電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
V06022
タイトル(和文)
低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分調査坑周辺における微生物群集解析
タイトル(英文)
Microbial community analysis around test cavern of the sub-surface LLW disposal
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
低レベル放射性廃棄物の次期埋設処分では、安全性確保の観点から、地下50~100m程度の余裕深度処分が計画されている。一方、近年の地下環境における微生物生態に関する研究の進展に伴い、地下岩盤の酸化還元状態など放射性廃棄物処分システムのバリア性能に及ぼす微生物影響に関する関心が高まっている。また、地下微生物の生化学反応と地下環境中における地球化学的反応は密接に関係していることが報告されている。そのため、余裕深度処分において、地下岩盤の酸化還元状態など処分システムに及ぼす影響を解明するためには、岩石・地下水などの物理的・化学的要因をだけではなく、微生物要因を加味した複合的な影響評価が必要である。しかしながら、埋設処分施設の候補岩盤中における微生物の存在に関する知見も乏しい現状にある。このような観点から、本研究では、低レベル放射性廃棄物の余裕深度調査坑周辺における微生物群集を明らかにすることを目的とした。
余裕深度処分調査坑の坑壁より岩石ブロック試料(4種類の軽石凝灰岩及び礫質砂岩)を採取し、分子生物学的手法を用いて、岩石中の微生物群集解析を行った。
1.岩石からの微生物DNA抽出
界面活性剤、タンパク消化酵素及び物理的破砕などを組み合わせた9種類の方法により、岩石試料中からのDNA抽出を試みた。その結果、全ての岩石試料から0.9~14.7μg/g-wet rockのDNAが抽出され、岩石中における微生物の存在が明らかとなった。また、抽出効率を比較検討した結果、主に界面活性剤による細胞溶解処理を行う市販キット(MO BIO製)とビーズ攪拌による破砕装置を組み合わせた方法を用いた場合に、岩石からの微生物DNA回収率及び純度ともに最も良好な結果が得られた。
2.岩石中の微生物群集解析
(1)岩石から検出された微生物群集
抽出したDNAを用いて、ランダムクローニング法による微生物群集解析を行った結果、系統分類学的にα、β、γ-proteobacteriaを主体した22-30種類の微生物種が検出され、窒素固定、脱窒及び鉄還元能等を有する微生物の近縁種であることが明らかとなった。
(2)岩石の酸化還元状態と微生物群集の関連性
ランダムクローニング法により、採取した4種類の岩石試料から検出された微生物群集を系統分類別に分類し、岩石試料の酸化還元状態と比較した。その結果、還元状態の岩石では嫌気性細菌の割合が高く、酸化状態の岩石では割合が低い傾向が認められた。そのため、微生物群集と岩石の酸化還元状態には、相関があることが示唆された。また、DGGEバンドパターンから、軽石凝灰岩あるいは礫質砂岩によって存在割合が異なっているもの、酸化還元状態に応じて存在割合が異なっているものが検出された。このことから、微生物によっては酸化還元状態だけではなく、岩質にも関係していると考えられた。ランダムクローニング法およびDGGE法は多数の微生物種を解析できるという点では同じであるが、前者は微生物の同定および統計的割合解析が可能であり、自然環境中に存在する微生物の静的解析(微生物群集初期値)に有効である一方、後者は微生物群集をゲル上のバンドパターンとして認識することが可能であり、メタン発酵槽や下水処理槽などのある程度システム化された微生物試料に存在する特定の微生物の動的解析(微生物群集変化)に有効である点が大きく異なる。両方法による結果の差異は、それぞれの方法の利点を反映するものであると考えられた。
以上から、本報告において、六ヶ所村における低レベル放射性廃棄物の余裕深度調査坑周辺の岩盤中に微生物が存在することが初めて明らかとなった。また、またこの微生物群集中には、様々な生化学反応をおこなうと考えられる多種多様な微生物が含まれている可能性が示唆された。さらに、微生物群集が岩石の酸化還元状態や岩相などと相関を有することが示された。今後、微生物の生理活性などを測定することにより、岩盤の酸化還元状態に及ぼす微生物の影響について解明をする必要がある。
概要 (英文)
Nowadays, it is expected that low level radioactive waste (LLW) disposal depository could be built at 50-100m sub-surface in Rokkasho, Japan. Sub-surface rock is geologically thought to play an important role as a natural barrier for decreasing the migration of radioactive waste around the underground facilities, because of its reductive conditions. In such sub-surface environments, microorganisms are known to be widely distributed and have some biochemical activities that may affect the natural barrier for LLW disposal. Therefore, to estimate the safe maintainability of LLW repositories or the potential mobility of radionuclides within LLW repositories, it is necessary to investigate the geochemical and microbial influences in sub-surface environments, focusing on the redox conditions. As investigations of microoaganisms in the test cavern of the sub-surface LLW disposal, Rokkasho, JAPAN are not performed yet, Here in this report, we analyzed the microbial communities in the rocks representing different redox potentials by molecular biological techniques.
Microbial community analysis was performed using rocks having geochemically different characters as pumiceous tuff/ conglomerate or redox conditions. The results are as follows;
1.Extraction of genomic DNAs from rocks
An effective method for genomic DNAs extraction was developed. Rocks were crashed by bead-beater, and DNAs were extracted using commercially available DNA extraction kit (Mobio co.). By this methods, 0.9-14.7ug/g-wet rocks of microbial DNAs were extracted. This confirms that microorganisms exist in the rocks of the test cavern.
2.Microbial community analysis
By random cloning analysis, 22-30 kinds of microorganisms with various phylogenecity were detected as alpha, beta, or gamma-proteobacteria. Some of them were identified as anaerobic microbes including denitrifying or iron reducing bacteria. On the basis of a proportion of phylogenetic classification, it was suggested that proportions of the obligately anaerobic bacteria was higher in reduced-condition rock than oxidized one, while proportions of the aerobic bacteria was higher in oxidized -condition rock than reduced one. This suggested that proportion of anaerobic/aerobic bacteria was correlated to the redox condition of rocks.
In this report, we clarified that a variety of bacteria do exist in the rocks of the test cavern of the sub-surface LLW disposal, Rokkasho, JAPAN. Furthermore, microbial community, specially the proportion of anaerobic bacteria, would be related to redox condition of rocks. To clarify the microbial influences to redox conditions of rocks, it is necessary to investigate microbial activities.
報告書年度
2006
発行年月
2007/05
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
吉田 直樹 |
環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 |
共 |
長岡 亨 |
環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 |
協 |
大山 隆弘 |
地球工学研究所 地圏科学領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
低レベル放射性廃棄物 | LLW disposal |
酸化還元電位 | redox potential |
微生物群集 | microbial community |
余裕深度処分 | sub-surface disposal |