電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y07009
タイトル(和文)
ガスタービン開発における国プロの役割-「高効率ガスタービンプロジェクト」についての事例分析-
タイトル(英文)
Revisiting the Advanced Gas Turbine Project - Retrospective evaluation of its impacts on gas turbine development in Japan -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
省エネルギー技術開発の促進に向け、効果的な技術政策の検討が求められる。このためには、過去の事例分析に基づいて技術政策が持ちうる効果とそのメカニズムを理解する必要がある。そこで本研究では、1978年~1987年度に実施された国家プロジェクト「高効率ガスタービンプロジェクト」(総予算約270億円)を事例として、日本の発電用ガスタービン技術開発の進展に対して国プロが果たした役割を明らかにすることを目的とした。
本研究では、国プロに従事しその後の各社ガスタービン事業を担ったメーカー技術者へのインタビュー調査、ならびに文献調査によって、以下を明らかにした。
1) 発電用ガスタービンの技術開発と国内メーカーの成長を促進した主な要因としては、海外メーカーからの技術導入、ライセンス生産と自社研究開発を通じた自主技術形成、電力会社による国産技術支援などさまざまなものがあり、国プロはその一つとして寄与した。
2) 国プロは、ガスタービンの高温化・高効率化を進める上で必須の要素技術を開発するための技術基盤をつくった。具体的には、リターンフロー冷却やセラミック遮熱コーティング、一方向凝固金属などである。これら国プロで開発された要素技術は、そのまま実用化されたわけではないが、各社が1980年代後半以降にガスタービンの高温化を進める際に、国プロの開発経験・製造経験が大いに活用された。例えば、三菱重工のF型と呼ばれる1300℃級大容量ガスタービン、日立のH25と呼ばれる1300℃級中型ガスタービン、川崎重工のM7Aと呼ばれるコジェネレーション用ガスタービンなどは、全て国プロでの開発経験をベースとして開発されたものである。
3) 参加企業による国プロの成果や経験の活用形態は、各社の市場でのポジションや事業戦略によりさまざまである。例えば、三菱重工は大型ガスタービン分野でGEら海外メーカーと対抗できる機種開発を進める際に、国プロでの経験を活用した。日立は、大型ガスタービン分野ではGE技術に基づいた事業を進めているが、中型ガスタービン分野では自主技術による高性能機を開発する際に国プロを活用した。また、小型ガスタービン市場で高いシェアを持っていた川崎重工は、1980年代後半からコジェネレーション市場へと事業展開する際に、ガスタービン大型化に必要な技術開発を進める上で国プロでの経験を活用した。
4) インタビュー調査に基づくと、各社の当時のガスタービン開発の方向性は、国プロでの開発の方向性とほぼ一致しており、仮に国プロがなかったとしても同様の開発はある程度実現されていたと推測される。このように自社開発と国プロを切り離せないため、「国プロの寄与率」を定量化することは困難である。
5) ここで国プロが果たした役割は、国プロとして設定したことによる予算増額や開発従事者の増員によって、国プロがなくてもなされていたであろう技術開発を加速させた点にある。
6) 国際競争の激しい分野においては、開発のスピードが競争優位性に大きな影響を与えることから、このような国プロによる技術開発の加速効果には重大な意義があったといえる。
以上より、国プロの効果を評価する際には、直接的な実用化の成否のみを評価対象とするのではなく、国プロの成果や経験を活用した各社の製品開発や事業展開までをスコープに入れることが重要であるとの政策的含意を得た。
概要 (英文)
This paper analyzes a public R&D project called "Advanced Gas Turbine Project" in Japan in order to draw insights for future public policy-making in energy technology innovation. The project was conducted from 1978 to 1987 by the Japanese government, joined by major national laboratories and gas turbine producers, aiming at developing an advanced type of gas turbine with the highest efficiency. While the targeted technology itself (i.e. reheat cycle gas turbine) was not commercialized, the project formed critical technological basis for Japanese gas turbine producers to catch up with Western competitors, such as GE and Westinghouse. Some generic technologies, such as return-flow cooling technique, thermal barrier coating, and directional solidification turbine, which are indispensable in increasing gas turbine temperature and thermal efficiency, were developed in the project, and the knowledge and experience gained in the project made a critical contribution for producers to develop their subsequent gas turbine products in the 1980's and 90's. For example, "F" class gas turbine for utilities by Mitsubishi Heavy Industry Co., middle class gas turbines called "H-25" by Hitachi Co. and "M7A" by Kawasaki Heavy Industry Co., were all based on the experience gained by the project. While the technologies would have been developed even without the project, it can be concluded that the project accelerated technology development and thus helped Japanese producers increasing their competitiveness in the world gas turbine market.
報告書年度
2007
発行年月
2008/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
木村 宰 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
加治木 紳哉 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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ガスタービン | Gas turbine |
技術開発 | Technology development |
技術政策 | Technology policy |
研究開発プロジェクト | R&D project |
事例分析 | Qualitative case study |