電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y06014

タイトル(和文)

ヒューマンエラー傾向測定手法作成の試み(その1) -調査票作成ならびにエラーと性格特性に関する検討-

タイトル(英文)

An approach to measure tendency of human error Part I:Preparation of questionnaire and consideration of relationship between human error and personality

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

昭和50年代と同レベルで多発する産業界での重大災害の背景には,人的要因がその7割を占めているとも言われている。産業界全般,もちろん電力業界においても,事故・災害発生防止のためには,ヒューマンエラーに対する積極的対策が必要とされている。最近では組織的な取り組みによりエラーをマネジメントしようという考え方が新たな視点として加えられたが,一方で実際に現場で働く個々の従業員に着目し,その個人の特性に合致したヒューマンエラー防止対策が求められていると考えられる。
本研究では,個々人がどのようなエラーを起こしやすいのかという,個人のヒューマンエラー傾向を計測する調査票の作成を試みた。さらに,ヒューマンエラー傾向の背後要因としての性格特性に着目し,個人特性に合致したヒューマンエラー防止対策立案に向けて,性格特性とヒューマンエラー傾向との関係を調査した。
調査票は,大きく分けて,エラーに関する設問群(69項目)と性格に関する設問群(111項目)の計180問で構成された。エラーに関する設問群については,先行研究を参考にし,人間の情報処理過程モデルを基に,その各プロセスで発生すると思われる日常的なエラーを選択した。また,性格に関する設問群については,最近性格を表現する上で主流とされているビッグファイブ・モデルを基に,その日本版である主要5因子性格検査のほか,先行研究より,エラーを起こしやすいとされている性格特性に関する質問項目を付け加えた。
電力関係の研究所で働く職員等に対し調査を行い,154名(うち有効回答数147)からの回答を得た。回答者の属性は,平均年齢40.1歳,男性96名,女性51名であった。
エラーに関する設問群については,回答に著しく偏りのある項目を除き,因子分析を行った。その結果,「忘却エラー」,「注意の偏りエラー」,「入力エラー」,「短絡的思考エラー」の4因子が抽出され,これらはそれぞれ人間の情報処理過程の,記憶,注意,知覚,判断に相当すると示唆された。
エラー因子別に素点合計点を算出し,同じく性格に関する設問群についても,先行研究に従い性格因子別の得点を算出し,エラー因子群と性格因子群で相関分析を行った。
相関分析の結果,外向性因子を除き,ほぼすべての性格因子群とエラー因子群との間で有意な相関が得られたが,特に各エラー因子群と相関の高い性格特性は,勤勉性(が低い),いい加減さ,軽率さであった。また,これら3つの性格特性に加え,情緒(不)安定性は注意の偏りエラーと,自制心のなさは入力エラーと,そして,疲れやすさは短絡的思考エラーと中程度(r=±0.4以上)の相関がみられた。
今後の展開としては,本調査結果で選出された35項目に行動段階で起こるエラーに関する項目を追加の上,調査票改訂版を作成し,調査票の信頼性・妥当性の検証を行う。また,サンプル数を増やし,エラーと性格特性との関係性についてより詳細な検討を行う。

概要 (英文)

In order to reduce human error accidents, it is important for workers to realize workers' own tendency of human error. Then the purposes of this study is to prepare a questionnaire to measure tendency of personal human errors. Also, this paper discusses about the relationship between human error and personality.
The questionnaire included the following two parts: typical daily human errors (69 items) and big five personality test with some error-prone personalities (111 items), and 96 men and 51 women responded the questionnaire. Factor analysis extracted the following 4 factors about human errors: forgetting, attentional bias, failure of information input and simplistic thinking. As the result of correlation analysis between errors and personality, almost all of personalities except for extroversion related to all of human error factors as above. Especially, conscientiousness, irresponsibility, and inconsiderateness had high correlation with these human error factors. Neuroticism was correlated with dysfunction of switch one's attention, also out-of self control was correlated with failure of information input, and easy fatigability was correlated with simplistic thinking moderately. In the future discussion, the revised questionnaire will be prepared by sorting out the items and the reliability and validity of the questionnaire will be examined.

報告書年度

2006

発行年月

2007/04

報告者

担当氏名所属

廣瀬 文子

社会経済研究所 ヒューマンファクター研究センター

キーワード

和文英文
ヒューマンエラー human error
情報処理過程 information processing
性格特性 personality
ビッグファイブ・モデル big five model
勤勉性 conscientiousness
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry