電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y06021
タイトル(和文)
エネルギー関連事業集中戦略の財務パフォーマンスに関する定量的検証
タイトル(英文)
A quantitative analysis of the effect of energy business concentration strategy taken by energy utilities
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
電力自由化が進展し、電力市場に競争が導入される中、従来規制下におかれてきた電気事業者は、競争に対応した新たなる事業戦略を構築していく必要がある。実際に、自由化が先行して行われた欧米諸国の事業者は、市場で勝ち残るために様々な戦略を試み、成功事例、失敗事例を積み重ねている。これらの知見は、自由化市場において新たなる展開を模索するわが国の一般電気事業者にとっても貴重な情報となるであろう。
本稿では、エネルギー事業者の近年の事業戦略について、欧州の代表的事業者4社のケーススタディーを紹介するとともに、全般的な傾向について整理を行う。さらに、それらの事業戦略の効果について、定量的な分析を試みる。いくつかの事業戦略が分析対象の候補として挙げられる中、戦略導入の背景や入手できるデータを鑑み、特に本稿では、近年多くの事業者で採用されているエネルギー集中戦略に着目する。対象は、日本、米国、英国、ドイツ、フランスの5カ国の電力、ガスといったエネルギー関連事業者134社であり、それぞれの事業者の2005年度年次報告書等を基に、総売上高に占めるエネルギー関連事業(電気事業・ガス事業・その他エネルギー関連事業 )のシェアを集中度変数として算出した。エネルギー関連事業集中度が、収益性、安定性、効率性、市場パフォーマンスに、どのような影響を与えているかを、回帰分析を用いて検証を行った。
まず、欧州のエネルギー事業者、E.ON、RWE、Centrica、SUEZについて、主な事業戦略の概略と、近年動向について調査した結果より、これらの事業者の間では、共通してコアビジネスへの特化戦略が採用されていることが確認された。コアビジネスの定義は事業者によって異なるものの、特にエネルギー関連事業への集中が特徴的と言える。この4社の中では、E.ONがいち早くエネルギー集中戦略を採用したのに対し、RWEはユーティリティ事業から、徐々にエネルギー事業への特化に移り変わっていった。Centricaは手広い多角化を展開し、様々なサービスのクロス・セリングを試みたものの、最終的にはエネルギー関連事業への集中戦略に方針転換を行った。SUEZは、早い時期からコアビジネスへの特化を行っているものの、エネルギー関連事業よりも範囲の広い、ユーティリティ事業をコアビジネスとして定義している。
さらに、エネルギー関連事業への集中戦略と、様々な財務パフォーマンスとの関係について定量的な分析を行った結果、技術・コスト面の財務効率性に対して統計的に有意な影響があることがわかった。すなわち、エネルギー関連事業集中度が高いほど効率性が高いという結果である。これは電気事業、ガス事業、電気・ガスの兼業事業者といった形態に関わりなく、エネルギー関連事業への集中度が高ければ、同様に計測されている。エネルギー事業に特化したことで、人員やコストの削減余地が生じたり、シナジー効果が得られるなど、様々な効率性への影響が考えられるが、この結果はそれらを示唆するものと言えよう。
概要 (英文)
Liberalization of energy market is spreading out in many countries. In order to survive in the emerging competitive market, innovative management strategies are essential for energy utilities that have been regulated for a long period of time by competent authorities. In European countries and the U.S., a considerable number of energy companies recently employ a strategy for concentrating energy related business. This study investigates recent development of management strategy exemplified by the four major players in Europe, i.e., E.ON, RWE, Centrica and SUEZ, and further conducts the quantitative analysis of the effect of this strategy taken by representative companies from Japan, the U.S., the U.K., Germany and France.
The main findings of this study are as follows:
1. In the case study, all the four companies concentrate on their core business, especially energy related business. E.ON has employed this strategy since the late 1990s, and RWE and Centrica followed it recently. Although SUEZ still maintains a diversified business portfolio, it is limited within utility businesses, such as energy, water and waste businesses.
2. The quantitative analysis for 134 energy companies from the five countries reveals that those companies with the energy business concentration strategy show significant tendency for better technical and cost efficiency. This could stand as a statistical evidence of the synergy among businesses within the energy sector such as electricity, gas, and other energy related businesses.
報告書年度
2006
発行年月
2007/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
筒井 美樹 |
社会経済研究所 事業経営・電力政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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エネルギー関連事業 | Energy related business |
事業戦略 | Management Strategy |
エネルギー事業への集中 | Energy business Concentration |
財務パフォーマンス | Financial performance |