電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
Y10011
タイトル(和文)
家庭用給湯分野における温室効果ガス削減の可能性
タイトル(英文)
Greenhouse gas mitigation potential of energy-efficient water heaters in the residential sector
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
給湯用エネルギー消費に伴うCO2排出量は家庭部門からの排出の約2割を占めており、ヒートポンプ式給湯機への代替などに、温暖化対策として大きな期待が寄せられている。温暖化対策は、CO2限界削減費用(排出量を1トン減らすためにかかる追加的費用)が低い対策、すなわち、費用対効果の優れた対策から実施していくのが望ましい。しかしながら、給湯分野の対策について、費用対効果に関する議論はほとんどされていない。そこで本研究では、世帯規模による給湯需要の違いや現状の給湯器構成を考慮した分析により、家庭部門における省エネ型給湯器への代替の、温暖化対策としての費用対効果を明らかにする。主な成果は以下のとおりである。
世帯人員数と現在使われている給湯器の種類により国内全世帯を40セグメントに分類した上で、給湯器代替の費用対効果を分析した。その際、各給湯器の効率や価格は文献・カタログ等に基づき想定し、同じエネルギー源の省エネ型給湯器へ代替可能な「固定ケース」、電気式の省エネ型へ代替可能な「電化ケース」、両ケースで想定した代替オプションのいずれも選択可能な「選択ケース」の3ケースを仮定した。
(1)電気式省エネ型給湯器への転換が代替オプションに加わることで(電化ケース・選択ケース)、CO2削減可能性は拡大し、同じ削減水準を実現する際のCO2限界削減費用も低めとなる。限界削減費用が負となる経済的な削減ポテンシャルは、固定ケースでは現状の給湯分野におけるCO2排出量の8%、電化ケースは16%、選択ケースは17%であった。
(2)選択ケースにおいて社会的費用が最小となる給湯器構成を求めたところ、CO2削減率が大きくなるほど省エネ型の比率は上昇し、中でも電気式の増加が著しい。同居人数が多い世帯ほど限界削減費用が低く抑えられる傾向にあり、このことは、エネルギー消費量が大きめの世帯への普及促進策の重要性が示唆する。
(3)CO2削減を進めるほど、イニシャルコストの占める割合が増加していく。例えば、選択ケースのCO2半減時には、ランニングコストは現状比0.3倍、イニシャルコストは同1.8倍となる。すなわち、給湯分野からのCO2排出を大幅に減らしていく上では、電気式省エネ型給湯器のイニシャルコストの低減が特に重要となる。
概要 (英文)
The energy consumption for water heating accounts for approximately 30% of the energy required by the residential sector in Japan. Despite the high expectation of low CO2 emission, energy-efficient (EE) water heaters are not yet widely used. This study elaborates the cost-benefit of EE water heaters and derives the marginal abatement cost curve. We assume three cases; high efficiency without changing the energy source (case 1), high efficiency by shifting to electrification (case 2), and high efficiency by choosing the energy source (case 3). The result shows that CO2 emissions can be reduced by up to approximately 63% in the cases 2 and 3, whereas approximately 25% in the case 1. Moreover, the optimization analysis reveals the cost-effective breakdown of water heaters under the CO2 constraints. The larger the rates of CO2 emissions reduction are, the more the share of the EE water heaters, especially the share of CO2 refrigerant heat-pump-type water heaters remarkably increases.
報告書年度
2010
発行年月
2011/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
元 アンナ |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
共 |
西尾 健一郎 |
社会経済研究所 エネルギー技術政策領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
給湯機器 | Water Heater |
CO2排出削減単価 | CO2 Emission Abatement Cost |
エネルギー消費 | Energy Consumption |
家庭部門 | Residential Sector |
温暖化政策 | Climate Change Policy |