電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
V17001
タイトル(和文)
塩雪害の発生気象条件に関する数値解析的および観測的研究-がいしへの圧密着雪を伴う塩雪害発生可能性の指標の提案-
タイトル(英文)
Numerical and observational studies on meteorological condition of salt snow damage to insulators- A proposal of indicator of possibility of salt snow damage to insulators with wet and packed snow accretion -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
2005年12月に新潟県下越地域で大規模な停電が発生した(以下,新潟下越雪害).原因の一つにあげられる送電設備の塩雪害においては,高濃度の海塩を含む雪ががいし表面に付着することで,絶縁抵抗が著しく低下し,電気事故に至ったと考えられる.原因究明・再発防止に向けて,塩雪害の発生気象条件の把握,および,海塩輸送過程の解明が求められている.
目 的
新潟下越雪害で塩雪害を引き起こした気象条件を明らかにするとともに,大気中・降水中海塩の輸送特性を把握し,圧密着雪を伴う塩雪害発生可能性を表す指標を提案する.
主な成果
1. 2005年新潟下越雪害発生時における気象条件
気象観測データの分析および気象・海塩輸送数値解析(NuWFASおよびRe-SPRAY)により,塩雪害発生時の2005年12月22日の気象条件および海塩輸送過程を検討した.朝鮮半島の付け根から能登半島へ伸びる日本海寒帯気団収束帯上に発生した渦状擾乱周辺において,多量の海塩が海洋から大気へ供給されたことによって,渦状擾乱周辺での降雪中の海塩が高濃度になった.この高濃度の海塩が,日本海寒帯気団収束帯と太平洋側の南岸低気圧の両者の影響を受けた降水帯に伴って新潟平野へ輸送された結果,塩雪害発生エリアでは,強風かつ着雪適温の条件下で高濃度の海塩を含む降雪が2~3時間継続したものと考えられる.
2. 地上での海塩・降雪観測による海塩粒子輸送特性の把握
2008年~2015年の各冬季に新潟県下越地域において地上での海塩・降雪観測を実施した.観測で得られた降雪試料のうち,海塩成分の寄与により高導電率となり,かつ降雪量が多いものは,主として西からの強風時に生じていたことがわかった.このとき,Na+の湿性沈着量は,Na+の乾性沈着量や風送量に比べて著しく大きい値を示し,新潟県下越地域の内陸域において多量の海塩がもたらされる沈着過程として,乾性沈着よりも湿性沈着の寄与が重要であることが示された.
3. 過去の塩雪害発生可能気象イベントの抽出方法
がいしへの圧密着雪を伴う塩雪害の発生可能性を表す指標として,海風着雪ポテンシャルを提案した.新潟県内の気象庁アメダスにおける過去37年間のデータをもとに海風着雪ポテンシャルを計算した結果,塩雪害発生地点近傍において新潟下越雪害時の値が評価期間の最大値を示した.このことより,海風着雪ポテンシャルにより,新潟下越雪害と同様の圧密着雪を伴う塩雪害の発生予測可能性を示すことができた.
今後の展開
塩雪害予測・解析手法の高度化や検証データの取得により,新潟県以外の地域に対しても適用性を有する塩雪害発生懸念地域推定法を提案する.
概要 (英文)
This study deals with meteorological analysis and field observation on meteorological condition of salt snow damage to insulators in Niigata Kaetsu area, where a large blackout was caused by a severe wet snowstorms in December 2005. According to meteorological analysis and numerical model for sea salt, vortex disturbances along Japan sea Polar air mass Convergence Zone (JPCZ) would be a key meteorological situation for the snow damage in 2005. Wintertime measurements of chemical composition of precipitation and ambient aerosol, which were carried out in the Niigata area, revealed that large amount of snow with relatively high conductivity, 200 micro S/cm, would be attributed to strong westerly wind higher than 10 m/s. As an indicator of possibility of salt snow damage to insulators with wet and packed snow accretion, snow accretion potential is improved with respect to onshore wind. The improved snow accretion potential show maximum values at the periods of the snow damage in the Niigata area, 2005, suggesting the availability of the potential for prediction of the salt snow damage.
報告書年度
2017
発行年月
2017/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
大原 信 |
環境科学研究所 大気・海洋環境領域 |
共 |
木原 直人 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
麻生 照雄 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
大塚 弘 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
屋地 康平 |
電力技術研究所 高電圧・絶縁領域 |
共 |
守護 雅富 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
西原 崇 |
地球工学研究所 流体科学領域 |
共 |
平口 博丸 |
地球工学研究所 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
海塩 | Sea salt |
雪害 | Snow damage |
がいし | Insulator |
数値解析 | Numerical simulation |
野外観測 | Field Observation |