電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y14023

タイトル(和文)

小売全面自由化による電気事業者の料金メニュー・サービス多様化に関する調査-英独事業者の事例調査および国内需要家調査-

タイトル(英文)

Diversification of Electricity Tariffs and Services of Electricity Suppliers after Electricity Retail Market Liberalization- Practices of Energy Suppliers in Great Britain and Germany and Japanese Residential Customers' Preferences -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

本研究では、イギリスとドイツの主要なエネルギー事業者の料金メニュー・サービスの最新動向を調査し、料金メニュー等の多様化が需要家にどのようなメリットをもたらす可能性があるかについて検討する。また、わが国家庭用需要家の料金メニュー・サービスに対する選好を調査・分析し、小売全面自由化後の多様化の方向性について考察した。主な成果は以下の通りである。
(1)英独の主要エネルギー事業者の料金メニューについては、変動料金・固定料金やオンラインアカウントを利用する料金メニューなど多様化が進んでいる。これらの料金メニューは一定数の需要家によって利用されている。料金メニューの品揃えは事業者間で類似し、イギリスでは小売電気事業者を変更しない需要家のうち料金メニューや支払方法を変更した需要家が約1割あり、小売電気事業者を変更しなくてもニーズにあった料金メニューを見つけられるというメリットもある。
(2)料金メニューとは対照的に、電力・ガス小売以外の有料サービスの多様化状況は事業者間で違いが見られる。Centricaのように約8百万件の需要家からサービスが利用されている事業者もある。同社は、ウェブサイト上の顧客接点に加えて、小売業と提携しその店舗を通じた対面の接点も構築しているほか、他社より多くの従業員を有し、サービス技術者として活用している。同社が提携するスーパーマーケット等に訪れた需要家は、エネルギーサービスについて専門家に相談して、その利用を検討することができる。このような対面の顧客接点の構築や従業員の育成には事業者が長期的視点で取り組む必要があるが、一度構築されれば持続的な競争優位の源泉となる可能性がある。ただし、顧客接点等の構築に時間がかかる可能性があることから、わが国需要家にとっては小売全面自由化後ただちにそうしたメリットがもたらされるとは限らないことも示唆される。
(3)2013年12月の国内家庭用需要家を対象としたアンケート調査では、需要家の4~5割が自由化に期待し、4割以上が料金値上げ等に関心を持っていた。こうした需要家は、2016年の小売全面自由化後の早い段階から選択行動をとると予想されるが、特に節電リベートや長期契約割引といった割引・固定料金メニューを利用したいという意向が高く、インターネット購買をよく利用する傾向も強い。したがって、低コストでオンラインの顧客接点が構築され、多様な割引・固定料金メニューが提供され、実際に利用が進めば、自由化のメリットが早期に実感される可能性がある。他方、機器メンテナンス等のサービスは、割引・固定料金メニューよりもグリーン電力料金を選好する需要家から好まれる傾向が強い。

概要 (英文)

In Japan, the retail electricity market for residential customers will be liberalized in 2016. Incumbent electricity suppliers and new entrant suppliers are developing their marketing strategies including customer services. In this report, case studies of electricity tariffs and services of European energy suppliers are conducted. Firstly, the author found some European energy suppliers emphasize value-added services for residential customers, while others focus mainly on sales of electricity and gas. Secondly, energy suppliers who provide a variety of services strive to develop differentiated management resources such as face-to-face marketing channels tied up with retailing firms and skilled human capital to provide such services. The case study shows that a diversification of services could require certain lead-times to develop face-to-face marketing channels and skilled human capital. Also, an analysis on Japanese residential customers' preferences is conducted. The result shows that more than 60 percent of Japanese residential customers prefer long term contract with a discount and rebate by energy saving. Online marketing channels could be effective means as contact points with customers because those customers ready to use e-commerce. On the other hand, those customers, who prefer value-added services such as maintenance of home appliances, stay 40 percent.

報告書年度

2014

発行年月

2015/06

報告者

担当氏名所属

後藤 久典

社会経済研究所 電気事業経営領域

キーワード

和文英文
電力小売自由化 Electricity retail market liberalization
営業・マーケティング戦略 Sales and marketing strategy
料金メニュー Electricity tariff
顧客サービス Customer service
顧客接点 Contact point
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