電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y17003

タイトル(和文)

インセンティブ規制における配電事業者の効率性評価―英国の事例から得られるわが国への示唆―

タイトル(英文)

Incentive regulation of electricity distribution networks-Lessons from UK's experience -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背 景
わが国の送配電事業においては、効率化に関する事後評価を行いつつ、効率化へのインセンティブの付与が政策課題の一つとして位置づけられている。送配電部門の効率化を評価するための定量的な分析は、諸外国においても複数先行研究があるが、エネルギー政策によって分散型電源や再生可能エネルギーの導入拡大が進む時期を対象とした分析は行われてきていない。

目 的
送配電部門にインセンティブ規制を採用し、効率化を促してきた英国の配電部門に着目し、エネルギー政策によって分散型電源や再生可能エネルギーの導入拡大が進んできた2003~2014年の効率性を定量的に評価する。その上で、効率性の時系列的推移、およびモデルの違いが効率性評価に与える影響について明らかにする。

主な成果
1. 配電事業の効率性の評価
本研究ではDEA(Data Envelopment Analysis、データ包絡分析法)を使用し、英国の配電事業の効率性注)について、需要規模ないし配電線距離に対する費用の最小化を総合的に評価した。その結果、配電地域の効率値の格差は約0.4あることが分かった(図1)。特に、最も効率値の低い地域では、分散型電源の導入に対応するための費用が増加しており、配電料金水準が平均値よりも高いことが分かった。配電事業は、単にkWhを送り届けるための従来のサービスのみではなく、新たな電源や技術への対応が求められているため、効率性の評価においては、これらのための費用の増加についても考慮していく必要がある。

2.配電事業の効率性の推移
英国の配電事業は2000年代以降、需要規模に応じた従来の設備投資ではなく、低炭素社会の構築に向けた設備投資の必要性が高まり、需要家1軒あたりの費用負担が増加している(図2)。こうした設備投資の促進と効率性の向上は、配電事業にとってトレード・オフの関係にあり、実際に2000年代以降の効率性の変化について計測すると、効率性は低下傾向にあることが確認された(図3)。

3.配電事業の品質確保が重視される場合の効率性評価
英国において2000年代以降に分散型電源や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、重視されている品質要素(停電回数および停電時間)を考慮したBad Output Modelを使用し、効率性を評価すると、品質を考慮しないモデルよりも効率値が約10%高くなる地域があることが分かった(図4)。このことは、効率性評価におけるモデルおよび変数の選択が、配電事業の効率性評価にとって重要であることを示唆している。今後、分散型電源の普及拡大に伴い、停電対策のための費用の増加が求められる状況では、品質を考慮した効率性評価を重視する必要がある。

概要 (英文)

This report examined the efficiency of UK electricity distributors (DNOs) applying Data Envelop Analysis (DEA) with 2003-2014 data. In the UK, it was evaluated that while the efficiency has been strongly improved over the first decade after introducing the incentive regulation in 1990, it has not been clear whether the improvement has continued after 2000's. In 2015, the UK regulator, Ofgem pointed out that the level of network charges affected on the level of the retail tariff. To analyze the issue, the focus of this report is to what extent the inefficiency explains the high level of network charges.
In applying DEA, because the numbers of DNOs are 14 while the inputs and outputs are each two or three, we applied not only the basic CCR model but also the super-efficiency model and the resampling model. The main result is that there are areas in where the network charges are higher, the efficiency scores of the DNOs are lower.
Secondly, we found the 'quality services' have emerged as an important factor for DNOs, which we applied the customer interruption (CI) and customer minutes lost (CML) with Bad Output Model of DEA. The result showed that for some DNOs, the efficiency scores were 10% higher than the scores without the quality services factors. It means, the adoption of the models should ensure consistency with the energy policy, which develops the low carbon society with low CI or CML.
Finally, it appeared that the Malmquist productivity index of DNOs has been decreasing in 2000's, which shows that DNOs face the trade-off between improving cost efficiency and applying technological change to connect the small and intermittent decentralized generation sites.

報告書年度

2017

発行年月

2018/03

報告者

担当氏名所属

澤部 まどか

社会経済研究所 事業制度・経済分析領域

筒井 美樹

社会経済研究所 事業制度・経済分析領域

キーワード

和文英文
インセンティブ規制 Incentive Regulation
配電事業者 Electriciy Distributors
データ包絡分析法 DEA
効率性 Efficiency
英国 United Kingdom
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry