電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
V06016
タイトル(和文)
植物による環境修復(6)-T-DNAタギングによる変異体作製とカドミウム感受性個体の選抜-
タイトル(英文)
Mutagenesis by T-DNA tagging and selection of the Cadmium sensitive mutants
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
植物を用いて、カドミウム、銅、鉛などの重金属による土壌汚染を浄化(ファイトリメディエーション)する方法は近年盛んに研究されてきている。しかし、単位面積当りや時間当りに植物が重金属を吸収・無害化できる量は少なく、一部の例外を除けば、本格的な実用化には到達していない。そこで、重金属の吸収・蓄積能力を遺伝子組換えによって増強できるならば、従来の方法を補うことが期待できる。そのためには、まず、重金属の吸収・蓄積能力に関与する遺伝子の単離が求められる。現在までに重金属の吸収・蓄積に関与する因子として、phytocheratin, metallothionein, transporterなどが知られているが、それらの遺伝子を導入した植物では、重金属に対する耐性・蓄積能が増加した場合もあるが、そうでない場合もあり、評価は定まっていない。その理由として、複雑な生理に根ざした重金属の吸収・蓄積の機構は未だ不明な点が多いことや、遺伝子の発現レベル、たんぱく質レベルにおける複合的な因子の関与の可能性があげられる。このような現状を打破するためには、金属の吸収・蓄積の機構の網羅的な解析が有効である。
T-DNAタギングによる変異体の作製とその解析は、遺伝子の機能を網羅的に明らかにする上で非常に強力なツールとなる。本方法はT-DNAを外部からゲノム遺伝子へ挿入し、その遺伝子の発現を抑えることにより、遺伝子の機能を推定する方法である。遺伝子とその機能、すなわち表現型との相関が明確であるために、非常に有力な方法である。欠点としては、同様な機能を持つ遺伝子が複数あった場合には、破壊された遺伝子の機能を他の遺伝子が代替するために明確な表現型が現れない可能性があることである。しかし、ひとたび表現型を発見した場合には、その関連の遺伝子をすぐに同定できる利点がある。
本研究では、植物のCd吸収・蓄積の機構に関連した遺伝子の取得のために、実験植物であるアラビドプシスの変異体集団(約13000系統)をT-DNAタギング法を用いて作成した。次にCdに対する感受性個体の選抜法の開発をおこなった。最後に、その方法を用いて、変異体集団を選抜することにより、30系統の感受性変異体を得ることができた。さらに、その中で特に感受性が強い系統である41-3系統の予備的な解析を行い、カドミウム耐性・蓄積に関連した遺伝子をクローニングする方法を確立することができた。
概要 (英文)
The low cadmium (Cd) contamination of soil derived from the industrial development and the outflow from mine sites extend in Japan. The low-cost purification methods have been requested to clean soil of pollutants. We have been working on phytoremediation, which is a method to clean soil and water of pollutants such as heavy metals using plants. Many researches have been carried out to enhance the ability of tolerance and accumulation of heavy metals by a gene manipulation technique, however, few have succeeded. The objectives of this study were thus to: (a) make the mutant group of Arabidopsis, (b) develop the screening method of Cd sensitive mutants, and (c) obtain Cd sensitive mutants using the method. We employed T-DNA tagged mutants to understand the mechanism of the heavy metal tolerance and accumulation ability of plants. T-DNA tagging is one of the most powerful tools to obtain novel mutants because of easiness to analyze the relation between genotype and phenotype. In this study, to identify heavy metals tolerance determinants, we screened 30 hyper sensitive mutants of Cd from a T-DNA tagged population which involved more than 13000 lines in the Col-0 background. These mutants showed higher sensitivity to Cd than wild type under the condition of 50 M Cd. TAIL-PCR revealed the location of the introduced T-DNA.
報告書年度
2006
発行年月
2007/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
後藤 文之 |
環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 |
共 |
吉原 利一 |
環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 |
共 |
庄子 和博 |
環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
カドミウム | Cadmium |
ファイトリメディエーション | Phytoremediation |
T-DNAタギング | T-DNA tagging |
変異体 | Mutant |
アラビドプシス | Arabidopsis thaliana |