電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y07020
タイトル(和文)
米国小売電力市場の「排除型」行為に対する反トラスト法による規制 -連邦レベルの裁判例の検討と日本への示唆-
タイトル(英文)
The Control of Exclusionary Conducts under Antitrust Law in the U.S. Retail Electricity Markets and the Implication to Japanese Law
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
小売電力市場では,電力会社とPPSの競争や,電力対ガスのエネルギー間競争が激しくなっている。事業者はその「排除型」行為が独占禁止法上どのように評価されるかに十分注意する必要がある。また,公正取引委員会がエネルギー市場への監視を強めている。
本報告では,日本の独占禁止法の母法である米国連邦反トラスト法において,電気事業者の小売市場での「排除型」行為が争われた裁判例を整理・分析し,日米の比較検討を行った。
主な成果は以下の通り。
1. 米国の電気事業者が関係した反トラスト法の裁判例(11件)を,(1)取引拒絶,(2)不当廉売など7つの行為類型に分類した。そして裁判例の分析・検討を通じて,行為類型ごとの裁判所の判断枠組や,どの類型を政府が問題視しているか,などを明らかにした。
2. 行為類型ごとに日本法との比較検討を行った。主な結果は次の通り。
【取引拒絶】米国では,送電線オープン・アクセス規制が導入される以前に,託送拒絶が不当な取引拒絶として反トラスト法違反とされた事例がある(Otter Tail事件)。同規制が導入された現在では,託送拒絶は反トラスト法ではなく専ら事業法の問題として処理されると予想される。
他方日本では,託送拒絶について「電力適正ガイドライン」は,託送手続の不当な遅延など「実質的に託送を拒否していると認められる行為」については,不公正な取引方法(「取引拒絶」)として独占禁止法違反となるとしている。しかし託送拒絶に対しては電気事業法も経済産業大臣の託送供給を命令を定めている。したがって,託送拒絶についてはこれら二つの法律が二重に規制する状態にある。
【拘束条件付取引】米国の裁判例では,ヒートポンプ導入促進のための,全電化を条件とした電気事業者による電気料金の割引行為や,住宅建設業者に対する金銭的援助が,反トラスト法に違反し得るとされた(Yeager’s Fuel事件)。
日本でも,オール電化等を条件とした金銭等の利益供与は,独占禁止法の禁止する不公正な取引方法(「不当な利益による顧客誘引」等)となる。さらに,料金規制の存在する需要家対する利益供与は,電気事業法の供給約款の遵守義務違反となり得る。
概要 (英文)
The competitions between a) the incumbent power utilities and the new entrants (PPS) and b) between power suppliers and gas suppliers, i.e. interenergy competition, have recently been quite fierce. The Japan Fair Trade Commission (JFTC) declares that it keeps a strict eye on the energy markets. Power suppliers will be exposed to a greater risk of lawsuits under the Antimonopoly Act. We surveyed the U.S. court cases where power suppliers' exclusionary acts were alleged to be violative of antitrust laws. Major findings include;
i) As to the United States, power suppliers are easily found in antitrust lawsuits to have market power due to its legal monopoly or the market structures and conditions. The acts of power suppliers alleged there include tying arrangements, refusals to deal, predatory pricing, etc. Predatory pricing claims were invoked by power suppliers' competitor. The U.S. Government only sues power suppliers' acts which are clearly anticompetitive.
ii) As to Japan, the Proper Electricity Trade Guidelines published by the JFTC and the Ministry of Economy, Trade and Industry provides that even in the presence of sector-law duty to wheal, refusals to wheal competitor's electricity can violate the Antimonopoly Act, which is contrary to the US antitrust case law.
報告書年度
2007
発行年月
2008/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
佐藤 佳邦 |
社会経済研究所 事業経営・電力政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
米国反トラスト法 | U.S. antitrust law |
排除行為 | Exclusionary conducts |
小売電力市場 | Retail electricity market |
エネルギー間競争 | Interenergy competition |
独占禁止法 | The Antimonopoly Act |