電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V20001

タイトル(和文)

岩礁性藻場の調査事例を基にしたCO2吸収ポテンシャルの推算

タイトル(英文)

Estimation of potential for carbon dioxide absorption in reef seaweed beds based on past survey cases

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
温暖化対策におけるCO2吸収源として、海洋生物の作用によって海域に貯留された炭素(ブルーカーボン)、中でも浅海域において藻場に貯留された炭素が注目されている。現状、日本ではブルーカーボンは温室効果ガスインベントリに登録されておらず、炭素クレジットとして認められていない。インベントリ登録と炭素クレジットの制度化に向けて、国は現時点でのCO2吸収ポテンシャルの推算を進めているが、クレジットの算定精度向上のためには、過去のCO2吸収ポテンシャルの推算も必要となっている。特に、藻場の消失・衰退が顕著となる1990年代以前のCO2吸収ポテンシャルの推算が重要である。
目  的
日本の浅海域における主要なCO2吸収源である岩礁性藻場を対象に、過去の藻場情報をCO2吸収ポテンシャル推算に活用する方法を提案する。さらに、提案方法を用いて、代表的な海藻種が繁殖する藻場についてCO2吸収ポテンシャルを推算する。
主な成果
1. 岩礁性藻場の情報からCO2吸収ポテンシャルを推算する方法の提案
 1990年以前の岩礁性藻場に関する文献を約120件収集し、CO2吸収ポテンシャルの推算に必要な年間最大現存量等の情報の有無から、①藻体重量が最大となる現存量が得られる場合、②現存量のみ得られる場合、③現存量がなく藻体の長さ(茎長など)と個体数のみが得られる場合の3つに類型化した(図1)。②と③の場合は、文献情報から得られた季節による藻体成長や茎長などの藻体データに基づく換算式から年間最大現存量を求め、CO2吸収ポテンシャルの推算を可能にした(図1)。
2. 藻場タイプ別のCO2吸収ポテンシャルの推算
 提案した方法を用いて、日本の代表的な岩礁性藻場であるコンブ場、アラメ・カジメ場、ガラモ場を対象に、CO2吸収ポテンシャルを推算した。その結果、CO2吸収ポテンシャルは、コンブ場で0.8~3.6トンCO2/ha/年、アラメ・カジメ場で2.3~10トンCO2/ha/年、ガラモ場で5.1~15トンCO2/ha/年の範囲と推算された。同じタイプの藻場でも、海域、海藻の種類などの違いにより異なる結果となった(図2)。

今後の展開
国内の岩礁性藻場を対象として、過去のCO2吸収ポテンシャルに関するデータの拡充を図る。

概要 (英文)

As a CO2 sink in global warming countermeasures, carbon stored in sea areas due to the action of marine organisms (blue carbon), especially carbon stored in shallow coastal ecosystems, is drawing attention. For the registration of the greenhouse gas inventory of blue carbon in Japan, it is important to grasp the data for evaluating the atmospheric CO2 absorption amount before the 1990s, when the disappearance and decline of vegetated coastal ecosystems has been remarkable in Japan. Approximately 120 literatures before 1990 in reef seaweed beds, which are the main CO2 sinks in shallow coastal ecosystems of Japan were collected and analyzed in order to propose a method for estimating the potential for CO2 absorption and to estimate the potential for seaweed beds using the proposed method. The literatures were categorized into the following three cases. (1) When the annual maximum biomass (Bmax), which are necessary for estimating CO2 absorption potential can be obtained, (2) When only the biomass can be obtained, and (3) When only the algae length (stem length, etc.) and population can be obtained. In the cases of (2) and (3), Bmax were calculated from the conversion formula based on the algae data such as seasonal growth and stem length obtained, and the potential for CO2 absorption could be estimated. Using the proposed method, we estimated the potential for CO2 absorption in Laminaria beds, Eisenia and Ecklonia beds, and Sargassum beds, which are typical seaweed beds in Japan. These are in the range of 0.8 to 3.6, 2.3 to 10, and 5.1 to 15 ton CO2/ha/year, respectively.

報告書年度

2020

発行年月

2021/03

報告者

担当氏名所属

若松 孝志

環境科学研究所 環境化学領域

今村 正裕

環境科学研究所 水域環境領域

平野 伸一

環境科学研究所 環境化学領域

森田 仁彦

環境科学研究所 環境化学領域

キーワード

和文英文
ブルーカーボン Blue Carbon
炭素クレジット Carbon credit
CO2吸収ポテンシャル Potential for carbon dioxide absorption
岩礁性藻場 Reef seaweed bed
浅海生態系 Shallow coastal ecosystems
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