電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y16005
タイトル(和文)
家庭用小売電力市場の競争状況の分析と評価-小売全面自由化後の電気料金と需要家の選択行動-
タイトル(英文)
Review and analysis of competition in retail electricity market for residential customers - Retail price development and residential customers' behavior after full liberalization -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
2016年4月に電力小売全面自由化が実施され、2016年12月末までに257万件を超える小売電気事業者の変更があった。ただし、新規参入は低調である、電気使用量や世帯年収の少ない需要家をめぐっては競争が進んでないといった指摘がある。2017年1月には全面自由化1年目の競争評価の概要として、市場シェアや電気料金、需要家動向などに関するさまざまな指標が示された。こうした指標をもとに競争状況を適切に分析し、今後の規制料金の撤廃の判断などに資する評価につなげていくことが重要である。
目 的
電気料金動向と需要家の選択行動を調査し、電力小売全面自由化の1年目における家庭用小売電力市場の競争状況を分析・評価するとともに、三段階料金の料金負担軽減効果に留意して規制料金存廃のあり方について検討する。
主な成果
1. 電気料金削減率を考慮すると小売電気事業者の変更率は欧州と比べて遜色ない。
小売電気事業者の変更により可能な電気料金削減率は地域や電気使用量により異なるが、標準的な家庭で5%程度~10数%程度低い料金が提示されている。また、わが国各地域の小売電気事業者の変更率は料金削減率を考慮すれば欧州と遜色ない。
2. 需要家の選択行動は徐々に活発化、合理的な選択を可能とする環境は整いつつある。
小売電気事業者の変更受付開始直後の2016年2月と比べ、同年8月には小売電気事業者の変更検討行動をとる需要家の割合が上昇している。また、自由化の認知度は上昇し、安定供給に関する不安感や情報不足感も緩和されてきた。
3. 需要家が小売電気事業者を変更しない一因に、需要家満足度の高さがある。
自由化への期待感はやや薄れ、需要家による小売電気事業者の変更意向も低下している。ただし、小売電気事業者に対する満足度が高いと変更を検討しにくいという顧客ロイヤルティの効果も見られる。小売電気事業者への満足度は上昇傾向にあり、変更件数だけでなく、その背景にある事業者の経営努力を評価することも重要である。
4. 低所得世帯の料金負担軽減のために規制料金として三段階料金を残す意義は小さい。
世帯年収の低い需要家が小売電気事業者の変更行動をとっていないという関係は見られず、そうした需要家が特に競争の便益を享受できていないとはいえない。また、低所得世帯の中には電気使用量が多い需要家も少なくない。一定の仮定の下で試算すると、三段階料金の下で料金負担が軽減されていると想定される需要家のうち半数以上は年収が低いとは言い難い。三段階料金は、低所得世帯の料金負担軽減策として必ずしも有効とはいえず、それを存続させても経済的弱者の保護につながらない可能性がある。
今後の展開
2017年4月のガス小売全面自由化後の電力・ガス市場の競争状況を分析する。
概要 (英文)
In Japan, the retail electricity market for residential customers has been liberalized since April 2016. In this report, a competition in the market for residential customers was reviewed and analyzed based on primary research of electricity price setting, and residential customers' behaviors and attitudes towards the liberalization. The results are summarized as below.
1. Supplier switching rate in Japan is similar level compared with those in European countries considering bill saving potential which would affect customers' switching behaviors.
2. Residential customers who have considered switching suppliers have increased. An environment for customers to make rational choices has been made gradually. For example, customers' awareness of the liberalization has increased, and customers who are concerned that stable electricity supply might not been maintained has decreased.
3. On the other hand, customers who would like to consider switching has decreased. There are two factors behind this change of customers' attitudes. Firstly, Customers' expectation that competition would bring benefit has weakened. Secondly, customers' satisfaction with their suppliers has improved, so that customer loyalty has been increased.
4. Three block tariffs which are applied to regulated tariffs as a transitional measure for a customer protection are not effective to protect low income families.
報告書年度
2016
発行年月
2017/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
後藤 久典 |
社会経済研究所 事業制度・経済分析領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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電力小売全面自由化 | Full liberalization of retail electricity market |
競争評価 | Competition review |
電気料金 | Electricity price |
需要家行動 | Consumer behavior |
需要家保護 | Consumer protection |