電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y12001

タイトル(和文)

2030年までの日本経済中期展望 -財政再建への道-

タイトル(英文)

Outlook for the Japanese Economy towards 2030 -Road to Fiscal Reconstruction-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

・日本経済では、東日本大震災からの復興が進みつつあるなかで、日本が従来から抱えていた財政再建、行政改革、デフレ、円高など、震災前から持ち越してきた問題が改めて注目を浴びつつある。当所の財政=マクロ経済連動モデルを用いて、2030年までのわが国のマクロ経済・財政展望を行い、これをベースとして、震災の復興需要と資金調達、消費税の増税、年金給付の削減などを行った場合の経済効果や財政収支に与える影響等についてシミュレーション分析を行った。
主な成果
(1) 展望の標準ケース(消費税率政府案5%引き上げ)
・2030年まで、日本経済は、2010~30年の通期平均で1.1%の実質成長を遂げる。低目の成長・物価安定の長期化の背景には、世界経済の減速(中成長)、円高基調の持続、民間消費・設備投資の伸び悩み等がある。需給の緩和傾向を背景に物価安定基調が続き、名目成長率が実質成長率と同程度の伸びにとどまるため、消費税率の5%引き上げの下でも、税収の伸び悩み等から基礎的財政収支(プライマリーバランス(PB)、国・地方計)の持続的な改善は期待できない(対名目GDP比2020年 -2.9%,30年-4.6%)。普通国債残高対GDP比も上昇を続ける(2020年144.9%、30年158.0%)。
(2) 東日本大震災と復旧・復興要因の影響
・震災からの復旧・復興需要とその波及効果により実質GDP成長率は短期的に0.2~0.4%上昇する。中長期には、2010~15年の実質成長率を平均0.08%ポイント(P)、同10~20年平均を0.02%P押し上げる程度、またPB対名目GDP比の悪化も2020年0.27%(約1.5兆円)、30年には0.19%(約1.3兆円)程度と小幅である(図1)。
(3) 消費税率引き上げと財政再建
・消費税率5%引き上げ(政府案)は、国内物価を上昇させ、実質可処分所得の押し下げを通じて民間消費等家計需要が減少し、これが経済全般に波及して短期的には0.1~1.9%程度の実質成長率押下げ影響がある。また、平均成長率は2010~20年間で1.4%(消費税据置きケース)から1.2%へ、2010~30年間通期では1.3%(同)から1.1%へと、各々0.2%ポイント程度低下する
・「プライマリーバランスを黒字化し、国債残高対GDP比率を安定的に引き下げる」という意味での財政再建を進めるには、消費税率5%引き上げのみでは足りず、高成長等の助けが必要である。世界経済の好調と、1ドル110円方向への円安、これを受けた輸出増と、民間消費を始めとする内需押し上げによる通期平均1.6%程度の実質成長(高成長ケース、名目成長率は2%程度)の下で、消費税率を15%程度に引き上げれば、PBは2020年代前半には黒字化する。消費税率引き上げによる財政再建にあたっては、行政改革だけでなく、税保険料徴収率の引き上げ、年金給付引き下げ等の公平性を確保する制度改革を進めながら、法人税減税などの成長戦略を推進し、税率の上昇幅は最低限に留めるべきであろう。

概要 (英文)

Japanese economy is recovering from the damage by the 2011 Great East Japan Earthquake. Several medium term problems are receiving much attention now that have been brought over from before the earthquake such as the reconstruction of the finance of the Government, deflation and yen appreciation. This report shows an outlook for the Japanese economy toward 2030 and several simulations mainly on the fiscal drag after the reconstruction from the earthquake, the hike of the five percent consumption tax rate scheduled by the government and the cut of the pension payment by using the macroeconomic fiscal linked econometric model. Main forecasting and simulation results are as follows:
i) In the baseline case, the average annual growth rate of real GDP toward 2030 will be 1.1%. The economy will not be able to get out of the low growth path and disinflation because of the loose demand and supply conditions. The impacts of the Earthquake on the Japanese economy in the medium term is rather small, although in the short term, the real growth rate will be elevated by 0.2 to 0.4 percent points. The primary balance of the government (PBG, the fiscal balance less net interest payment(receipt)) will not go into the black due to the low nominal growth rate throughout the forecasting period (-2.9% and -4.6% per nominal GDP in 2020 and 30) including added consumption tax revenue.
ii) In the case of a strong overseas economy, weak yen rate and rather strong private consumption etc., the average real growth rate will be 1.6%(nominal 2% growth or so; high growth scenario) from 2010 to 2030. In this scenario, the PBG will go into the black in the early 2020's under the ten percent increase of the consumption tax rate. We can find some light toward the fiscal reconstruction then, but the hike of the consumption tax rate should be minimized by the help of the required outlay cut including pension payment and fare collection of the tax revenue through the additional institutional reform.

報告書年度

2012

発行年月

2012/06

報告者

担当氏名所属

門多 治

社会経済研究所 経済・社会システム領域

浜潟 純大

社会経済研究所 経済・社会システム領域

桜井 紀久

社会経済研究所

キーワード

和文英文
日本経済 Japanese Economy
2030年の経済展望 Economic Outlook for the Year 2030
財政再建 Fiscal Reconstruction
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