電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y15009
タイトル(和文)
省エネルギー・デマンドレスポンスの実証研究における実験計画や効果検証のあり方
タイトル(英文)
Challenges of design and evaluation of pilot studies on energy efficiency and demand response
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
省エネルギー・節電促進策として、スマートメータ・HEMS(Home Energy Management System)を用いた使用量見える化や、時間帯別料金・緊急ピーク時料金などのデマンドレスポンス(DR, Demand Response)型料金に対して期待が寄せられている。その効果を見極めるために実証研究が行われるが、適正に運用されないと、有益な知見を得られないばかりか、本来の実力以上の評価をもたらすこともある。実証のあり方にかかる議論は我が国で不足してきた。そこで本研究では、省エネ・DR実証の運用や結果解釈の適正化に資するため、検証方法論の既往知見を参考にしながら、我が国の事例も振り返ることで、実証の課題や対応策を整理した。
実験計画や効果検証にあたっては、実証研究の枠内において正しい結果が得られること(内的妥当性)に加えて、往々にして意識が希薄になりやすいが、将来の目標市場においても当てはまる結果を得ること(外的妥当性)も重要である。妥当な知見を得るために求められる主なポイントは、以下のとおりである。
①影響要因を特定するためには、検証項目をある程度単純化する必要があり、また、気温1℃の違いで使用量が数%変化することにも意識を向けなければならない。効果を定量的に明らかにするためには、②比較対照を確保する必要がある。その方法としては、気象条件差や生活環境変化が誤差となる前後比較実験よりも、検証項目を適用する群としない群にランダムに割り当て、両群の使用量差を効果とみなすランダム化比較対照実験が理想とされる。エネルギー使用量は元来ばらつきが大きいため、偶然の結果でないことを明らかにするためには、③十分なサンプル数が要求される。サンプル数は、当該データや類似事例を確認しつつ、想定される効果や使用量のばらつきにもとづいて設計することができる。
④効果の継続性は、行動変容策の課題でありながら検証事例が少ない。短期実証では大きな効果が観察されやすく、季節性との区別など解釈にも注意を要する。⑤効果の一般性も慎重に扱われるべきものであり、削減のしやすい多消費・在宅・高意識世帯に偏っていないか等、募集方法を含めて適切な対応が求められる。
⑥データの適切な扱いは事後検証や知見蓄積のために不可欠である。一般論としては肯定的結果ほど表出しやすいバイアスの存在が指摘されており、当該分野の実証関係者や政策担当者においても、データを忠実に解釈し活用していくことが推奨される。
概要 (英文)
There is a growing interest in the impact of energy efficiency and demand response measures such as energy usage feedback and dynamic pricing. Although pilot studies are necessary and useful in assessing the amount of reduction in electricity consumption, their results may lead to the overestimation of effectiveness unless field experiments are appropriately designed, executed and evaluated. This report aims to contribute to the quality management of pilot studies and to improve the scientific literacy of the people involved in research, business, and policymaking by learning from past experiences and from the guidelines followed in the United States and also by referring to previous projects in Japan. Pilots should be carefully designed and evaluated to guarantee both internal and external validity. In this study, we discuss the challenges and recommendations from six viewpoints: identification of influential factors, gathering of data for comparison, requirements for the sample size, persistence of reduction, generality of outcomes, and proper data management.
報告書年度
2015
発行年月
2016/04
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
西尾 健一郎 |
社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 |
共 |
向井 登志広 |
社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
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省エネルギー | Energy Efficiency |
節電 | Electricity Saving |
デマンドレスポンス | Demand Response |
評価測定検証 | Evaluation, Measurement & Verification |
ランダム化比較対照実験 | Randomized Controlled Trial |