電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y06024
タイトル(和文)
年次マクロ経済=産業連関接続モデル2006の開発
タイトル(英文)
Development of Macroeconometric=Input-Output Link Model 2006
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
当所では、日本経済の中期展望用の中期予測システムの一環として、1990年代半ばに年次マクロ経済モデルと産業連関モデルを開発した。それ以来およそ10年経ち、長期不況を脱した日本経済の構造は変貌を遂げている。また、モデル構築に不可欠の国民経済計算データ(SNA統計)が抜本改訂された。このような状況のなかで、日本経済の中期経済・産業展望および各種シミュレーション分析に利用するため、最新のデータを用いて、「年次マクロ経済モデル」および同モデルに直接リンクできるSNAベースの「産業連関モデル」を開発した。
マクロモデルについては、SNA93統計(連鎖価格)を用いて、1980~2005年(最長)を推定期間とする年次マクロ経済モデルを開発した。同モデルの予測誤差(1995~2004年の9年間)は、実質GDPでは1.77%、消費者物価では0.52%など、従来のモデルと比べて遜色のない誤差に収まっており、開発した年次マクロ経済モデルは中期経済予測に利用可能である。このモデルを使って、2001~2005年の5年間、外生変数を一定額もしくは一定率だけ継続的に変化させた場合のシミュレーション(サステインド・チェンジ・シミュレーション)を、公共投資削減、政府消費削減(行政改革進行)、家計所得税減税、法人税減税、消費税率引き上げ、政策金利引き上げ、原油価格上昇、円高進行の8ケースについて行った結果、モデルの安定的な挙動が確認できた。主な結果としては、公共投資1兆円削減ケースでは、公共投資1兆円(対名目GDP比0.19%)削減により、実質GDPは1年目0.26%、2年目0.39%、販売電力量は同じく0.10%、0.22%減少する。名目公共投資乗数(公共投資追加額に対する名目GDP増加額の比率)は、経年的に1.5~3.0程度に収まっており、安定的である。為替レートは、国内需要の増加により経常収支が減少するため0.02~0.03%円安になる。税収はGDPの動きを反映して減少するが、公共投資の支出の方が大きいため、貯蓄投資差額(財政収支)は改善する、などの結果が得られた。また、原油価格が10%上昇するケースでは、国内物価上昇に伴う実質所得減少を引き起こし、内需が低下することを主因に、実質GDPは1年目0.08%、2年目0.20%低下する。販売電力量は同じく0.06%、0.15%減少する。為替レートは経常収支黒字の減少により小幅円安となる。財政収支は悪化する、などの結果が得られた。
上記の8ケースについて、年次マクロ経済モデルに直接リンクしたSNA産業連関モデルを使って、産業別生産額の感度分析を行った。その結果、公共投資削減の影響は建築・土木に集中的に現れ、円高は製造業を中心に影響が及ぶ。産業への影響のばらつきを比較すると、8ケースの中では、円高および公共投資削減のケースでは特定の産業に影響が集中する半面、政府消費削減および消費税率引き上げのケースでは影響の産業間のばらつきが小さいこと、などが判明した。
本モデルを用いて、日本経済の中期経済・産業展望を実施し、各シナリオに応じた成長・財政・産業構造の姿を分析・評価する。
概要 (英文)
This report shows the outline and several simulation results of the newly structured 93SNA-based annual Japanese econometric model and the SNA-based Input-Output model of 46 sectors. Both models are main components of the CRIEPI medium-term forecasting system and are operated for historical analysis and forecasts. The theoretical background of the macro model is demand-oriented Keynesian type using 93SNA data based on chain-linking method. And the IO model can be operated not only independently but also co-operatively with the macro model.
Some of the simulation results etc. are as follows:
(i) In the case of one trillion yen decrease of public fixed investment, real GDP decreases by 0.26% in the first year and by 0.39% in the second, mainly from the decrease of the production of construction and material industries. Fiscal multipliers are 1.5 for the first year, 2.5 for the second in Japan.
(ii) In the case of 10% import CIF oil price surge, real GDP decreases by 0.08% in the first year and by 0.20% in the second, mainly from the decrease of domestic demand because of a decrease of the real income under a surge of domestic prices.
(iii) In the case of 10% appreciation of the yen/$, real GDP decreases by 0.31% in the first year and by 0.57% in the second, mainly from the decrease of net export.
(iv) We can calculate 46-sectoral effects on real products in each simulation cases by the new IO model. Among eight simulation cases, unevenness of effects among industries is the largest in the case of exchange rate change, and the next, in the case of changing public fixed investments.
報告書年度
2006
発行年月
2007/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
服部 恒明 |
電力中央研究所 |
共 |
門多 治 |
社会経済研究所 地域経済・エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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マクロ計量モデル | Macroeconometric Model |
シミュレーション分析 | Simulation Analysis |
産業連関モデル | Input-Output Model |