電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y12010
タイトル(和文)
東日本大震災後の人々の科学技術に対する考え方の変化
タイトル(英文)
Attitude changes toward science and technology after the Great East Japan Earthquake
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
東日本大震災後,自然災害や科学技術のリスクおよびその管理方法について人々の意識は大きく変化したと考えられる。信頼回復を目指した情報提供やコミュニケーション方策を策定するためには,人々が望ましいと考える科学技術の利用やリスク管理のあり方等についての意識とその変化を把握する必要がある。
市民と専門家とを対象に意識調査を行い,2009年度に実施した同様の調査結果と比較することにより,東日本大震災前後の変化を明らかにする。加えて,市民と専門家のリスク認知や科学技術の利用に関する考え方の差違についても示す。
首都圏在住の成人男女を対象とした市民調査(回収率63.7%)と,大学教員を対象とした専門家調査(回収率27.0%)を2012年8月に実施した。調査では,科学技術全般と,原子力発電・遺伝子組換え食物・ナノテクノロジーの医療応用について考え方を尋ねた。
その結果,大震災後,市民だけでなく原子力専門家の原子力発電に対するリスク認知も高まったことが分かった。また市民は,原子力発電について,企業の自主管理より国の規制強化が重要な技術であり,広域的被害をもたらすというイメージを持つようになった。原子力発電の利用の是非を評価する際に「社会的に必要かどうか」「環境影響を制御できるかどうか」を重視する傾向が強まる一方で,原子力発電の社会的必要性の評価自体は大きく低下した。また国や電力会社のリスク管理能力,情報の正確さ等の評価も大きく低下した。
科学技術全般に関しては,肯定的側面について5点尺度で4点以上と高かった市民の期待はやや低下すると同時に,予測できない危険や制御不能の可能性などの否定的側面への懸念もやや減少した。大震災後,市民は科学技術を強く否定もできないが過大な期待もできなくなり,とりあえず態度を留保しているように思われる。他方,専門家の科学技術一般についての考え方はほとんど変化していない。また,インターネットから科学技術に関する情報を入手する市民は2009年度の2割強から5割弱まで増加した。
今後は,行政や電気事業が信頼回復のための情報提供やコミュニケーション方策を策定するために人々の科学技術に対する考え方の変化から訴求点を読み取ることに加えて,利用者が増大しているインターネットを含めた情報メディアの利用実態を把握する。
概要 (英文)
This study aims at revealing risk perception and attitudes toward science and technology of the public and experts after the Great East Japan Earthquake and the accident at the Fukushima Daiichi nuclear power plant in March 2011, in contrast to those prior to the disastor. Questionnaire surveys were conducted in August 2012 for the general public in Tokyo metropolitan area and academic professionals in biotechnology, nuclear energy technology and nanotechnology. As the results, comparison with the equivalent questionnaire survey in 2009 showed that risk perception of nuclear power generation has arisen not only in the public but in the nuclear experts. The public's image of nuclear power generation significantly shifted to 'widespread damage' and 'regulation by the government' from 'local damage' and 'self-management by the company', respectively. Moreover, the public turns to place higher priorities than before on the perspectives of 'necessity for the society' and 'possibility to prevent negative environmental impact' when they evaluate nuclear power generation in the society, instead of 'the government's capability for risk management and prevention of misuse' and 'the electric power companies' capability for risk management'. By comparison with the 2009 survey, the public's belief in positive aspects of science and technology at large slightly decreased, while anxiety in negative aspects somewhat eased. In contrast, there is little change in attitudes of the experts.
報告書年度
2012
発行年月
2013/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
小杉 素子 |
社会経済研究所 電気事業経営領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
リスク認知 | Risk perception |
科学技術 | Science and technology |
原子力発電 | Nuclear Power Generation |
市民と専門家 | Public and Experts |
質問紙調査 | Questionniare survey |