partition.

Every prefecture has published its own Intraregional Input-Output table without the inter-connection to other prefectures. Ministry of Economy, Trade and Industry (METI) has also published the 9-Region Multi-regional Input-Output table in 2000(METI-MRIO). We estimate sectoral and inter-prefectural transaction using the commodity transfer statistics published by Ministry of Land, Infrastructure and Transportation (MLIT) and the estimated gravity model based on METI-MRIO. We then connect each prefecture's Input-Output table together with the adjustment using the previously estimated inter-prefectural transaction data and finally obtain a coherent 47-Prefecture Multi-regional Input-Output table.

Compilation of our table reveals the following characteristics of the prefectural economies. First, the prefectural output multipliers representing the induced output per unit increase in the final demand are varied from 1.1 in Tokushima to 6.5 in Tokyo. Second, the reason underlying this variation is the difference in the feedback through the inter-prefectural transaction, not the intra-prefectural transaction. Third, Tokyo, Osaka and Aichi are prefectures with the highest level of inter-prefectural feedback. However, inter-prefectural trade patterns of Tokyo and Aichi are spreading throughout Japan, while trade pattern of Osaka is relatively limited within a Kansai and Sanin (Tottori and Shimane) areas. These findings cannot be obtained from the published table of METI or from the previous version of CREIPI tables.

報告書年度

2007

発行年月

2008/06

報告者

担当氏名所属

人見 和美

社会経済研究所 地域研究領域

B.Pongsun

社会経済研究所 地域研究領域

キーワード

和文英文
多地域産業連関表 Multiregional Input Output Table
地域経済 Regional Economy
地域間分析 Interregional Analysis
産業構造 Regional Industrial Structure
内部乗数・外部乗数 Internal and External Multipliers
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry