電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y18004
タイトル(和文)
パーソナルデータの提供に関する消費者の意思決定に影響を与える要因の分析
タイトル(英文)
An Analysis of Consumers' Willingness to Provide Their Personal Data
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
【背景】
わが国では、パーソナルデータ注1 )の流通・活用を通じて国民生活の質を向上させることを目的に、情報銀行注2 )などのデータ流通・活用の仕組みが整備されつつある。こうした仕組みが機能するためには、パーソナルデータ供給者である消費者の自発的なデータ提供が重要となるが、わが国消費者のデータ提供意向の動向は不透明である。
【目的】
どのような要因が消費者のデータ提供の意思決定に影響を与えているのかを明らかにすることで、消費者の自発的なデータ提供を促し、データ流通・活用を通じて国民生活の質を向上させるための、データ活用事業の有効な取組みについての示唆を得る。
【主な成果】
30 分単位の電力消費データや家族構成等の世帯情報といったパーソナルデータの提供意向について、Web調査 (対象者8,000 人) を実施した。消費者のデータ提供の意思決定に影響を与える要因として、①提供するデータの匿名性、②データの第三者提供の仕組み、③データの利用目的、④金銭的報酬に注目し (表)、情報銀行のようなデータ流通・活用システムを想定した、消費者のデータ提供に関するコンジョイント分析注3 )を行った。主な結果は以下の通りである。
1.各要因が消費者のデータ提供の意思決定に与える影響の相対的重要度
消費者がデータ提供の意思決定において重視している要因は、重視している順に④金銭的報酬、③データの利用目的、①データの匿名性、②第三者提供の仕組みである。消費者のデータ提供を促進させるためには、データ提供から得られる便益を高めるサービスの開発が重要となることを示唆している。ただし、今後データ活用が進むにつれて、データの第三者提供に伴うリスクに対する消費者の認知が高まることも予想されるため、第三者提供の仕組みについても引き続き注視していく必要がある。
2.『③データの利用目的』がデータ提供の意思決定に与える影響 (図)
企業の業務効率化のための利用のように、消費者の便益になるとは限らないデータの利用目的や、新サービス開発のための利用のように、消費者がデータを提供してもすぐにその便益を享受できない利用目的であっても、利用目的が明確でない場合と比べれば、消費者はデータを提供しても良いと考えている。
3.『②第三者提供の仕組み』がデータ提供の意思決定に与える影響 (図)
消費者自身がデータの提供先となる第三者企業・組織を選択する仕組みは、第三者提供先の選択に全く関与できない仕組みよりも消費者にとって望ましい。ただし、場合によ っては、提供先となる第三者企業・組織のタイプのみ消費者に選択させる等、消費者が第三者提供先の選択に「部分的」に関与できる仕組みのほうが、データ提供を促進させることがある。中でも、消費者はデータの第三者提供先として地元企業を選好していることから、地元企業と協力したデータ活用のあり方を検討することは重要である。
4.パーソナルデータの提供に対する対価
匿名化されたパーソナルデータの提供に対する平均的な対価は、個人情報を含むデータを提供する場合と比べて約 210 円/月低い。データ活用事業の成立性の観点からは、匿名データを上手く活用することで、データ流通・活用に対する消費者の受容性を高めつつ、個人情報を含めたデータ活用を発展させていくことが有効であると考えられる。
注1 ) パーソナルデータとは、個人の識別性を問わず、個人に関する幅広い情報のことを言う。パーソナルデータの例としては、性別、年齢、氏名やインターネットの閲覧履歴、位置情報、電力消費データなどがある。
注2 ) 情報銀行とは、個人との契約に基づき個人のデータを管理するとともに、契約により予め指定された条件に基づいて、個人に代わってデータを第三者へ提供する事業のことである。
注3) コンジョイント分析とは、消費者に仮想的な商品・サービスを提示し、それらを評価してもらうことで、商品・サービスを構成する各要因に対する消費者の選好を分析する手法である。
概要 (英文)
Personal Data has been recognized as a valuable resource for various economic activities. Policy makers and firms in Japan have discussed systems for distributing and utilizing Personal Data securely to improve the quality of our lives by creating new businesses and enhancing productivity of the whole society. It is considered that whether these systems could work as expected will depend firstly on the consumers' willingness to provide their data. By using conjoint analysis in the web survey, this report investigates what kind of factors consumers value when deciding whether to provide their Personal Data. We focus on four factors, in particular, which are a) the anonymity of Personal Data, b) the system of the third-party use of teh provided data, c) the purpose of using data, and d) the financial reward. Main findings are as follows. First, consumers value d) the financial rewartd, c) the purpose of using data, a) the anonymity of data, and b) the system of the third-party use in order. Second, even when the purpose of using data might not directly provide benefits to consumers or bring a lag between consumers' data provision and the benefits in return, defining these purposes clearly can enhance consumers' willingness to provide their data. Third, the system of the third-party use in which consumers can select any third-party firms (i.e. perfect control system) is relatively preffered to the system in which consumers cannot participate in a selection of the third-party at all. However, the perfect control system is not always superior to other systems, as consumers, in some cases, prefer the system in which they only choose the types of third-party firms and leave the selection of specific firms to experts rather than the perfect control system.
報告書年度
2018
発行年月
2019/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
田中 拓朗 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
協 |
筒井 美樹 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
協 |
後藤 久典 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
協 |
澤部 まどか |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
パーソナルデータ | Personal Data |
データ提供の意思決定 | Willingness to Provide Personal Data |
データ提供の対価 | Willingness to Accept for Providing Data |
コンジョイント分析 | Conjoint Analysis |