電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
N16010
タイトル(和文)
「送電設備の雪害に関する研究」10ヶ年研究成果(その1)-重着雪とギャロッピングの評価手法と対策-
タイトル(英文)
Report on 10 years research of snow damage of overhead transmission facilities (Part 1) - Development of practical measures on heavily accreted snow and galloping -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
2005年12月,新潟下越地方において,重着雪による鉄塔部材の損傷,ギャロッピング注1)による地絡,相間短絡,および塩雪害が発生した.これを機に,架空送電設備の雪害に対する電気事業全体の取組みとして,当所は10ヶ年(2007年7月~2017年3月)の研究期間を設定した.前半5カ年の第一期は,観測体制の構築と観測,雪害発生気象条件の解明,および各種対策品の比較検証を実施した[1].後半5ヶ年の第二期では,観測,分析の継続に加え,研究成果の実務への応用,反映が課題とされてきた.
目 的
雪害現地観測と雪害データ分析の継続により,雪害事象の解明と対策効果検証,予測解析精度向上を進め,送電実務において参照可能な成果を提示する.
主な成果
当所における10ヶ年の雪害研究の中,重着雪とギャロッピングの評価手法,および対策に関する検討によって得られた知見を以下に示す.
1. 着雪モデルおよび簡易発生軸力評価ツール
既提案の簡易的評価手法[1]に対し,入力降雪量の補正を導入するとともに,着雪密度式,および雪質に応じた着雪率の考え方を改良し,それらの効果を確認した.また,最大着雪量の極値統計解析手法を提示し,気象官署データを対象に適用例を示した.さらに,当手法を簡易発生軸力評価ツールに導入し,実用性を向上させた.
2.ギャロッピング評価法の開発
既往の半経験的評価手法「松林理論」注2)の検証を踏まえ,新たな実務的評価手法を示した.この手法は,着雪下の線路直交風速発生頻度を用い,線路走向別に設備耐用年数内のギャロッピング最大応答振幅や閃絡確率を推定することができ,松林理論では評価が難しい,平野部での主に湿型着雪下のギャロッピングにも適用できる.
3. 難着雪化対策・ギャロッピング対策品の効果検証と対策品選定フロー
実規模送電線,着雪サンプラを用いた観測,および部分模型を用いた風洞実験により,各種雪害対策品の効果検証結果とその効果発現条件を示した.また,一連の分析結果に基づき,気象,地域および設備条件を考慮し,重着雪およびギャロッピングの両事象に対応した,実用性の高い対策品選定フローを示した.
今後の課題
現地観測や屋内実験,解析等を継続して,本研究で提示した評価手法や対策品選定フローの検証と精緻化を進める.
注1)着雪した電線が,風を受けて上下に大きく揺れる自励的な振動現象.
注2)経験則と確率論に基づくギャロッピングを考慮した現行の装柱設計法.
関連報告書: [1] N19「送電設備の雪害に関する研究-2007~2011年度成果-」(2013.05)
概要 (英文)
We continue to acquire weather and observation data as well as accident data in operation lines and test lines in Japan. Based upon the data analyses, we elucidate weather situation at the time of snow damage outbreak, and improve a snow damage prediction method. In addition we evaluate the effectiveness of anti-snow-accretion devices, and improve the accuracy in predicting snow accretion on transmission lines by introducing more sophisticated models. In terms of these studies, we clarified the physical, topographical and meteorological conditions under which heavy snow accretion or galloping damages could take place against the integrity of transmission lines. Furthermore, we developed effective reduction measures as well as a practical galloping evaluation procedure.
報告書年度
2016
発行年月
2017/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
清水 幹夫 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
共 |
松宮 央登 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
杉本 聡一郎 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
野村 光春 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
橋本 篤 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
石川 智已 |
地球工学研究所 構造工学領域 |
共 |
西原 崇 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
平口 博丸 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
八島 政史 |
電力技術研究所 |
協 |
足立 和郎 |
電力技術研究所 高電圧・絶縁領域 |
協 |
下田 昭郎 |
環境科学研究所 大気・海洋環境領域 |
協 |
村上 貴裕 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
市川 英治 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
協 |
上之 和人 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
架空送電設備 | Overhead transmission facility |
重着雪 | Heavy snow accretion |
ギャロッピング | Galloping |
気象条件 | Meteorological condition |
対策 | Reduction measure |