電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
V20003
タイトル(和文)
CCUのCO2排出削減対策としての位置付け -国外事例と電気事業への含意-
タイトル(英文)
The role of CCU as CO2 emission reduction measures - Application example in the abroad and its implication for power generation sector-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
将来的に温室効果ガス (GHG) の排出を正味ゼロにする「ネットゼロ」への潮流が世界で加速している。日本でも「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、電気事業でも目標達成に向けた検討を開始している。発電、鉄鋼、セメント、化学等の大規模排出源におけるCO2削減技術の一つであるCCS注 )の普及が期待通りに進まない中で、燃料等の有価物生産の代替によって化石燃料利用を抑えることで、CO2排出削減の可能性とコスト低減が期待できるCCU注 )への注目が高まっている。しかしながら、開発段階の技術が多く、多様な技術オプションで構成されるCCUの排出削減への貢献は不透明である。
目 的
ネットゼロに向けた目標達成におけるCCUの可能性を明らかにするために、CCUの現状と見通しおよび国外の排出削減政策における位置付けを調査する。また、将来的に市場ポテンシャルが大きいと予測されるCO2変換による燃料合成 (軽油、メタン、メタノール) について投入エネルギーを試算し、発電部門におけるCO2削減の効率等を評価する。
主な成果
1. CCUの現状と見通し
2015年時点における世界全体のCO2の産業利用量は年間約2.1億tで、尿素等の肥料製造の1.3億t、石油増進回収の0.8億tが大部分を占める。一方、2050年の利用ポテンシャルは、メタンやメタノール等の燃料合成が最も大きく年間10億tから42億tとされる。
2. 国外におけるCCUのCO2削減対策としての位置付け
2050年までのネットゼロ達成を法的目標とした英国は、目標達成への道筋において、CCUを96%から100%削減に向けた技術オプションとして位置付けている。具体的には、CCSやDAC注 )で回収したCO2を原料として燃料を合成し、航空、産業等で利用することで約4千万tの削減を想定している。2050年までの域内のネットゼロを目指すEUも、CO2を原料とした燃料および材料 (主にプラスティック) の合成を90%から100%削減に向けたオプションと位置付けている。
3. CO2変換投入エネルギー等の試算(表1)
100万tのCO2から軽油、メタン、メタノールを合成 (図1-c.) する際に正味消費されるエネルギーは、いずれもCCS (図1-b.) を上回る。さらに、燃料合成のCO2の利用量を削減量とするためにDACCS注 )を導入する場合、追加的なエネルギーが必要となることから、CO2削減の効率は、再エネ導入 (図1-a.) およびCCS が上回る。また、CO2変換の投入利用エネルギーはゼロカーボンの必要があり、大部分は原料となる水素の消費が占めていることから、電力供給とその他部門との水素調達の競合が課題となる。
概要 (英文)
A number of countries including Japan are committing to net zero emissions by 2050. Power sector in Japan is just beginning discussion about pathways to achievement net zero, too. CCS (Carbon Capture and Storage) is the effective method to reduce CO2 emission from fossil fuel combustion power plant, although sufficient rollout to compensate worldwide net zero is far from expectation. On the other hand, attention to CCU (Carbon Capture and Utilization), its final products yield revenue to trade off extra cost for capturing CO2, is growing up rapidly.
In this report, we investigate the UK and EU emission reduction policies, because of reveal the role of CCU in the pathways to 2050 net zero. In there, fuel synthesis using captured CO2 from power generation, industry processes and atmosphere directly for aviation and industry is technical option for residual emission after achievement more than 90% reduction. Furthermore, we estimate energy demand for fuel synthesis, which are to diesel, methane and methanol from CO2, to assess potential of fuel synthesis as CO2 reduction measure by comparing with CCS and renewable energy.
報告書年度
2020
発行年月
2021/03
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
下田 昭郎 |
環境科学研究所 大気・海洋環境領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
CO2回収・利用 | Carbon Capture and Utilization |
CO2回収・利用・貯留 | Carbon Capture, Utilization and Storage |
CO2排出削減対策 | CO2 emission reduction measures |
石炭火力発電所 | Coal-fired power plant |
合成燃料 | Synthetic fuels |