電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)
報告書データベース 詳細情報
報告書番号
SS22016
タイトル(和文)
海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その9)-微地形影響を考慮した塩分付着量の時空間分布の推定-
タイトル(英文)
Study on estimation of salt deposition with numerical simulation of sea salt particle transport (Part 9) - Estimation of spatio-temporal distribution of salt deposition considering microtopographical effects -
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背 景
海より飛来する海塩粒子は,電力流通設備の表面に付着し,台風襲来時の急速汚損に伴う絶縁性能の低下や,長期間の汚損による部材の腐食・劣化等の塩害をもたらす.そのため,広域に分布する電力流通設備の耐塩設計や耐腐食設計・保守管理において,塩分付着量の時空間分布や統計的性質の評価が求められる.当所では,このような塩害評価のための手段の一つとして,領域海塩解析モデルRe-SPRAY[1] 注1)と風況・海塩粒子輸送解析コードNuWiCC-ST[2] 注2)の開発を進めてきた[3].これらにより,時々刻々の気象状況に応じた塩分付着量の時空間変化や長期間に渡る平均的な飛来海塩量の空間分布を推定可能となっている.ただし,両モデルで対象とする時間・空間の分解能が異なり,数十~数百m程度の高い分解能で,時々刻々の気象状況に応じた塩分付着量の空間分布を推定することは実現できていない.
目 的
数kmのスケールより小さな微地形影響を考慮しつつ,塩分付着量の時空間変化を評価する手法を開発する.
主な成果
1.微地形影響を考慮しつつ塩分付着量の時空間変化を推定する手法の提案
Re-SPRAYによる海上の海塩濃度・風速等の時系列データとNuWiCC-STによる微地形影響を考慮した海塩濃度・風速の空間分布データを,海上の風向・風速に応じて対応付けることにより,塩分付着量の空間分布の時間変化を推定する手法を提案した.本推定法により,時々刻々の飛来海塩量や塩分付着量の空間分布のパターンや値のレベルの変化に加え,微地形や地表面粗度に応じた局所的な変化が表現された.
2.推定精度の把握
本手法による風向・風速の推定値は,海岸線から40m,500m,1.4km,2kmの距離にある4地点での観測値 注3)と概ね一致した.また,塩分付着量の推定値は,その定量的な精度に改善の余地があるものの,地点間での相対的な変化に対して同観測値と整合した.これらより,本推定法が従来に比べて高い空間解像度で時々刻々の塩分付着量を再現しうることが示された.
今後の展開
微地形影響の再現性に対する検証事例を蓄積するとともに,塩分付着量の定量的精度の向上に向けた検討を進める.
注1)海面からの海塩の発生,大気中での輸送,降水への取り込みおよび地上への付着の各過程がモデル化されており,気象予測・解析システムNuWFASおよび海塩付着量推定モデルと連携させることにより,水平格子解像度数kmで,時々刻々の気象状況に応じた海塩濃度や塩分付着量の空間分布を推定できる.
注2)水平格子解像度数十~数百mで,地形の起伏や河川等の土地利用の影響を考慮して,海岸線から内陸に飛散する海塩濃度・飛来海塩量を推定する.別途用意する海上の風向・風速出現頻度情報を併用し,統計手法を併用することにより,特定期間の平均的な海塩濃度・飛来海塩量の空間分布を推定することができる.
注3)2021年度に当所横須賀地区とその周辺において取得された 塩分付着量・風向・風速の観測値.
関連報告書:
[1] N11011「時間変化する気象条件下での大気中と降水中の海塩濃度予測手法の開発」(2012.01)
[2] N19005「海塩粒子輸送シミュレーションによる塩分付着量推定に関する研究(その8)-砕波帯を起源とする飛来海塩粒子の推定手法の開発-」(2020.02)
概要 (英文)
By linking existing sea salt transport analysis methods (Re-SPRAY, NuWiCC-ST), we proposed a method for estimating time variations in deposited sea salt mass while taking into account the effects of microtopography smaller than a few kilometers. This estimation method represents not only changes in the spatial distribution pattern and magnitude of the sea salt flux and deposit from time to time, but also the local variations depending on the microtopography and land surface roughness. The estimated wind direction and speed generally agreed with the observed values at four sites located at distances of approximately 40 m, 500 m, 1.4 km and 2 km from the coastline. The estimates of deposited sea salt mass agreed with the observed values for relative variations between sites, although there is room for improvement quantitatively. These results indicate that this method can reproduce the mass of deposited sea salt from time to time with a higher resolution than existing methods.
報告書年度
2022
発行年月
2023/08
報告者
担当 | 氏名 | 所属 |
---|---|---|
主 |
須藤 仁 |
サステナブルシステム研究本部 研究統括室 |
共 |
木原 直人 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
共 |
服部 康男 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
共 |
平口 博丸 |
電力中央研究所 |
共 |
中尾 圭佑 |
サステナブルシステム研究本部 気象・流体科学研究部門 |
キーワード
和文 | 英文 |
---|---|
海塩粒子 | Sea salt particle |
付着 | Deposition |
時空間分布 | Spatio-temporal distribution |
数値流体解析 | Computational fluid dynamics |
統計手法 | Statistical method |