電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V21001

タイトル(和文)

日本国内での鉄鋼や亜鉛の大気腐食性評価のためのドーズレスポンス関数の提案

タイトル(英文)

An improved dose-response function for the evaluation of atmospheric corrosivity of carbon steel and zinc in Japan

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景
送電用鉄塔は広範囲に多数散在する設備であるため,個々の鉄塔の腐食状態を点検により評価するにはコストと時間を要する。改修,更新の対象設備を効率的に優先順位付けするためには,環境因子のマップとドーズレスポンス関数(DR関数)を組合せて得られる推定腐食量マップに基づき,鉄塔立地ごとに腐食状態を把握することが有効である。DR関数自体は海外の既往文献の中でいくつか提案されており,国際規格にも導入されているものの,日本国内では国内規格へのDR関数導入も含めて腐食量推定手法が整備されていない。

目的
送電用鉄塔部材に用いられる亜鉛や鉄鋼について環境因子に基づく腐食量推定手法を国内に整備するため,既往文献から選定したDR関数に対して国内大気暴露試験データに基づく改良を行い,国内適用性を有するDR関数を提案する。

主な成果
1. 国内大気暴露試験データに基づくDR関数の改良
国内25ヶ所で取得された既往文献の大気暴露試験データ,および当所が国内3地点で取得した大気暴露試験データに基づき,ISO 9223のDR関数を基本形として係数を決定することでDR関数の改良を行った。日本国内の実測データには,腐食量に対してCl−付着量に代表される海塩の影響が支配的であるという特性が見られる(図1)。このため,腐食量に対するCl−項(DR関数において海塩の影響を反映する項)の寄与度を実測データに基づいて適切に設定して係数を決定した(以下,電中研2019改良DR関数)。

2. 送電用鉄塔の立地ごとの腐食状態把握に対する改良DR関数の適用性評価
既往のDR関数(ISO 9223のDR関数)と比較して,電中研2019改良DR関数によって推定された腐食量のCl−項は,鉄鋼,亜鉛ともに,海塩の支配的な影響によって形成される実測腐食量の空間分布(沿岸~内陸の減少傾向)に対して優れた再現性を有していることが確認された(図2)。

今後の展開
提案したDR関数と環境因子のマップを組合せて推定腐食量マップを作成し,さらに,マップ検証のために実施されている全国約100ヶ所の鉄塔における試験片暴露によって取得される腐食量と対比することで,推定腐食量マップの実務適用性を検証する。

概要 (英文)

A dose-response function (DRF), which has applicability to the data of outdoor exposure tests in Japan (Japan Weathering Test Center (JWTC) data and CRIEPI data) is proposed in order to improve estimation methods of assessing the domestic atmospheric corrosivity of carbon steel and zinc. From literature survey, the DRF developed in ISO 9223 (ISO9223DRF) is selected as a suitable DRF for a basic DRF of assessing the domestic atmospheric corrosivity. The coefficients of the ISO9223DRF are modified by a nonlinear least-squares regression model based on the JWTC data and the CRIEPI data (fitted DRF). The estimated corrosion loss by the fitted DRF shows better agreement with the measured loss from the JWTC data and the CRIEPI data in terms of correlation with the measured loss and fraction of the estimated loss within errors of -50% - +100%. And also the second term of the fitted DRF, which corresponds with estimated corrosion loss associated with Cl- deposition shows sufficient agreement with the measured loss in terms of dependency on distance from the coast. This indicates that the fitted DRF has applicability to assessing spatial distributions of the domestic atmospheric corrosivity in Japan.

報告書年度

2021

発行年月

2021/07

報告者

担当氏名所属

大原 信

環境科学研究所 大気・海洋環境領域

朱牟田 善治

地球工学研究所 構造工学領域

キーワード

和文英文
大気腐食 Atmospheric corrosion
ドーズレスポンス関数 Dose-response function
腐食環境因子 Corrosive environmental factors
鉄鋼 Carbon steel
亜鉛 Zinc
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