電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y20006

タイトル(和文)

欧州諸国での入札ゾーン見直しと再給電指令をめぐる議論の動向と課題

タイトル(英文)

The issues of market bidding zone review and redispatching in UK, Germany, Norway and Sweden

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
わが国は、再エネの大量導入を支援するため、混雑注 )を前提としたノンファーム型接続注 )[1]を導入した設備形成を始めることとなった。これに伴って生じる混雑管理に関しては、2020年7月末に始まった電力広域的運営推進機関(OCCTO)の地域内系統の混雑管理に関する勉強会で、メリットオーダーを可能とする仕組みが議論された。また、同勉強会においては、2022年度中に再給電指令を開始し、将来の選択肢として、入札ゾーンの見直しも検討すると述べられた。欧州では、再エネ大量導入の支援といった理由から、同様の混雑管理方策の見直しに関する議論が進められている。日本と同様に、送電系統運用者(TSO)と市場運営者が異なる主体の欧州の混雑管理方策導入に関する議論を踏まえた上で、わが国への混雑管理方策に関して議論することは重要である。
目  的
欧州諸国での、入札ゾーン構成の見直し(Bidding Zone Review、BZR)と再給電指令制度の実例に関する議論を踏まえ、BZRと再給電指令の特徴を整理する。さらに、これらの混雑管理方策をわが国へ導入する際に留意すべき課題を示す。
主な成果
1. 欧州における混雑管理方策の特徴
欧州における混雑管理方策は、BZRのような前日市場の取引終了前までに実施される混雑予防方策と、再給電指令のような前日市場の取引閉場後から実運用までに実施される混雑緩和方策に大別できる(図)。発生し得る混雑の継続時間、箇所、頻度等が異なる中、欧州では、経済効率性を確保しつつ、安定的な系統運用を実現するため、混雑予防方策と混雑緩和方策を組み合わせて活用している。
2. わが国で欧州の混雑管理方策を導入する際の課題と対応策
欧州での入札ゾーンとTSOエリアの関係は、それぞれの国、地域の混雑管理や需給調整の特性に応じ、表に示す3つのタイプに分類できる。わが国は、入札ゾーンが各TSOのエリアと一致しているという意味では、イギリスタイプといえ、これが複数連系している状況である。地域の送電ネットワーク構成と、発電と需要の分布の変化によって、生じ得る混雑は異なることから、今後わが国で、TSOエリア内で入札ゾーンを分割する北欧タイプや、隣接する入札ゾーンを統合させるドイツタイプを採用する地域が生じることも考えられる。採用するタイプにより、混雑管理の課題と対応策は異なる(表)。表に示す対応策は、異なるタイプを採用した地域間で、混雑管理方策を協調的に活用する際にも重要である。
今後の展開
米国で導入されている混雑管理の仕組みの動向と課題を整理するとともに、欧州の仕組みと比較した得失について動向調査する。

概要 (英文)

Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, Japan (OCCTO) established study committee for discussing congestion management of inner control area with merit order under non-firm connection scheme. In this study committee, the issues and discussion points of congestion management for Japanese power system is considering and compiling the outline of implementation steps in order to start the Japanese congestion management. In this report, we analyze the issues and discussion point for congestion management referring to European lessons and experiences, which are market bidding zone review in ENTSO-E, implement of market bidding zone splitting in Norway, Sweden and Germany, discussion of redispatching 2.0 in Germany and re-structuring ancillary service for congestion management in UK. Major findings are: (1) market bidding zone review as a preventive procedure of congestion and redispatching as a mitigative procedure of congestion are compatible application. (2) Compatible application types for congestion management in Europe are categorized into three types (UK, Norway and Sweden, and Germany). Each compatible application type has a methodology for robust congestion management. (3) It is important for TSOs to consider introduction of both redispatching and ancillary service for congestion management, standard of ancillary service for congestion management, and cooperative redispatching mechanism.

報告書年度

2020

発行年月

2021/03

報告者

担当氏名所属

古澤 健

社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域

岡田 健司

社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域

キーワード

和文英文
混雑管理 Congestion management
入札ゾーン Market bidding zone
再給電指令 Redispatching
アンシラリーサービス Ancillary service
送電系統運用者 Transmission System Operator
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry