電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
V18001
タイトル(和文)
赤外水分計を用いた鋼管内面に生じる付着水の膜厚変動の計測
タイトル(英文)
Fluctuation monitoring of deposited water layer thickness in the pipes of transmission tower by infrared moisture analyzer
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
電力会社保有の経年鉄塔は補修・更新時期の集中が予想されており、腐食劣化の進行予測を保守点検の優先度調査等に活用することが期待されている。部材の腐食速度は付着水の膜厚や乾湿周期等(濡れ挙動)により異なるが、鋼管内の濡れ挙動は不明であったため腐食劣化の進行予測が困難であった。当所ではこれまでに、鋼管内の濡れ挙動の把握に赤外水分計を用いる技術を提案し、大気暴露試験により本装置の性能を評価した。赤外水分計は乾湿周期を1年間連続で計測可能であったが、腐食速度が最大となる1.0 μmおよびそれ以下の水膜に対する計測値の妥当性については十分に評価できなかった。
目 的
室内試験により薄膜水に対する赤外水分計の定量性能を評価する。また、飛来海塩の影響が異なる沿岸部と山間部で大気暴露試験を実施し、現場での適用性を検証する。
主な成果
室内試験および屋外の大気暴露試験において以下の結果を得た。大気暴露試験は沿岸部(当所横須賀地区)と山間部(当所赤城試験センター)で実施し、水平に設置した長さ4800 mm、外径76.4 mm(開口率42%)の溶融亜鉛めっき鋼管部材を試験鋼管とした。
1. 赤外水分計による薄膜水に対する膜厚の定量性評価
恒温恒湿器に海塩を塗布した金属板を導入し、湿度変化による海塩の潮解で生じる付着水の膜厚を赤外水分計で計測した。その結果、水分計値は理論値と概ね一致し、高い相関が得られた(相関係数 0.929)。また、ブランク計測から算出した水分計の定量下限値は0.0094 μmであり、膜厚1.0 μmおよびそれ以下の付着水についても十分に定量可能なことが明らかとなった。
2. 大気暴露試験における鋼管内面に付着する水膜の計測
沿岸部の大気暴露試験(500日間)において、管端部から中央部に向けた3点の管内面に付着する水の膜厚を赤外水分計で計測した結果、水膜は0.01~3.86 μmの範囲で変動した。計測された付着水は湿り腐食が大半を占め、管の中央から端部に向けて増大する傾向にあった。試験期間の天候と鋼管内部の温湿度から、管内に付着する水は降雨の浸入や付着海塩の潮解を要因とするものが主であると推測された。
山間部の大気暴露試験(260日間)において、管内3点に付着する水を計測した結果、水膜は0.01~28.4 μmの範囲で変動し、中央部で20 μmを超える濡れ腐食が計測された。中央部における水膜は霧の発生時に増大する傾向にあり、管内部の温湿度を調査した結果、中央部で特異的に結露が発生しやすい環境が生じることが明らかになった。
以上より、赤外水分計による鋼管内の付着水計測が現場に適用できることがわかった。
概要 (英文)
We proposed an evaluation method for deposited moisture monitoring in the pipe of transmission tower using infrared moisture analyzer (IMA). The IMA measured the thickness of deposited water layer by deliquescence of the metal plate which coated sea salt in a thermo-hygrostat, and excellent correlation (r = 0.998) was obtained between theoretical values and the IMA measurements. The lower limits of detection (3.3s) were 3.1 nm for water layer thickness. In the atmospheric corrosion testing at coastal field and mountainous field, thickness of deposited water layer and wet-dry condition inside a steel pipe were monitored using the three experimental apparatus in which a fiber probe of the IMA were three spots installed into a horizontal steel pipe (4,800 x f76.3 mm). At the coastal field test, for 500 days, shows the water layer thickness values were higher as the end of the steel pipe inside. As this reason, it was guessed that the adhesion sea salts were more quantity as the end of the steel pipe inside. At the mountainous field test, for 260 days, shows the water layer thickness values were higher as the center of the steel pipe inside. As this reason, it was guessed that the dew condensation was easier generated for central part in the pipe.
報告書年度
2018
発行年月
2019/06
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
正木 浩幸 |
環境科学研究所 環境化学領域 |
共 |
大原 信 |
環境科学研究所 大気・海洋環境領域 |
共 |
長沼 淳 |
材料科学研究所 電気化学領域 |
共 |
服部 康男 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
谷 純一 |
材料科学研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
送電鉄塔 | Transmission tower |
亜鉛めっき鋼管 | Galvanized carbon steel pipe |
大気腐食 | Atmospheric corrosion |
濡れ挙動 | Wet-dry behavior |
赤外水分計 | Infrared moisture analyzer |