電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y17001
タイトル(和文)
株主提案権の現状と課題 ―日米の法制と運用の比較―
タイトル(英文)
The Recent Status and Issues of the Shareholders' Proposal Rights -Based on A Comparison between Legislatures and Practices in Japan and in the U.S.-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
【背 景】
わが国では、2012年開催の株主総会以降、株主による議案の提案(株主提案)の件数が急増している。わが国の会社法制上、一定の持株要件を満たした者による株主提案は、株主総会の目的事項に関する内容である限り、幅広く認められている。このため、積極的に経営に関わろうとするモノ言う株主「アクティビスト」による株主提案や、経営に直接関連しない内容の提案、さらに、1株主による膨大な数の提案も行われるようになってきている。これらのような、株主提案ができる権利(株主提案権)の行使の一部について、権利の濫用ではないかという主張もあり、法制審議会の場においても、その対応策の検討が行われている。
【目 的】
裁判例等において、濫用的行使ではないかと指摘された事例を参考にしつつ、わが国での株主提案権の在り方と、その行使に関する課題を明らかにする。その上で、わが国と米国との制度の比較を行いながら、株主総会における株主提案権の行使と会社側の対応を規律する制度や体制について、主にその実効性の観点から検討を行う。
【主な成果】
わが国の会社法制における、株主提案権が制定されるまでの過程や現在の議論の動向、さらに、権利の行使状況を示すことで、株主提案権の行使に関する課題の整理を行い、課題への対応策について示唆を得た。
①わが国の株主提案制度を、母法である米国の同制度と比較した場合、持株要件は厳しいが、それを満たしていれば提案内容についての制限は緩やかであり、提案数の制限もない。この違いは日米の株主総会の性格の違いに依拠するものであるが、結果として、瑣末と思われる内容の提案や、1株主からの膨大な数の提案が行われるといったことに繋がると考えられる。このような課題を克服しつつ株主提案権制度を有効に活用するという観点から、これまでも様々な議論が行われてきた。会社法研究会では、「1株主が提案できる議案数の制限」と、「不適切な内容の提案の制限」の2点について検討が行われた。また、2017年4月に開始された法制審議会 会社法制(企業統治等関係)部会においても、これら2点が検討事項とされている。
②欧米の類似の制度との比較から、既に検討が進められている上記2点に加え、以下に示す2点について、主に、その実効性の観点から検討を行った。
(1)株主提案権に係るノーアクション・レター制度の導入
行政機関からの回答であるため会社側の判断への活用が期待できる一方、その回答には法的拘束力がないことから、会社判断に異を唱える株主によって提訴された場合、裁判所がその回答とは異なる判断をするおそれがあることに留意する必要がある。
(2)社外取締役の有効活用
コーポレートガバナンス・コードでもその採用を促している社外取締役は、「株主の代表」として、その意思を取締役会で反映させることができる。このため、株主総会で議論となり得る意見を事前に整理することができると考えられるが、そのためには、社外取締役と株主との対話を、今以上に図っていくことが必要となる。
【今後の展開】
経営の公正性・透明性の実現が求められる公益事業に着目し、社外取締役制度を導入することによる経営への効果について、その運用実態に鑑み、同制度に期待される機能がより効果的に発揮されるために必要な要件を明らかにする。
概要 (英文)
The number of shareholders' proposals at shareholders' meetings in Japan increases from 2012, partly because of Companies Act's lenient regulations for the requirements of ownerships and propositions to exercise shareholders' proposal rights. Among those cases, there have been observed that shareholders submit proposals that are not necessarily relevant to the management of the companies, or they submit enormous number of proposals, which some commentators argue as abusive.
This report discusses necessary restrictions and modifications to the shareholders' proposal systems for more appropriate exercises of the rights, which foster more smooth and constructive communications between companies and their shareholders, i.e. their mutual benefits.
(1) No-Action Letters: Companies are allowed to request and obtain prior instructions on whether to adopt proposals or not from the competent officials of the Ministry of Justice. Certain limitations should be noticed since this system is not legally binding.
(2) Outside directors: As the representatives of shareholders, outside directors may effectively deliver the opinions and intentions of those shareholders to the board well before the shareholders' meeting. To this end, communications between outside directors and shareholders get essential importance.
報告書年度
2017
発行年月
2017/07
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
外埼 静香 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
協 |
丸山 真弘 |
社会経済研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
会社法 | Companies Act |
株主提案権 | Shareholders' Proposal Rights |
株主総会 | Shareholders' Meeting |
1934年米国証券取引所法 | Securities Exchange Act of 1934 |
社外取締役 | Outside Directors |