電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y19005
タイトル(和文)
建物脱炭素化に向けた取組の検討-米国の州や自治体の先進事例とわが国への示唆-
タイトル(英文)
Study on initiatives for building decarbonization-Case studies of US states and local governments and implications for Japan-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
わが国の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」では、脱炭素社会を今世紀後半のできるだけ早期に実現するというビジョンが掲げられている。また、国レベルのみならず、2050年CO2排出実質ゼロに取り組むことを表明する自治体も急増している。民生(家庭・業務)部門では、省エネ意識の向上や家電・機器の高効率化、断熱性能の向上などのために様々な対策が講じられてきたが、脱炭素社会の実現に向けては、住宅や事業所のエネルギー消費に伴う排出を可能な限り削減する「建物脱炭素化」を射程とする検討にも早期に着手する必要がある。米国の州や自治体の中には、わが国同様の野心的な排出削減目標を掲げた上で、建物脱炭素化関連の取組に着手する動きがあり、具体的かつ多様な手法を学べる点において、わが国やその自治体の検討の参考になる。
目 的
米国の建物脱炭素化取組の先進事例を把握するとともに、わが国への示唆を得る。
主な成果
1.建物脱炭素化に向けた取組の動向
米国の州や自治体による建物脱炭素化関連の取組の中から、内容・気候条件などの多様性も考慮しつつ、2017年以降に取組の枠組みを決定もしくは取組を開始した15事例(図1)を選定し、その内容や検討経緯を明らかにした。
(1)需要側対策として、設備機器のエネルギー源選択に踏み込むものが増えている。地域の背景事情にあわせて、対象用途や採用手法は様々である。
(2)主な手法として、新築時に燃焼機器の設置を禁止するなどの規制的手法、燃焼機器から電気式暖房・給湯機器へ代替する際の導入補助額を優遇するなどの経済的手法、需要家教育や施工者の人材育成をするなどの情報的手法がある(表1)。
(3)再生可能ガスに関する検討や太陽熱温水器の支援を同時に行う事例も見られるが、早期着手された政策の多くは、熱分野の電化促進を重視している。
2.わが国への示唆 米国事例調査を通じて、わが国の建物脱炭素化検討への示唆を明らかにした(表2)。
(1)脱炭素社会の実現を目指すことを表明した国や自治体は、再エネ主力電源化などの供給側対策と整合的に、ヒートポンプ普及支援などの需要側対策を強化することで、民生部門の燃焼機器などから排出されているCO2の大幅削減に取り組む必要がある。
(2)取組を本格化させるため、エネルギー基本計画や地球温暖化対策計画において電化の位置づけを明確にすべきであり、公共施設から先行的に取り組むことも検討に値する。費用対効果などの社会的受容性も考慮しながら検討を進めることが望ましい。
概要 (英文)
Japanese government proclaimed a vision to realize a decarbonized society as early as possible in the latter half of this century. In addition, a growing number of municipalities have stated that they will achieve net zero CO2 emissions by 2050. In the residential and commercial sectors, various measures have been taken to raise awareness of energy conservation, increase the efficiency of home appliances and equipment, and improve insulation performance of buildings. Beyond these measures, it is also necessary to study on "building decarbonization" to reduce the emissions from the energy consumption in residential and commercial buildings as much as possible. Some states and municipalities in the United States have set ambitious emission reduction targets similar to Japan, and are now beginning to undertake initiatives related to building decarbonization. We examine 15 cases, and identify regulatory, financial, and informational approaches for building decarbonization. Moreover, based on the case studies, we identify policy implications to Japan.
報告書年度
2019
発行年月
2020/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
西尾 健一郎 |
社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 |
共 |
中野 一慶 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
温暖化対策 | Climate change policy |
エネルギー需要 | Energy demand |
電化 | Electrification |
建物脱炭素化 | Building decarbonization |
ヒートポンプ | Heat pump |